まぁるい春キャベツを見るたびに「クリキャベ」を想う、そんな春です
「このお話が本になったらいいな」
昨年noteで、せやま南天さんの「クリームイエローの海と春キャベツのある家」を読んだ時、素直にそう思いました。
私はせやまさんのエッセイも大好きで、みずみずしくて、テンポも良くて、読みやすい文章を書かれる方だなぁと、ずっと思っていました。
一目惚れした、いえ、一読惚れした「クリームイエローの海と春キャベツのある家」が見事に2023年の創作大賞を受賞され、ほんとうに本になり、この春、私の手元に本がやってきました。
まぶしくて、嬉しくて、noteってすごいなぁって思いました。
ワクワクしながら真新しい本を見つめ、あまりに可愛らしい表紙にうっとり。
本を一気に読み、あぁ、これこれ、このお話!とあらためてじんわり。
いい!やっぱりこのお話、好きだな、と思いました。
どの部分が加筆されたのかな、と思いながら、もう一度、noteに投稿された作品も読み返しました。違いを探しながら作品を読んでみる、そんな読書の楽しみ方も新鮮で、とても興味深い本の読み方になりました。
本では、主人公の津麦と母親との関係性が、noteの作品よりもさらにくっきりと描かれていて、お話がより奥深く、重みを増しているなぁと感じました。
あらためて、これは私の大切な一冊になる、と思いました。
私は読書は大好きですが、小学生時代から読書感想文が嫌いで、大の苦手です。
「すごい」とか「おもしろい」とか、あらすじしか書けない子でした。
それは今もたいして変わらず。
なので、私が感想を書くのはなんだか気が引けるのですが、本を読んで強く心に残ったことを、少しだけ書いてみようかなと思います。
(ここから一部ネタバレになります)
クリームイエローの海と表現された、床いっぱいの洗濯物たちの海。
それは、5人の子どもたちをひとりで育てているシングルファーザーの、限界ギリギリの日常から取りこぼされた家事たち…
この一節、せやまさんの感性がキラリと光っているなぁって、とても感動しました。
洗濯物の海。
その、「クリームイエローの海」がこの家族の綻びや痛みの象徴のよう。
でもそのひとつひとつは茶色でもグレーでもない、優しいクリームイエローであることに、読みながら、私は小さな希望を感じていました。
洗濯されたものを片づけたり掃除したりするゆとりさえもなくて、
それでもきちんと子どもたちにご飯を作り、子どもたちを育てている父親。
新鮮な「春キャベツ」は、父の愛情そのもの。
海とキャベツ、身近なそれらが物語のなかで大切な意味を成していて、とても愛おしくなります。
一生懸命生きる家族の日々が、生き生きと目の前に見えるようでした。
このご家族の家に家事代行サービスで来ている主人公の津麦が、「その水を掬う人になりたい」と、家族一人ひとりに寄り添えたのは、やはり津麦と母親との関係性にその理由があるんだなぁって思いました。
思い込みの向こう側にある真実に触れることだったり、
少しだけお互いの本当の気持ちを通わせることだったり。
そんな小さな心の変化の中で、登場人物たちの気持ちが前へ前へと動いていく。
読み終わった時に、
ホッとするような、
前を向きたくなるような、
誰かに寄り添いたくなるような、
そんなお話だと思いました。
そして、さらに光栄なことが。
せやまさんに想いを伝えたくて、感動しながら書いた私のコメントを、帯に載せていただいております。
雑な私がついつい破ってしまいやすい本の帯を、大切にラミネートしたい気持ちです。
しかも、おぉー!わぁ!っていうnoteのお仲間たちのお名前も!
見て見て!と、家族には見せびらかしました。ただし、この喜びを、私を琲音だとは知らない友だちや親戚、知人にも、誰にも言えないのはちょっと残念ですが。
それ以上に、この秘密を共有できる帯友がいることに、実は内心ワクワクしております(笑)
「めちゃくちゃ素敵なお話だから、読んでみて!あ、ぜひ帯も大事にしてね!」と、私のまわりの人に本を紹介したり、プレゼントしたりしようと思っています。
重版も決まったとのことです。
たくさんの方に、ぜひぜひ読んでいただきたいです。