超短編小説【捨て犬観察日記】

月曜日(晴れ)

学校帰りに捨てられた子犬を発見。
毛並みも綺麗だし、痩せてもいない。捨てられたばかりなのだろう。
十分ほど観察してそのまま帰宅した。


火曜日(晴れ)

捨て犬に餌をやっている子供たちがいた。
小学生だろうか。四人ともすごくはしゃいでいる。
誰か持って帰るのかと思ったが、そういうわけではないらしい。
小学生が帰ったのを見送って帰宅した。


水曜日(曇り)

捨て犬を撫でまくる女の子たちがいた。
中学生だろうか。「かわいい」と「ヤバい」と「超かわいい」を連呼している。
誰か連れて帰るのかと思ったが、そういうわけではないらしい。
帰り際に軽く睨まれたのが納得いかない。
釈然としないまま帰宅した。


木曜日(雨)

急に天気が崩れて土砂降りになった。
傘を学校に起きっ放しにしていて助かった。
さすがに今日は捨て犬に構う人間はいないらしい。まあ、そうだろう。
とりあえず早く家に帰りたい。
……確か、柄が取れた傘が家にあったはずだ。


金曜日(晴れ)

晴れた。昨日の大雨が嘘のようだ。
傘を回収しようと思ったら、捨て犬をじっと見つめる女の子がいた。
高校生だろうか。なにか、ひどく悩んでいるらしい。
近づき難い雰囲気だったので、傘の回収は諦め、そのまま帰宅した。


土曜日(曇り)

改めて傘の回収に向かった。
意外に捨て犬の健康状態は良い。傘を掴もうとしたら甘噛みされた。
帰り際、昨日見た女の子とすれ違った。
相変わらず難しい顔をしていた。


日曜日(雨)

捨て犬がいない。
自力でどこかへ行ったのだろうか?
それとも、保健所に連れて行かれたのか。
誰かに拾われたのならいいが、そうでないのなら……。


月曜日(晴れ)

元捨て犬と、笑顔の女の子が仲良く散歩していた。
どちらもすごく楽しそうだった。
筋肉痛でさえなければ、自分も素直に喜べたかもしれない。



以上、観察終わり。

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