新映画レーベル【New Counter Films】設立&第一弾作品『若武者』記者会見の模様をお伝えします!
このたび、新たな邦画レーベル「New Counter Films(ニューカウンターフィルムズ)」設立、そして同レーベル第一弾作品『若武者』公開が発表になりました。先日行われた記者会見の模様をお伝えします。
【New Counter Films設立記者発表&カンファレンス】
開催日:3月4日(月)
パネリスト:関友彦(New Counter Films代表)、鈴木徳至(New Counter Films代表)司会:奥浜レイラ
関:まずはNew Counter Filmsという新しいレーベルが何なのか簡単に説明させてください。一言で言えば、サブコピーに掲げた「誰もが観たい映画ではなく、誰かが観たい映画を作る」ということに尽きます。
例えば、第一弾作品『若武者』のように、作家性に特化した作品を想像していただきやすいのですが、ただし、いわゆる“作家至上主義”だけを標榜しているわけではありません。作家性を重要視しながらも、プロデュースワークとしてきちんとレーベルのブランディングをしていこうと考えています。
つまり、監督が作りたい作品を作ることができる場所というだけにとどまらず、プロデューサーが監督の才能を最大限に引き出せる場所であり、またなによりも、作るだけにとどまらず、作ったものを我々が直接お客様に届けられる場所にしたいと考えています。
そのような理由で、あくまでもコギトワークスとは別に、合同会社New Counter FilmsというLLCを昨年より立ち上げました。
鈴木:「誰もが観たい映画でなく、誰かが観たい映画を作る」というコピーに関して、どうしても仕事でやっていると、自分たちはこういうのは好きじゃないけど、お客さんは好きだからという考えで進むこともあります。ですが、やはりそれだけだとエネルギーが続かない場合がある。作り手として自分たちが観たいものをどうやってつくり続けていくのか、ということを考えていくことで、業界にとっても未来につながっていくのではないか。そこに強くこだわりを持ちたいという思いで立ち上げたレーベルです。
司会:いち制作プロダクションとしてだけではなく、配給、および製作そのものに関わっていくというところに関してはどういったビジョンがあるのでしょうか?
関:いわゆる普通の商業活動の中では、つくったものをそのままお客さんに届けるいわゆるBtoCが通常になってきていると思います。映画界でもそれができるかもしれないと考えました。
通常、映画をお客さまに届けるという行為に関しては、特に日本では製作委員会を組成して、そこで製作を行うことが多い。その後に配給会社がそれを全国に配給する。さらに海外の映画祭に出して、各国のセールスカンパニーに買っていただく。そして各国のディストリビューターたちが各国で売る。その売り買いというのもMG(最低保証金)を切って売り切るということが今までのビジネススキームだと思います。
もちろんそのやり方にふさわしい映画もいっぱいあるでしょうし、今の日本映画にとっては、実はそれが一番ふさわしいやり方だということは僕自身も理解しております。ですがビジネススキームとして、それ1個しかないのはどうなのだろうか、とも感じています。社会的にもBtoCが通常になってきているのであれば、映画も、作り手の我々がお客さんに直接届けるということをやってみてもいいのではと考えました。
それを僕たちは産地直送型、つまりFarm To Table(農場からテーブルへ)という言い方をしています。それをやることで、作り手である我々が直接お客さんの反応を聞くことができる。日本だけに限らず、世界のお客さまの反応もしっかりと自分たちが受けとめることができるので、次の作品を製作するとき、各国の文化や感受性みたいなことをちゃんと受動した上で考えることができるし、作り手たちもより鋭利な企画に振り切ることも可能となる。そうしたこともあり、Farm To Tableをやろうと思いました。
鈴木:Farm To Tableということで言えば、やはり自分はアートフィルムと呼ばれるものに関わることが多かったんですね。規模の大きい作品というよりは、作家性の高い、自主制作やインディペンデント作品などにたくさん関わってきたんですが、自分達で配給をやっていくだけでは集客的にも頭打ちだという実感があります。そんな中で、たとえばもし仮に日本でそういう映画を観たいという人が1万人しかいなかったとしても、世界だったらどうだろうと考えるわけです。海外の映画祭に行くと、自分たちと同じ熱量で映画を観てきて、自分で同じように映画を感じ取っていただける方がたくさん集まっているなと感じます。世界にこれだけ自分たちと同じように、映画を感じ取ってくださる方がいるなら、もっと多くの方に観ていただこう、というところにチャレンジしてみたいと思ったというところが、行動の源のひとつだったと思います。
司会:海外でも同時期に公開されますし、U-NEXTをはじめいろいろな協力パートナーがいると思うのですが、配信でも外に出ていこうということなのでしょうか?
関:海外での同時期公開に関して、そもそもNew Counter Filmsの構造には、弊社コギトワークスが2020年から配給業に乗り出したという先行経験が大きく影響しています。それまでは純粋な制作プロダクションとして制作することに特化していたわけですが、2020年から日本全国のミニシアターに映画を届けるということを始めました。その経験を通してお客さんを身近に感じることができ、その経験をそのまま海外の劇場にも広げて、僕が直接連絡を取れば、ブッキングができるはずと思い、海外配給も行い始めました。
続いて、同時配信に関してですが、実は何人か地方に住む映画監督さんや役者さんたちとお話をすると、「東京の劇場で公開している映画のニュースはよく見かけるけど、自分が実際に映画を観るのはそこから半年から1年後あたりになってしまう。仲間たちが盛り上がってるときに観ることのできない悔しさがある」とおっしゃいます。また、地方に住んでいるという理由だけでなく、家族との時間や仕事などでなかなか劇場に行くのが難しい方々もいらっしゃいます。けれど映画は大好きだし、映画を観たいとも思っている。そんな方たちにとっては、劇場と同時期に配信でも上映が行われているのならば、配信で映画を楽しみ、劇場で観られた方々と鑑賞体験を共有できる。これは劇場と配信が一緒に共存できる道であり、共生できる道だと思うのです。
僕自身、U-NEXTさんなどの配信で観た後に、あらためて劇場に観に行くこともあります。よく劇場と配信が食い合うんじゃないか、という話もありますが、僕自身はあまりそうは思いません。むしろ、どちらにも楽しみがあると思うのです。深夜に配信の映画を観ることもありますし、劇場に行って多くのお客さまと同じ空間で音と映像を楽しむということもあります。それぞれに楽しみが違うと思いますし、ひとつの作品で楽しみを2倍にできるのであれば、公開と配信を一緒にやってみても良いのではないかと思います。そういう理由で劇場公開と同時に配信をすることにしました。
鈴木:音楽であれば、音源をサブスクで聴いても、ライブに行くことはあります。そういうことと変わらないのかなと思います。それくらい配信で映画を観るというのは身近になっていると思いますし、それでも映画が好きな人は劇場で映画を観ると思います。もちろん作り手である僕たちは劇場に合わせて音も画面も設計しているので、それをちゃんと原寸大に感じていただきたいとは思いますが、より多くのお客さんに観てもいただきたい。劇場公開と配信は食い合わずにつながっていくだろうという自信はあります。
司会:劇場のスクリーンで観るための音響・映像という考えをもとに、作家の方々は作っていると思います。それを自宅のテレビで、配信で観るということに齟齬はありますでしょうか。
鈴木:もちろんお客さまが映画をご覧になる環境まではこちらでコントロールはできません。配信であれば、観ている途中でお湯が沸くかもしれないし、お子さんが泣くかもしれない。こちらの意図通りに観ていただけるかどうかは分からないのですが、何よりも観ていただいているという事実がある。それぞれの環境で観ていただいても、確実に何かほかと違うぞとか、ただ事ではないぞというようなものは作っているつもりです。その上で、もしその作家や、スタッフ、キャストのことが気になっていただけるようであれば、それは劇場に来ていただけることにもつながるのではないかと思っております。
司会:ちなみに鈴木プロデューサーが加入されたことで、もたらされたものは何ですか?
関:そもそも僕はフリーランスで映画の現場から入りました。当時は作ったら終わり、いわゆる初号試写がその映画への関わりの終わりだったんです。作り終わったら配給会社にお渡しして、その映画が公開されている頃には気持ちを切り替えて、また次の現場に集中して良いものを制作しようとしている。そういう流れの中にいました。しかし、会社をやるようになって少しずつ変化していきました。
二ノ宮監督の『枝葉のこと』がPFF(ぴあフィルムフェスティバル)で上映されたときに鈴木徳至という人間を、初めて認識したんですけど、この二人がなんだかお笑いコンビみたいな感じですごく良かったんですよ。鈴木が監督をフォローして、舞台上がすごく朗らかになっていて、こんなに面白いプロデューサーがいるんだなと思いました。僕はそこから2年ぐらいかけて鈴木をスカウトしました。先ほど彼も言っていましたが、彼はいわゆる自主映画的なところから、監督と二人三脚で制作していくようなところから始めて、それを自ら映画祭にエントリーし、劇場にも届けていました。それこそ、Farm To Tableを、最初から自分たちでやっていたんです。それを目の当たりにして、それこそが映画づくりのあるべき姿だということを見せてもらったなという気持ちがあります。
ただ、やはり映画の規模を拡げるということで言えば、単独でやるには、ちょっと抜けきれてないという部分も見て取れたので、であるならばなおのこと、弊社コギトワークスに入ってもらって、会社としてやることで、もっと広がりを強くし、制作のレベルも上げていってもらえるのではないかと思って入社してもらったわけです。その数年後ぐらいにこのNew Counter Filmsというレーベルを僕がやりたいと思うようになり、だったらこれは鈴木と一緒に、合同会社の代表としてやっていき、今後の作品を発信していくべきだなと思いました。僕にとってはそういう存在ですね。
鈴木:二ノ宮監督との関係は『枝葉のこと』という作品が最初です。それがロカルノ国際映画祭の新鋭監督部門のコンペに入ったので、一緒にロカルノにも行ったんですが、まだ公開も何も決まってない段階から自主配給まで、二人三脚でやっていた中で関と出会いました。自主映画という場所では、プロデューサーと言っても、けっこう自分の存在意義と向き合わざるを得ません(笑)。僕がお金を出しているわけでもないですし、監督の自己資金だったりもするからです。何をもってプロデューサーなのか、自問自答したり、周囲からも言われたり……。20代は己の存在価値を問い続けるという哲学的な時期を過ごしていました(笑)。ですが、初めて「お前がやっていることは面白い」とそこに価値を見出してくれたのがコギトワークスという会社だった。つくるところから、届けるところまで、やっていていいよと言ってくれたので、やっていいのかと思えたんですね。
ただずっと自己流でやってきたので、仕事として続けていく上で学びは続けていきました。この会社に入って5年くらいになるんですが、それこそ予算の組み方、スタッフ編成、いろいろなところへの気配りといった、プロとして足りない部分を、現場を重ねていく中で学びながら、ようやく人前に立てるレベルになったのかなと、今はそういう風に思っています。
司会:映画業界全体の課題についても話していきたいと思います。New Counter Filmsのような方法で作品を届ける際、製作・配給での課題はどんな所にありますか?
関:もちろん映画なので商業活動だと思うんです。アート活動ではありません。いい映画だからこそ多くの人に観てもらわなきゃいけないことは、別に邦画だろうが洋画だろうが一緒だと思います。ただ第一義が売るためだけということではなく、それ以外の選択肢をつくってみたいと思っています。いい映画を製作することが第一義になり、ゆえに人が観るという流れをつくりたいなと思ったんです。ただ、いい映画を作ってみんなに観てもらいたいということは、全世界すべての映画人が思っていることであり、同時にたやすくないのだと思いますし、だからこそ、現状このようになっているのだと思うのですが……。だからこそプロデューサーとして、いいものを製作するためにいくらかけるのか、いくら回収できるのか、それを見極めながら、ビジネス、経済としてまわっていくようにしなければなりません。
ですから自分が作りたいものを作ると言っても、それが何億円かかるのならば、その何億円を回収するための宣伝・配給をしなきゃいけないと思うんです。ただ僕たちは自分たちの会社と、サポート企業であるU-NEXTさん、全国のミニシアターと共にやるという、分母が割と明確に見えている状況だと思います。
よくミニシアター界隈では、動員が1万人いくのかいかないのかという何となくの線引きがあります。劇場で集客1万人の規模ですと、そこから配信や二次使用のパッケージを鑑みると、いわゆる収益の分岐点となるのは大体総製作費2500万円ぐらいです。ですから今のところNew Counter Filmsでつくる作品は、2500万円というキャップ(上限)をつけようと思っています。
監督が作りたいものを作るという発想から始めれば、きっといい脚本ができあがると思います。ただし、おそらくそのような脚本で作れば、往々にして製作費が1億円以上の映画になるでしょう。だからまずは総事業費2500万円というところからはじめます。となると現場は1700~1800万円、宣伝が700~800万円あたりでしょうか。現場とPA費のバランスは作品によりますが、つまり総事業費2500万で製作できる企画を監督と一緒に考えましょうということです。ただ現場の1700万円ってかなり少ない額だと思うんです。でも逆に1700万円だからこそ勝負ができる作品をプロデューサーと一緒に考えて世に放つことことに意味を見出したい。そういう思考で、国内ではそのような収益の分岐点を想定しています。そこにプラスして、去年から始めた海外への劇場へ直接ブッキングを行います。セールスカンパニーに売り切るのではなく、いわゆる収入を日本と同じく劇場と半々でやって、海外の劇場からの収入がプラスされる。となると、その収入は、すでに収益を超えた後の数字なので、そこから監督やメインスタッフ、主要キャストに、成功報酬の分配ができるようになります。そこをビジネスチャンスにしたいと思っております。
鈴木:総事業費2500万円、現場1700~1800万円というのは中規模ではなく、小規模映画と言うべき金額ではないかと思っているんですが、その代わりに成功報酬というものを考えておりまして、要するに2500万円をリクープ(製作費を回収)するところまでは出資者サイドへの還元になるんですが、リクープ後の成功報酬に関してはその50%を監督やキャスト、スタッフといったクリエーターの皆さんに還元していくということです。通常であれば低予算の場合、働く期間に見合ったギャラはもらえないかもしれません、そこで成功報酬の契約書をメインスタッフとキャストで結ぶことにして、その中で、半分出資者という形で関わっていただくことでバランスを取るといいますか、もしもヒットしたときにはモヤモヤせずに済むというか、気持ちよく関わっていただけたらいいなと思っております。
司会:是枝裕和監督や深田晃司監督が参加されている「action4cinema」(フランス、韓国など海外の映画界に存在する映画の共助制度のためのシステムや機関を日本にも設立しようと活動している団体)でも、利益の再分配の仕組みづくりは大変に難しいというお話をされていたので、そのお話はとても興味があります。
鈴木:やはり製作委員会システムでつくろうとすると難しいんだと思うんです。出資をされている方がたくさんいらっしゃるので。それぞれ考えてることが違っていて、前例があるとかないとかそういう話になってくると、なかなか話がまとまらない。というのがおそらく難しさのひとつだと思うのです。でもNew Counter Filmsは弊社とU-NEXTさんのみで動かしてるので、ミニマムにこれでいこうと簡単に動かせる部分があります。まずは小さく、広げすぎず、ひとつの前例をつくっていきたいと考えています。実は最近は他の作品でも結構そういうシステムを採用している例があったりして、それで成功報酬をちゃんと得ているスタッフも身近にいます。それを当たり前にしていきたいということを、このレーベルでは打ち出そうとしております。
司会:それではここで質疑応答に移ります。
記者:New Counter Filmsという名前に込めた意味を教えてください。
関:もちろん、メジャーに対してのカウンターという意味合いが込められているのは確かです。やはりメジャーがあってこそのわれわれだと思っています。メジャーを否定するのではなく、メジャーがあるからこそ、われわれが飛び抜けたものを作ることができる、エッジがあるものをつくることができる、という意味でつけました。かつそこにNEWをつけたいという思いがありました。
記者:先ほど海外の劇場との配給網に関しては、直接お電話をしてつくりあげたとのことですが、それは昨年の『almost people』の成果に手応えがあったからでしょうか?
関:正直に言えば、数字の手応えとしては薄かったんです。『almost people』の公開は、ロンドン1館、ニューヨーク1館、トロント1館でした。ロンドンでも上映回数でいうと2回です。ニューヨークやトロントも5日間。そうなるとやはり入ってくる数字は弱かった。ただロンドンの初日に合わせて、われわれも脚本家と一緒に行ったんですが、お客さんの反応はすごく良かった。日本のお客さんの反応よりも、海外のお客さんの反応の方が作品に直結しているような感じでしたね。登壇が終わってロビーにいるといろんなお客さんに話しかけられました。劇場の支配人さんも、どうやらこれはいけるという感覚があったようです。「来月はちょっと忙しいけど、また一緒にやろう、君は『almost people』だけじゃなく、ほかのいろんな日本の映画を持ってくることができるのか?」と言われました。僕はいちおう、日映協の理事もやっているので「可能性はある」と答えました。もしかすると今後、日本のいろんな映画のキュレーションをして持っていけば、ちょっとしたムーブメントになるのではないかなと感じました。
先日もロンドンに行ったんですが、その成果をもとに、ほかの劇場の方たちとも話してみたところ、ロンドンでは4館くらいではやれそうです。しかもなかなか大きな劇場の方や、イギリスの映画人もあこがれているロンドン中心地の劇場の方たちから「ぜひ作品を見せてくれ」と言っていただきました。『若武者』もイギリスで4館くらい上映できそうだという手応えを感じているわけですが、僕としてはこれをもう少し広げたいと思っています。というのも自分の感覚なんですが、実は北米との相性の手応えが残念ながらそれほど強くなく、それよりはロンドンの劇場の方たちの方がものすごく呼応するような感覚があります。やがてはロンドンで20館くらい開けられるくらいにまでは成長させたいなと思っております。日本で40~50館くらい、ロンドンで20館くらい開けられるようになれば、経済的にも意味が出てくるのかなと思っております。
記者:基本的に海外展開は欧米が中心ですか?
関:今は小さな作品なので、英語字幕しか作れません。英語で映画を楽しむことが日常的になっている国だけに絞っております。ゆくゆくは多言語の字幕をつくるかもしれません。
記者:第2弾以降に関しては?
関:New Counter Films自体は若手に絞るつもりはありません。それこそベテランの監督で「商業の映画をずっと作っているので、少し疲弊している」なんて方たちにも、このNew Counter Filmsで暴れていただきたいと思っています。このレーベルをU-NEXTさんと構想したのは2~3年前になるんですが、実はそのとき、中堅からベテランまで7、8人の監督さんと話しましたが、構想を話すと、皆さんぜひやりたいと言っていただきました。
本当は最初、毎年3本製作するって言ってたんですよ。ただそうするとコギトワークスが潰れてしまいそうになる(笑)。だから毎年1本か2本くらいで進めていきたいと思っています。今年、もう一本製作したいなという思いはあるのですが、まだ具体的なことは決まっておりません。
鈴木:監督たちに話しをしたときに皆さんには、やはり自分が権利を持てる、世界でかけてもらえると、思っていただけたと思います。やはり皆さん、自分がつくったものがどういう力学で売られていくのかを把握できないジレンマがあるのだと思います。特に自主でやってきてる人たちは宣伝までコントロールしたいし、それも含めてクリエイティブだと思ってる方が多い。しかしだんだんステップアップしていくにつれて、そこに触れないというストレスが多くなる。自分たちで届け、ちゃんと権利も持て、海外にも届けることができるというところに魅力を感じていただけたようです。バジェット(制作費)が少ないなら工夫をすればいい、という反応がありました。
記者:2020年、松竹配給だった行定勲監督の『劇場』が独立系の映画館と配信で同時公開という形になりました。今回も似たような形になるのかと思うのですが、ただ結果的に配信と劇場公開が同時公開ということで、『劇場』は非映画コンテンツ(音楽ライブなど、映画館で上映される映画以外のコンテンツ)という扱いになりました。日本映画製作者連盟は、非映画コンテンツを賞レースの対象にしないのではないかといったこともありますが、そうしたことをどう受け止めていますか?
関:そうですね……これはなかなか突っ込んだ質問だと感じます(笑)。
現状、もし同時期に配信を行うと、非映画であると定められているのだとするならば、そのルールを変えませんか、ということを日映協の中でも話したいですかね。何々だから映画である、何々だから映画でないという論調も、もしかしたらこれからは当てはまらないような作品も増えてくるかもしれません。それこそイギリスではMUBIという配信会社が有名なのですが、出資を含めてMUBI製作の映画というものもあります。ですからもう少し俯瞰で見て、配信映画とは何か、配信ドラマとは何か、ということ、日本に限らず色々なところで会話できるといいかなと思います。
鈴木:配信と同時公開ではありますが、劇場とほぼ同価格の課金式でやることになるので。そこは『劇場』のケースとは少し違うのかなと思っております。
記者:やはり日本ではスクリーンでかかるかどうか、というところが決め手になるのかと思うのですが。先ほどからお話に出てきている、劇場と配信の食い合いはどうなのかというところだと思います。大手メジャーの作品だとやはり劇場を守る、という発想が出てくると思います。この『若武者』がどうなるかは分からないですが、もし仮に非映画扱いになってしまうことがあるとするならば、それは作り手としてはもったいないことではないかと思われるのではないかと思いました。
関:そうですね。指摘されるまでは、その点についてはあまり考えていなかったです。同時に配信をしているから非映画だという認識はしていませんでした。あくまで映画として劇場の公開と併せて、その横に配信があるという形だと思っていました。
鈴木: 僕なんかはずっと自主映画からやっているので、そもそも映画だと思われてないところがあるんですよ(笑)。やはり動員が1万人いかないような小さい映画は映画業界では映画だと思われてない、という思いがずっとあって……。いわゆるメジャーがあって、その下にインディーズがあってという風に、下だと思われがちだと思うんですけど、僕自身は「先端」だと思っています。だからこそ、ずっとそこに軸足を置いてきました。
例えばこの10年で、世界で評価される才能ってどこから出てきたのか?と考えた時に、確実に自分たちがいるところから出てきているぞという思いがあります。それはすごく自信があるんです。『枝葉のこと』にしたってカメラマンは『ドライブ・マイ・カー』の四宮秀俊さんですから。そこはやはり僕らが胸をはって映画をつくり続けている根幹の部分だと思っています。たとえ僕らがやってることが映画だと思われなかろうが、僕らはそれが映画だと言い切るしかないっていうのが思うところですね。
司会:配信と劇場公開が同日であるということで、劇場からネガティブなご意見というはないのでしょうか?
関:それはないですね。困るなという意見も、都内だったら僕も分かるんですよ。都内の方たちって、みんなが行ける通勤圏内に劇場があるじゃないですか。にもかかわらず配信も同時となると、劇場に来なくなっちゃうじゃないかっていう論は分かる気がするんです。でも、現状、東京では今のところ3館でやっていただくことが決まっていますが、その方たちからネガティブな意見は特にないですね。
地方の方はそもそも劇場に行くまでに2時間かかるような方もいて、だから配信で観たいんだという方もいらっしゃいます。そういう意味で地方では、劇場と配信が食い合うことはないと思います。
僕は共存できればいいと思っていますし、とりあえずやってみないと分からない。もちろん過去に同時に公開した作品というのはありますが、実際に自分たちが『若武者』を公開したとき、皆さんが配信でやっていることをどう感じるのか。もしかしたら配信を見てから劇場に来る人もいるかもしれない。もしくは劇場で観た後にまた家で配信を見返したいということもあるでしょう。それならば両方あればいいと思います…って、なんだかポジティブなことばかり考えているんですけど(笑)。
記者:わたしはいろいろな起業家の取材をしているのですが、映画で起業するという人を聞いたことがありません。それはやはり投資家の問題ではないかと思います。なかなか映画業界に投資をしようという方はいないように思うのですが、他の業界から投資を呼び込もうということは考えていらっしゃいますか?
関:今回はU-NEXTさんとコギトワークスが半々で映画に出資をしているという現状です。僕も海外の制作を請け負ったりもしているので、海外のファンドの状況もわりと詳しい方だとは思うんですが、実は日本でも90年代~2000年初頭あたりには、皆さん映画に投資をされていたんです。80年代、90年代は角川映画さんがファンドを組んでいましたし、90年代後半から2000年代にかけてはシネカノンもファンドを組んでいました。ですから日本で映画のファンドがなかったというわけではないんですよね。ただ僕もここ数年、映画業界と関係のない投資家の方たちといろいろと話しているんですけれども、やはり製作委員会というシステムがどうしても配給の窓口権であったり、いろんな権利を持っていってしまうので、投資家にとっては分配が少ないんですよね。いわゆるトップオフされた後の投資分配になります。そして、そもそもベテランの投資家の方たちは、80年代、90年代にあんまり映画でいい思いをしてこなかったというヒストリーもあって、もう映画には投資しないという投資家も多い。
ですがわれわれは、あと何本かつくった後に、匿名組合を組んでNew Counter Filmsのファンドを組成するつもりではいます。
まだ曖昧ですが、1本あたり2500万というキャップですので、2500万×5本という一つの投資ポートフォリオとして、匿名組合を組むつもりです。これはまだ構想の段階ではありますし、資格がないため、僕自身がファンドマネジャーになれるわけでもないのですが、いろいろな経験のある投資家の方に聞くと、僕のこの妄想は、結構理にかなっているらしく、それならば映画に投資する人は増えるだろうとのことなので、これが軌道に乗れば、おそらく3年ぐらいでファンドが組めるようになる。そうするとこのNew Counter Filmsが2500万円のベイビーステップから、1億円で映画を製作しようという具合にステップアップできるようになる。ファンドに関してはそのように考えております。
それは実はアメリカと同じく“作品に投資”という形です。一方でヨーロッパは投資ではなく、“助成金”が主なんですよね。出資のパーセンテージが少なくて、助成金で賄うという形です。ヨーロッパのプロデューサーたちと話すと、みんな助成金をどう取るか、という話になるんですよね。もちろん僕もそれを大いにフル活用すればいいと思うんですけれども、実はアメリカと日本だけが、映画という商品を投資対象に考えているので、ファンドを組むというのは日本の映画界には意外と適していると思います。あとは成功例をつくることだと思うので、製作委員会ではなくNew Counter Filmsでファンドマネジメントをするつもりです。
記者:具体的な話を聞かせてください。New Counter Filmsという会社は要するに、コギトワークスの100%子会社なのか、U-NEXTが出資しているのか、資本金がいくらなのか、誰が何%出資しているのかを教えてください。そして成功報酬分配というのは素晴らしい仕組みだと思いますが、現実の日本映画というのはリクープできない作品の方が圧倒的に多いわけです。ですからどうやって2500万円をリクープしていくのか。そこを詳しく教えてください。
関:まずNew Counter Filmsの会社的な説明をしますと、合同会社なのでわたしと鈴木徳至の二人が代表社員です。ですので、出資は僕個人と鈴木徳至個人です。合同会社を立ち上げるに足りうるお金だけなのでどこからの資本も受けておりませんし、コギトワークスからの資本も受けておりません。New Counter Filmsが企画製作をしたものに対して、コギトとU-NEXTさんが半々出資をして作品を作るというのが、この第1弾作品のやり方ではあるんですが、これも先ほど言ったように、今後はそれを投資で製作をしていけるべく動きたいと思っています。会社の組織でいうとそんな感じですかね。
そして2500万の回収についてですが、さきほど言ったようにU-NEXTさんのこれまでの経験値の中で、大体1万人動員した作品の成績を参照して、1万人を超えれば2500万円は回収できるというシミュレーションを立てました。
より正確を期せば1万3000人で回収できる計算となります。1興行で1万3000人動員した作品は配信だとどのくらいの成績で、パッケージはどれぐらいだろうということをシュミレーションしました。その結果、1万3000人でリクープできるということです。
まずは観客数を映画館数で稼がねばならないのではないかという点ですが、『若武者』で言いますと、国内の公開館数で現状、17館、最終的に、交渉中のところも含めて約50館ぐらいで公開をすれば、1万3000人にいくだろうという希望的観測を持っております。プラスそこに配信が入ってきます。
また海外の話しをしますと、たとえばイギリスの場合、配給会社さんのパワーが強いので、日本のように劇場のチケット代を50%-50%のハーフではなく、配給会社の方が少し取り分が多く、また作品によっても結構パーセンテージが変わってくるんですけれど、今回僕たちがロンドンの劇場さんに、日本と同じように劇場と我々で半々にしませんかという話をしたところ、そんなにイーブンな関係でいいのかと驚いていました。また、我々のスキームではマージンがかかるわけでもなく、セールスカンパニーを通すわけでもないので、いわゆるチケットの半分を純粋に収入として得るということなります。ですので、館数とお客さんが増えれば増えるほど、そこは収益になるだろうと思っております。
もちろん成功報酬詐欺にならないように必ず毎回回収をして還元できるようにはしたいと思っています。ただし、どうしても保障があるわけではないことは確かですかね。
記者:先ほど『若武者』の上映館の話で、東京は3館だとありましたが、これは作品ごとに館数を決めていくということなのでしょうか?それともNew Counter Filmsとしてどの作品でもかけるという形で契約している劇場が決まっているということなのでしょうか?
関:基本的には作品ごとに交渉をします。ただやはりミニシアターとの付き合いはビジネスというよりは人と人との付き合いという要素も多いと思います。今回上映していただく劇場の支配人さんたちとは、普段から親しくさせていただいているところはありますので、次の作品でも一番最初に声をかけることになると思います。もちろん、作品ごとにそのカラーに合った劇場をマッチングさせるということは必要だとは考えています。
記者:興味深い話がたくさんあって良かったのですが、つまるところ皆さんは日本の映画界をどうしたいのかな、ということをお聞きしたくて。たくさん情報がありすぎたので……。
関:ものすごく単純に言うと、自分が見たい映画を作って発表したいということですかね(笑)。
記者:それはお金を払って映画を観に行くファンにとってどんなメリットがあるのでしょうか?
鈴木:つまり、作り手にとってのエゴじゃないかということですよね?(笑)。自分も一応仕事として映画をつくってきましたが、一番フラストレーションが溜まるのは業界として新人を育てる気がないなということなんです。新しい才能がみんな自力で這い上がらねばならない状況を変えなきゃいけないということが発端としてあります。なぜこんなに監督たちが自分でお金を出して、映画を作って……、という形でしか世界にデビューできないのか、それってもう少し業界がなんとかするべきなんじゃないか、と思ったりします。もしかしたらそれが助成金なのかもしれないですし、おそらくaction4cinemaさんが言っていることではないかと思うのですが、作り手として何ができるのか?ということへの答えとして、自分たちで1回やってみようと思っています。それはもちろん先ほどから質問があったように、どうやって売るんだ?という課題はあると思うんですが、それはもうやっていく中で成功していくしかない。例えばこれまでも、ワークショップで映画をつくることなどにスタッフとして関わったりもしたんですが、彼らだって最初は配給宣伝のノウハウなんかほぼない状態で始めていたと思うんですね。でも続けていくうちに結果が出たりするじゃないですか。300万で作った映画が何十億円もの大ヒットを飛ばしたこともありましたし。
今はDCPで自主映画をシネコンでかけられる時代なので、その土俵に立つこともできる。もちろん1本目でちゃんと結果が出せるかどうかは誰にもわからないですけど、やっぱり作り手が自分たちで権利を持って自分たちで売る、それも世界に、ということをやり続けていくために、その環境をどうやって維持していくか? それをどうやって成功させるか?ということは、やりながらでしか分からないことだと思います。すいません、全然シンプルじゃなかったですね(笑)。
関:多くのお客さんが楽しむ映画っていうのは、もう既にたくさんあると思うんですね。要はヒットしている作品です。それはもうあるので、僕たちがそこに挑むということではありません。もちろん僕もヒットしているブロックバスターが大好きです。ですが、そればかりがもてはやされ、売れる、売れないという会話しかないように見受けられます。それに飽きている人たちもたくさんいると思うんですよ。ニューヨークの映画人たちと喋ると、もう観るものがなさすぎると、いつも誰かが戦っているだけじゃないかと。もうちょっと文化的好奇心をそそられるもの、すごいものを観たと思える映画に会いたいんだっていうことを言われる。日本も多かれ少なかれ同じように感じている人がいると思います。だから、みんなが観たいものはもう既にいっぱいあるので、そこは他にお任せして、New Counter Filmsの存在意義としては、衝撃を受けるような映画をお客さんに届けることだと思います。
僕が観たいものを作るんです、という言葉だけを聞くとエゴに聞こえるかもしれません。ただ、コピーに「誰もが、ではなく、誰かが」と掲げているように、それは「僕が」が同時に「あなたが」にもなりうると思うのです。
そして、そこに世界的クオリティを上乗せすれば、観てくれた人が何かしらを受動できるものになっているんじゃないかなということを信じています。
司会:つくられる作品が偏ることなく多様であるということは、わたし個人としても映画ファンとしても、ものすごくヘルシーな環境だと思います。
記者:New Counter Filmsの運営方法について、今後第2弾、第3弾と続けていくうえでどうしていくのか。どういう風に監督や企画を選出していくのか。決めるプロセスをどうされていくおつもりなのかお聞かせください。こういうレーベルができて今後、ぜひ挑戦したいと思う方もたくさんいると思います。どこに連絡すればチャンスがあるのか、もしくはコンテストみたいなことが構想があるのか、などについてもお考えをお聞かせください。
関:監督、作品を決めるプロセスは決めてはいません。ただ鈴木の周囲には二ノ宮監督をはじめ、魅力的な監督が自然と集まってきています。まずはそういう方たちとやりたいなと思っています。ですから今のところコンペをする予定はありません。むしろひとりひとりの監督と出会い、彼らが何を考え、何を作りたいんだろうという会話の中で、一作品ずつ製作していくしかないかなと今は考えています。
鈴木:やはりその人の作品を見て、面白いと思えるか、というのは基準になると思います。この人と一緒にやってみたい、というのが僕らにとっても一番のモチベーションになるので。だからたとえばまったく映画を撮ったことがないような人だと判断ができないところはあります。
記者:大規模な商業映画と、低予算の映画の二極化が進む中、中規模な作品をつくりだすというのはまさに大事なこと。ただし2500万円の総予算というのは低予算映画の範疇であるといえます。スタートとしては現実的なところだと思いますが、やはり5000万円から1億円ぐらいの映画を個人的にも観たいですし、必要なのかなと。ただしそれはリスクも高いですし、難しいのではと思いますが、そうしたところへのビジョンを。
関:いろんなことを同時並行で成功させていかないと成し得ないと思うんですけれども、僕が23年前ぐらいに業界に入ったときにはまだデジタルがなくてフィルムだったんですよね。よく当時の監督たちは「1億円なきゃ映画は作れないよ、撮影日数でいうと30日は絶対だ、そうじゃないと映画じゃない」とよくおっしゃっていました。僕はそういった環境で育ったんです。
今はデジタルになったので当時の費用対効果とは違うんですけれども、それを鑑みると、われわれが目指すべき中規模な作品というのはおそらく1.5億から2億だと想定しているんです。そうすると、いわゆる画面に映る密度も豊かになり、日本の方だけでなく世界の方たちも楽しめる映画になると信じております。
ではその2億という製作費をどう集めるのか、ということなんですが、先ほども言いました通り、ファンドの組成はもちろんそうなんですが、やはりこの2500万円の時点で、ある程度の数字的な成功が必要だと思っております。そしてそれは国内だけの回収では絶対に無理だと思うんです。
今の日本の興行を見返してみても、1億円前後の作品を回収するのはとても難しくて、皆がそこに命を削っているわけです。New Counter Filmsとしてではなく、コギトワークスとして、それぐらいの規模の作品をよく引き受けていて、どうやったら回収できるのか日夜プロデューサー同士で話をしているので、たやすいわけがないというのは自覚しております。ただ国内だけでなく、たとえばイギリスで20館開いたときにはどういう興行収入になるんだろうとか、そうすると日本の興行収入とイギリスともしくは北米というところで、セールスカンパニーに売り切ってしまうのではなく、ちゃんとレベニュー(収入)として勝ち得るんだとするならば1.5億、2億という数字が嘘じゃなくなるのかなと思っているので、売り切らずに自分たちで海外の収入をちゃんと国内同様に得るということをやっていきたいなと考えております。
司会:これで質問は終わりでしょうか。それでは最後にひとことずついただきます。
鈴木:「New」とか「Counter」と掲げておりますが、別に誰かとけんかしようと思っているわけではありません。ヌーヴェルヴァーグとかカウンターカルチャーというのも、もはや半世紀以上前のものなので、今さら何を言ってんのと思う人もいるかもしれません。もちろん内容や表現に関しては新しいものを作家と一緒に模索していくんですが、このレーベルが何に対して「New」であり、「Counter」を掲げているのかというと、まずは仕組みですよね。日本映画の仕組みがちょっと一辺倒になっているのではないか、というところには一石を投じたい。これはもちろん僕らが努力をして、結果を出していかなきゃいけないことだとは思うんですが、この問題提起自体が業界全体、キャスト、スタッフに、よそではこんなことをしている人たちがいるらしいよ、と伝わり、状況改善につながっていく一因になればいいのかなというのが僕の思いです。
関:毎年、日本では500~600本近い新作が生まれています。その中にはいい映画が多いんですよね。ただ日本から飛び出て海外の人たちが観られる本数って多分10%もないですよね。経験がある著名な監督は海外の映画祭で評価される、しかし後の90%近くは、国内だけで楽しんでもらうだけで終わってしまう。そうした中には自主映画的なものや低予算でつくられているような作品もあるのですが、たくさんいい作品があります。それらは、僕の感覚で言うと、監督が頑張ってお金を集めて、頑張って監督して、宣伝も自分でやっていくと……。ふと、その隣にプロデューサーはいないんだっけと思うことがあるんですよね。せっかくいい作家で、いいものを制作しているのに、隣にプロデューサーがいないがゆえに、なかなかたくさんの人にまでたどり着かない。こんな映画があったんだという情報すら知らずに終わるということさえあります。
それをこういうレーベルでまとめ、あのレーベルの作品だったら観たいな、という風に周知に繋がればいいなと思っています。
作品のひとつひとつはどれもいい映画が多いなかで、この作品が面白いよ、という差異による告知、宣伝で勝負をするのではなく、最近でいうところのプロセスエコノミーのように、作り手、生産者、作っている過程に共感できるからこそ、そのブランドを応援したくなるみたいなことにしていきたい。New Counter Filmsの心意気が好きだから、この映画を観てみようかという、作品の魅力プラス、レーベルのブランディングみたいなことで、皆さんに届ける機会が増えればいいなと思っております。
(記者発表は以上。)
New Counter Filmsの第一弾作品、二ノ宮隆太郎監督 映画『若武者』
5月25日(土)世界同時期公開となります。