円居(まどい)レポ①「追う方か、追われる方か?」
こんにちは。劇団コギトのnoteをご覧いただき、ありがとうございます。
こちらのブログでは、2020年度卒業公演の稽古過程の一環である「円居(まどい)」の様子を、広報メンバーの1人が傍観者かつ参加者の目線でお伝えしていきます。短い間ですが、よろしくお願いいたします。
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さて、早速お邪魔する前にまずは「円居(まどい)」のご説明から。
「円居」は今回の卒業公演独特の稽古スタイルです。普段の稽古とは別に、役者、スタッフ、演出、映像・記録スタッフが週に2回、zoom上で集まり、それぞれが稽古中に見つけた問題点やアイデアなどを共有し、話し合う場のことを指します。いわば合同稽古といったところでしょうか。
今公演の場合、普段の「稽古」は、役者1人+スタッフ1人で構成された班ごとにzoom上で行われています。主な流れは下記の通りです。
—――――――――――――――――――――――――――――――――
1.役者が脚本を読む様子を自身で録画(あるいは録音)し、読んでみた感想などを「稽古日記」に記してアップロードする。
2.スタッフは自身のペアに当たる役者の映像(あるいは音声)、そして稽古日記を確認し、それぞれの役職の立場から役者へのフィードバックを日記上で行う。
3.これらを繰り返す。
—――――――――――――――――――――――――――――――――
つまり、各自が稽古の中で行ったことや発見を持ち寄り、それらをつなぎ合わせて作品全体を構想するための場所が「円居」ということになります。なんだか楽しそうですね。あまりにも楽しそうで覗き見したくなってきました。そこで私、広報担当は決めました!BBCの某探偵ドラマに出てきた役柄で言うところの「ロンドンの街を走るタクシードライバー」や「結婚式会場でのカメラマン」のように、誰からも疑問を抱かれない形で円居に忍び込んでやろうと!(嘘です。もう少し堂々と参加しています。第一ドラマの中ではどちらも犯罪者でしたしね。。)
↑某探偵(現代版)。愛すべき変人です。シンプルにかっこいい…かっこいい!
それではこれより本編「円居レポート①(2月9日火曜日回)」をお届けします。この日の参加者は、
・ピンク班(役者と音響)
・イエロー班(役者と衣装・小道具)
・ブルー班(役者と音響)
・オレンジ班(役者と照明)
・グリーン班(役者と舞台美術) ※今回は舞台美術のみ参加
・映像&記録スタッフのお二人
に演出と広報担当を加えた計11名です。
1.舞台美術の申し子、周りをざわつかせる
映像・記録による前回の円居(2月7日、初回)の振り返りが終わったあと、zoomのブレイクアウトルームで何人かに分かれ、各自の稽古がどのように進んできたかを伝えあっているようです。そのうちの一つのルームに忍び込んでみましょう。どうやらピンク班の役者さんがおしゃべりをしているようです。「音声で記録した方がインタビュー感が出ると思って、音声で録ったのをwamっぽい動画にした」…そうでした、今回の脚本はインタビューを基にしてつくられているので、セリフの掛け合いよりも、1人でどのように語るかが工夫ポイントになってくる(らしい)のです。wamっぽい動画っておもしろいですね…というか、そんなふうに加工できるものなんですね。この方の稽古日記も読ませていただいたところ、携帯で録音すると、「音質が悪くて懐かしい感じ」になったそう。ご本人は次回への反省点として書かれていますが、個人的には懐かしい感じ、聞いてみたいです。あ、ペアの音響さんもフィードバックで同じようなことおっしゃってます。次回でも採用されるのでしょうか・・・??
「そもそも家で声を出して何か読むのが久しぶりだった」というピンク班の役者さん。なんと「小学校の音読の宿題ぶりな気がする(!)」そうで、小さいころから絵本の登場人物に合わせて声や口調を変えて朗読チックな遊びをするのが大好きだった広報担当から見ると、そんな人もいるんだなあ…という感じです。割と多くの人がもっと独り言とか言うものかと……思えば一人暮らしを始めた今でもこの癖は治らないし(声に出して読んでみないと理解しづらく感じてしまうくらい、これはやや真剣な悩みです)、気が付いたら鼻歌が熱唱に変わっているし…きっと私より遥かに静かで落ち着いた空間で過ごされているんだろうな、、(と勝手な想像をする、失礼しました)
続いてグリーン班の一員である舞台美術の滝澤氏、ペア相手の役者さんにどんなアイデアを出すか、考え込んでいます。「どこで読んでもらうか、、(相手の役者さんの)家の間取り把握した方がいいかな、って。」大真面目な滝澤氏に吹き出す一同。いえいえ一つの道を究める者に最終地点などないのだ!冒頭で紹介した愛すべき変人探偵にも似た雰囲気を思い出させる奇人、いえ職人っぷりです。
まあでも、今回の完全オンラインでの練習に、役者さんももちろんでしょうが、スタッフさんだってどう工夫すればいいのか、、確かに悩みどころです。表現・演出の仕方や公演形態なども、できるだけ参加者全体で考えて話し合うのも今回の座組の目標です。
2.アクションシーン開始??
ブレイクアウトルームが終わると、「円居」参加者全体の話し合いのお時間です。稽古をしてみた中で見つかった問題点を洗い出します。
まず出てきたのが「スタッフが自分とペアになっている役者に関することばかりに注力しがち。作品全体にまとまりがでるのかな?」という問題。音響さんのいる班は音響がかっこいいけど照明が暗い、照明さんのいる班は照明で雰囲気出されているけど役者の声以外無音などなど(これは極端かもですが)「ちぐはぐが怖い」。話し合いの末、毎週土曜の稽古は本番の気持ちで映像を撮り、それを「円居」で見てすり合わせていくことに。じゃあ、カメラを固定するのか、役者が自由に動かしてもいいことにするか、、これも作品全体のまとまりに関わる、と話し合い。さらには顔を映して撮るかどうか、も議題に挙がります。「カメラを固定しても置く場所によって個性が出せる」という人もいれば、「今は制限をかけてしまわない方がいい」という人も。とある役者さんは「演劇だったら観客は視点を動かせないから、カメラは定点の方がいい」とのコメント。なるほど。。。
とりあえずしばらくはカメラ固定・顔出ししない等の制限をつけず、いろいろと試してみるということで結論がつきました。
ところで顔は映さず定点カメラでインタビューのような映像を撮影するとなると……
こんな感じ…??ちょっと悪いことしちゃった人みたいな構図ですね。。
顔を映さないままカメラワークを許しちゃうと、穏やかなインタビュー映像が一気に逃亡犯を追う緊張感あふれるドラマに早変わり……愛すべき変人探偵、本日3度目の登場。。。
などと脱線したことを考えている間にも円居(まどい)は進みます。
イエロー班の役者である中氏は実際のインタビューに基づく脚本ということもあり「どんなスタンスで読めばいいのか」を相談しています。インタビューされた本人になったつもりで読むのか、全く別人として読むのか。役者とインタビューの対象となった方の性別が違うこともあり、そうなると言葉遣いなどは役者本人の普段のものとは大きく異なったりもして、読みづらさを感じるそうです。誰のつもりで読むのかは確かに気になりますね。。
劇団コギトの内部にいる者としては、脚本を読んでいると、インタビューを受けた方のその人らしさが表れていて(もちろん私が知っている限り、ではありますが)、とてもおもしろいな、それを役者さんが完璧にコピーしてみせていたら、それはそれですごいな、という感じがします。物真似上手ですね。でも読みやすさということを考えると……自分の読みやすい言葉遣いに多少変えちゃってもいいような気がする。
これに対する演出さんの答えは「セリフ読みは真似ではない」とのこと。自分自身のままで読むことを求めている、そうです。ほかにも色んなフィードバックをされていました(↓)。
「自分を消すことはできない、身体は消せない。」
「セリフを読んだときに個人の経験や気持ちが紐づいたら、その存在を消さないで。」
「インタビューの対象者が、役者として以前語った言葉を読んでいたとしても、脚本で編集した段階で、インタビュー時のものとは違う。他者として読むことができると思う。」
この卒業公演が始まる前から、演出さんがちらほらと同じようなことをおっしゃっていたなあ、という印象で、今回の座組で追及していくことに大きく関わる言葉だと思います。思わず引用符まで付けてしまいました。
演出さんの企画書にも「身体を認める」という表現があった気がします。
まだはっきりした意味は理解できてないのですが、演劇って身体に限らず、「(自分のいろいろな部分をジャッジすることはとりあえず置いておいて)、
そこにあるものを認める」という姿勢をよく求められるような、、、?
それができたら楽だよな!楽と分かっているのになぜできないのか、、、
などとぼんやり考えながら、今日の円居はおしまいになりました。
3.おしまい(次回予告)
うーん、初回から思ったより長くなってしまった気がしています。最後までお読みいただいた方、本当にありがとうございました。少しでもお楽しみいただけたら、そして円居の雰囲気が皆さんに伝わっていたらな、と思います。次回の円居レポートは、少し先になりますが、2月25日に公開予定です。もうそのときにはこの卒業公演も終盤に近付いていますね!なお、劇団コギトのnoteの別記事として「役者とスタッフによるインタビュー企画」も公開しています。各班ごとの稽古の様子はそちらでお楽しみください。
それではどうぞ、お元気で。