入院百合小説を書こうとしたら、結局勉強が必至となる。
酔った勢いで書いている。
なので、多少の粗相についてはご承知おきいただきたい。
当方、女性、既婚者であるものの、ずいぶん前から自身のバイセクシャルの可能性を否定できないでいる。
根拠という根拠はないが、素敵な、もしくはタイプの同性に言い寄られたら、フリーであれば間違いなく誘いに応じている、、、気がする、、、。
(例:映画「キャロル」ケイトブランシェット ←理想高いか!)
ここだけの話、新宿2丁目界隈のレズビアンバーについても丹念に調べ、行きたい衝動も持っている。しかし、結婚した責任上、(もちろん夫のことは愛している)不貞は断じてはたらかないことにしている。(当然だ)
ということで、願望を百合小説にしたためようと思い立ち、先ほど10年以上前に作成したpixivアカウントにログインしてみた。
話の筋、主人公、エロイ場面(おい)、様々な登場人物や筋書きは概ね決まっているのだが、いかんせん小説というものを書いたことのない私には、一行書いただけで文才のなさにあっさり匙を投げてしまった。
すっっごく書きたい百合小説があるのに・・・。これが非常に悔しい。
ところで淫靡で甘美で美しい小説といえば、真っ先に浮かぶのは江戸川乱歩である。
(明らかな同性愛の小説、それをにおわせる作品は多数あります)
江戸川乱歩に夢中になったのは小学5年生の時で、図書館で見つけた少年探偵シリーズだった。一気に乱歩の魅力に引き込まれた。一日で2冊も3冊も熱中して読んだと思う。小学生には理解できないオトナな小説も、「江戸川乱歩」という字面だけ追って、子供には理解できないものの、甘美な同性愛やエロチックな雰囲気に没頭していた。つまり、まぁ小学5年にして腐女子であった。笑
ちなみに江戸川乱歩の本に出会う直前は、モーリスルブランのルパンシリーズ、アガサクリスティシリーズ、やや冷ややかに(超失礼)コナンドイルのシャーロックホームズを読みふけっていた。
だいぶ変な小学生だったわけである。
ところで、私自身大学に入学した直後若年性のガンで入院した経験がある。19歳の時である。
ここでお涙頂戴の同情を買うつもりはないのだが、拷問に近い抗がん剤治療をガリガリに受けていた。
信じてくれなくてもいいが、私はかなりの容姿でもあった。
怪しげな看護師のちょっとした接近があったことを告白してみよう。
それは、抗がん剤開始3日目くらいの吐き気MAXの晩。(テキーラ30杯一気飲みした後の気持ち悪さに匹敵すると思ってください)
水を飲んで1秒足らずで吐くくらいの苦悶の体をベッド上でむなしく過ごす。
苦しみの時間というのは残酷なまでに進むのが遅く、1時間経ったかと思えばわずか13分くらいしか時計の針が進まぬという希望のなさ。どんな刑を受けてんだよ、畜生!と憤る前にげえげえ吐く。
ま、抗がん剤治療とはそんなものです。
腕に点滴をされ、吐き気を生産してくる実験動物さながらの入院生活。
ある夜中、熱にうなされ(抗がん剤のせいで、発熱は通常らしい)、寝返りを打てば落ちそうなくらい狭いベッドで転げまわっていたら、ふと暗闇の中眼前に看護師の顔が現れた。
ナースコールは押していない。巡回の看護師だったのだろう。こんな夜更けにも来てくれるのか・・なんていい病院・・。
しかし、ちょっとパーソナルスペース近く・・ないか・・・???
それでも吐き気限界突破の私にとっては天使でしかない、彼女にすがりついた。
気が付くと、額に手を置かれていた。
「熱、そこまでじゃないね」と少し高い声。
女性はやせ型の看護師で、年は3,4歳上くらいに見えた。地味めのタイプだが、ファッション次第では綺麗になりそう。いかにも大人しいタイプ。自信のない声で、こちらまで恐縮してしまうような人だった。しかし、やたら体には触れてくる。じっと目を見てくる。少し落ち着かない。
しかしそれは人の命を預かっている職業故、必要のことなのだろう。こちらは身をゆだねるしかない。
「はい・・。熱はそんなにないかもしれません。でも吐き気が止まらなくて・・・。苦しいですが仕方ないですね」
よくわからない返答をする私。
朦朧とする中、きゅっと手首を握られた。
ああ、脈はかってるんですよね。もう既に数回入院しているけど、こんなに丁寧な看護、初めてかも。
もっと重篤な患者さんだっています・・・よね・・??私これでも若くて生きのいいピンピンした患者だし??
色々と考えは巡るのだが、いかんせん抗がん剤の作用での吐き気は容赦なく荒波のように襲ってくる。どんどん意識は遠のく。
やせ細った骨みたいな私の手首をふわった握ってくれている看護師の手。それでつなぎとめられている気がした。
「眼鏡、かわいいね」
唐突な言葉。一瞬呑み込めなかった。
ん?眼鏡??
眼鏡とは??
ああ、サイドテーブルに置いたあの眼鏡か??
「うぅぅんん???ありがとう、ございます???」と吐きそうになりながら返答。
その時限りなく、看護師の顔が近かった。
眼鏡はもちろんしていない。
キスもできるんじゃないかという距離だった。看護師とはそこまで患者の顔色を見て異変がないか注意してくれるものなのか。なんて行き届いた看護・・・。
プロなんだな。すごいな。やっぱりこの病院は行き届いているな。
専門の目といえばそうだったのだろう。しかし、少しだけそれ以上の感情が看護師にあるのではないかというくらいの息遣いが聞こえて来た。そんな複雑な表情を、その看護師はしていたような気がしたのだ。
しばらくじっと見つめられた。
実はそんなに時間は長くなかったかもしれない。
最後に、そっと優しくおでこに手を当てられて、看護師は去っていった。
期待させてしまってこのオチかという感じだけど、看護師のあの目の奥にある色がなぜか深く記憶に残ってしまった。
熱に浮かされた私の勘違いかもしれないが、その病棟の夜は今も忘れられない。
私自身から発せらる病魔の色気というものがあったのかもしれない。
このような経験は、私だけではなく、誰でも一回はあるのではないだろうか。