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かけ声は、家の中だけでよろしく。


ほっ、いよっ、よいしょ、どっこいしょ、よっこらしょ、とりゃー、いちにのさーん・・・。

重いものを持ち上げるとき、どんなかけ声を発しますか?「かけ声がなくても持ち上げられるよ!」という方もいらっしゃるでしょうが、ついつい声が出てしまいますよね。

おじさま、おばさま世代の中には、「よっこいしょういち」とか、「どっこいだいさく」まで叫ぶ方もいらっしゃるかもしれません。(個人のお名前をそんな風に使うのは、不謹慎ですが・・・)


夫は先日、娘の栄養剤が入った段ボールを持ち上げるときにも、思わずこのかけ声を言っていました。

「ゆー、びっ、ちゃーーーん」

なんのこと?ですよね。



*****

夫は二女の「ゆう」を「ゆーびー」と呼ぶ。
そもそも、それは私のせい。
私はご機嫌なとき、子供たちをちょっとかわいく呼ぶ癖がある。

例えば、長女は「てぃく~」
長男は「ぴょんきち」
(これらはほんの一例です。)

全く一文字も、本当の名前と被っていない。しかも、かわいいかどうかも極めてあやしい呼び方だけど、私にはそれが自然すぎて意識すらもしていない。

不思議な呼び方は日替わりで変化し続け、もはや何が最終形かもわからない。
子どもたちはあきれながらも、そんな私に付き合ってくれている。(もう、そうするしかない。)


お子様を呼ぶ時、多くのご家庭でオリジナルのかわいい呼び方をするってめずらしくないんじゃないかな、と思う。
例えば「ゆう」なら、「ゆう」と呼び捨てたり、「ゆうちゃん」「ゆうくん」と呼ぶだけでなく

ゆうたん
ゆうゆう
ゆうきち
ゆうぴょん
ゆうりん
ゆうっぺ
ゆうのすけ
ゆっぴー
うーちゃん

などなど、バリエーションは無限。


子どもに対してだけではなく、親からそんな風に自分も呼ばれていたり、恋人や友だち同士でもそう呼び合ったりした経験がある方は、結構いると思う。

私はそれがちょっと激しい。
(一応申し上げますが、夫には一切そんな呼び方をしたことはありません。私は夫を「先輩」と呼んでおりましたから。理由は…、割愛。)


子どもだけでなく夫も「こいつ、またやってるな」くらいの感じで完全に聞き流しているので、家族はこんな母をうまくスルーする能力が抜群に備わっている。

当然これは家の中だけのことで、しかも子どもたちが幼かった頃の話。
さすがに大きくなってからは、こんな呼び方をしたら無視されるか、嫌がられる。だから今は我慢して、普通に子どもを名前で呼ぶことが多くなった。たまに長男に「ぴょんちゃん」とか言ってしまうが、彼はもはや聞いていない。


しかし二女には未だに、毎回かわいい(おかしな)呼び方をしてしまう。


小さな頃は、私は二女を「ゆーちゃくちゃ」と呼ぶことが多かった。
ところが2000年の年末、これが大変化する。その原因は次の曲との出会いだ。


MISIAさんの大ヒット曲「Everything」


「you're everything you're everything」のサビに乗っけながら、娘を「ゆびすぃん、えぶりすぃん」と、呼ぶようになってしまった。
さらに私がノリノリ過ぎると、

ゆびすぃん、えぶりすぃん、えぶりすぃゆびすぃん」

と、折り返し風のロングバージョンまで飛び出すことも。


「ゆう」のままの方が、よっぽど呼びやすい。

最近は「ゆーびー」か「ゆびすぃん」にすっかり私は落ち着いた。
反復学習のように私の歌を聞いていた夫も、当然のように私の呼び方を習得してしまった。

「ゆーびー」だ。

そしてこともあろうに、ゆうを抱き上げるときのかけ声は、

「いち、にの、さーん」みたいに
「ゆー、びっ、ちゃーーーん」となってしまったのだ。


約30キロの脱力した娘を抱き上げるには、かけ声が必須。声を出しながら気合いを入れないとなかなか持ち上がらない。

この恥ずかしいかけ声は、家族しか知らない。長女や長男はもう、それは当たり前すぎて笑いもしない。
家の中なら、まあいい。せめて、うちの駐車場なら許されるのだけれど。




先週の大学病院の通院日、病院の駐車場で娘を車椅子から車に移乗するときに、夫はスクワットのように腰を落として、娘を抱き上げながら


「ゆー、びっ、ちゃーーーーん、いよぉ〜っっと!」


と、すっごい大声を出した。

もともと夫の声は大きい。
抱き上げるときのかけ声を、周囲100メートル圏内の人なら充分に聞こえるほどの大声で言い放ってしまったのだ。
しかも「いよぉ〜っっと!」までトッピング。夫の顔に歌舞伎の隈取りメイクをしてやりたくなるほどの、見事な「いよぉ〜っっと」だ。

夕方の大学病院の駐車場は、帰る人でいっぱい。
近くを歩いていた人たちも、少し向こうの方で車に乗り込む人たちも、駐車場の係員さんまでが振り返って、クスクス。


やってしもた。

本人もすぐに気がつき

「よっこいしょってか、どっこいしょやなぁ、ゆう。」

と、必死で取り繕うように、抱いている娘に話しかけている。

他人のふりもできないほど近距離にいる私は、夫に「声がでかいわ」と言いながら、顔を隠すように素早く人々に背中を向けた。

夫は私を見て、にやっと笑い、

「何のことか、わからんよな?よっこいしょに聞こえたよな?」

というので、私は黙って首を横に振り、哀れみの目で夫を見つめた。


*****

ちなみに私は、ゆうを抱き上げるときに

「ゆっ、びっ、すぃん」

と、スタッカート気味に声を出します。
そう、私も夫と同類のかけ声を発しています。でも、夫ほど大きな声は出さないから、外でやっても平気。


なんの話をしているのでしょう?



もしも重いものを持ち上げるとき、または誰かを抱き上げるとき、

「ゆっ、びっ、すぃん」もしくは
「ゆー、びっ、ちゃーん」で、一度お試しくださいね。

軽く感じるおまじない、かもしれないですから。
ただし、大きな声にはご用心。









おふざけな話に付き合っていただき、ありがとうございました。
本人はいたって、まじめです。

見出し画像は、みんなのフォトギャラリーから、着ぐるみさんの可愛いイラストをお借りしました。
こちらの着ぐるみさんの記事、ぜひご覧になってくださいね。とっても感動します。胸がぎゅっとなります。
着ぐるみさん、ありがとうございました。




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