木版画が好きになった
店では色んな国のヴィンテージのファブリックや民族ものにものを使ったり飾ったりしています。渋ーい深ーいヴィンテージ独特な色合いは、感じてもらっているお店の雰囲気にもかなり貢献してくれてるはずです。ヴィクトリアンのカーテン、1930年代のイランのラグや同年代のアメリカのスタンド灰皿などがありますが、うち1つにペルーの民族人形も飾ってます。それを見たあるツアリストさんが、嬉しいこんなお話をしてくれました。「3体並んでるのは珍しいね。この人形は幸せを呼ぶのよ。3倍呼んでくれるね」って。
一番のお気に入りの民族ものはアフリカ・クバ族のクロス。これは、現在のコンゴでかつて栄えたクバ王国の伝統布で、ラフィア椰子の葉を細く裂いた繊維で生地を織って、幾何学模様の刺繍やアップリケを施したもの。幾何学模様に目がない私にとっては相当に魅了される代物なわけです。民族ものの中でとりわけアフリカのものに魅了されている私ですが、西アフリカのヨルバ族による年に一度行われるヴードゥー教の祭典、エグングンの衣装をご存知でしょうか。この祭典の一番の見所が、モチーフで飾られた色鮮やかな布の衣装を着て、タカラガイの殻の仮面をかぶり、踊ったり歩いたりするエグングンの精霊パフォーマンスだそうです。衣装の説明をさらっとしちゃいましたが、さらっと説明できるようなものではなくて、物凄いんです!店のソファ横の本棚に置いてあるマガジン『RAWVISION』の真ん中手前ぐらいを開いて見てみてください。度肝抜かれますよ!
ヴィンテージのファブリックや民族ものに胸がキュンキュンする私に、朗報が入ってきました。特別展『ラテンアメリカの民衆芸術』@国立民族学博物館(〜5月30日)ー<北はメキシコから南はアルゼンチンまで、古代文明の遺物から現代のアート・コレクティブの作品まで、国立民族学博物館が所蔵する作品を中心に約400点のいろいろな民衆芸術作品を展示>この展覧紹介文を読みながら自分の目がキラキラしていくのが分かりましたものね。
ハバナのシャビーシックな建物とその色に魅了されて写真集ももってるし、アルゼンチン音響も聴くし、メキシコのシルバー925も身につけている。色んな角度でラテンアメリカに興味はあるものの実は行ったことがないんです。仕入れ渡航の行き先を決めるときに何度も挙げるのですが、遠さに怯んでしまう。でもいつか必ず行ってやる!なんて、私の意気込みは横に置いといて、この特別展に早速行ってきました。展示場は2階まで続き400点というボリュームの凄さも感じてきました。私が虜になったコーナーはペルーの古代布とブラジルの先住民族の仮面、そして木版画。木版画に心奪われるとは予想だにしてなかったのですが、20世紀前半ブラジル北東部で流行した『紐の文学』と呼ばれる民衆本の表紙や挿絵が木版画で描かれていたそうなのですが、これがまたシュールで可愛いのです。一方メキシコの木版画は作品の中の訴えかける目と合ったら離すことができないぐらいとてもパワフルなものでした。
この展覧で、ラテンアメリカの新しい面を知ることができました。本当に素晴らしかったです。その上に図録まで素敵。表紙のデザインも素材も一味違って、そしてハードカバー。店の本棚に入れておきました。珈琲片手にゆっくりご覧ください。