両親が子育ての最後に教えてくれたこと
これまでの人生で心が荒んだときが2回ありました。ひとつは大学時代に恋人に振られたとき。もうひとつは就職活動のときです。
就職活動では早々に内定をいただいていましたが、内定していた会社の直近の決算短信で業績が悪化しているのを知り突如不安症が爆発してしまいました。会社が潰れるんじゃないか、すぐにリストラされるんじゃないか?規模のわりには珍しく労働組合がないから、不当解雇されても誰も助けてくれないんじゃないか?新卒カードで入る会社間違えたらもう人生終わりだ。
精神的に未熟だったと今ではそう思えます。しかし当時は何をしていても将来が心配でした。ご飯を食べていても友達といてもゲームをしていてもうわの空。大学の教授やバイト先の先輩に相談しましたが「贅沢な悩み」と取り合ってもらえませんでした。インフルエンサーは新卒で大企業に入らなれば一生負け組だと語りました。不安が不安を呼び、やがて大学に行くこともできなくなりました。甘やかされて育ったツケですね。
アパートの部屋で独りタバコを吸いながら書き換わることのない決算短信を一日中見つめていました。タバコはネガティブになりやすいので良くないのですが、そうやって自分を傷つけ苦しめることでしか正気でいられなかったのです。
そんな暗い毎日を過ごしていた自分を救ってくれたのは両親の一言でした。
「最後は自分で決めなさい」。
ずっと覚えています。蕎麦屋に連れて行ってもらったのに相変わらず不安だ不安だとばかり言う私の話を聞き終えた後、両親はそう言ってくれました。
親の立場からどんな企業に就職すれば良いとか口出しすることもできたはずです。しかしそれをしなかったのは、これからは子どもに子ども自身の人生を背負わせなければならないという親心があったからだと思います。
きっと甘やかされていた私への最後のプレゼントだったのではないかと思っています。「これからは自由だ。でも自由には必ず責任が伴う。自分のケツは自分で拭け。」と。あの日蕎麦をすすりながら、初めて人生の責任を取る覚悟が芽生えました。
それから就職活動を再開し、新たに内定を掴んだ就職先で今でも働いています。もし親に就職先を決めてもらっていたらきっとすぐ辞めていたと思います。俺が決めたことじゃねえ、俺は悪くない。親が悪い。会社が悪い。社会が悪いんだ。そう言っていたかもしれません。
日本は生活保護のようなセーフティネットが世界トップクラスに整備されているために忘れてしまいそうになりますが、外国なら働けなくなって金がなくなった人は野垂れ死にするだけです。日本だっていつまでも助けてくれるわけではありません。
自分の人生の責任は自分で取る。それを胸に留めて生きていきたいと思います。