息子たちの気ままな卒業旅行と、シブいお土産
北海道へ卒業旅行に出かける息子たちの集合場所を聞いて、びっくりした。
羽田空港。
そこまでは自由に各々が行く、と息子は言う。
え?意味がわからないんだけど。
田舎の地元から遥かに離れた羽田空港まで、どの手段を使っても半日くらいかかる。
そこはみんなで一緒の新幹線やバスを使って、わしゃわしゃ楽しく行ったらいいんじゃないかな?
道中も旅行じゃない?
最寄りの駅から友だちとずっと一緒に行きたい派の母には、彼らのルールが理解できなかった。
でも彼らは、その自由さを楽しんでいるようだ。
ひとりは新幹線で新横浜駅まで行って、そこからリムジンバスで空港へ。
ひとりは新幹線で品川駅まで行って、そこから電車で空港へ。
ひとりは夜行バスで空港へ。
ひとりは東京で前泊してから空港へ。
もうひとりは当日バイトでどうしても行けなくて、翌日ひとりで北海道へ。
5人が5人とも、わざとそれぞれが違うルートを選びながら、オンラインでお互いの状況を伝えあって、羽田空港までのひとり旅を楽しんでいるように思える。
そもそも、昨年度に行われた学校の研修旅行も、そんな自由さがあった。
学校から全員がバスで出発し、途中の街で宿泊しながら各地の工場見学などをして、最終日は東京へ行く、という行程なのだが、なんと、最終目的地の東京で解散だった。
翌日は土曜日で学校が休みだったので、解き放たれた彼らは、それぞれ自由に東京から動くことができる。
新幹線の帰りの切符は全員に渡されているが、払い戻しをして好きな時間に帰ればいい。
もちろん、すぐに帰ってもいいし、東京観光したり、少しそこから足を伸ばして旅行する人もいたり、さらに宿泊をする人もいたり。
友だちと動いたり、ひとりで動いたり。
その自由気ままさが、とても斬新でいいなと思った。
当然、息子の仲間たちは、好きなようにそれぞれが動いたようだった。
息子は東京から少し足を伸ばして、ひとり温泉旅を計画し、宿も予約していた。
おじいちゃんみたいだ(笑)
「お家に帰るまでが遠足ですよ」のルールを越えた大人の遠足を、学校もオススメしているようだった。
そんな校風なので、今回の卒業旅行も空港集合になったのだろう、と思う。
一時は北海道でも、到着した空港からそれぞれが行きたいところへ行こうか、という話もあったらしいが、流石にそれはしなかった。
レンタカーで北海道を一緒にまわり、みんなで気ままな旅行を楽しんだようだ。
そしてやっぱり、羽田空港まで帰ってきたら、そこで自由解散となった。
*****
帰宅した息子は、なんとも渋いお土産を我が家に買ってきてくれた。
木彫りのフクロウ
私は見た瞬間、一昨年に感じた「え!」を思い出した。
それは、諸事情があって我が家に巡ってきた年季ものの木彫りのクマを見た時に感じた気持ちだ。
鮭はくわえていないけど、黒光りしている大きな親子のクマで、正直言ってちょっと苦手な佇まいなので、置き場所に困った覚えがある。
だからびっくりして、一瞬、言葉が出ず…。
「買いたいわけじゃなかったけどさ、店のおじいさんにめちゃくちゃ話しかけられて、買うしかなかった。半額以下にしてくれたし。8,300円を3,000円にしたるって言われてさ。」
息子が微妙な表情をしながら、フクロウを持ちあげて、裏をそっと私に見せてきた。
『〇〇家』って、うちの苗字まで彫ってもらってあるし…。
私はそんな息子とフクロウを、まじまじと見つめた。
いろいろ思ったけれど、フクロウは『福を呼ぶ』そうだし、赤ちゃんを抱いてる母フクロウだし、その彼の気持ちにありがとう、と思った。
翌日、またフクロウを触りながら、息子が言った。
「店のおじいちゃんが、かなり高齢のおじいちゃんでさ。俺、おじいちゃんには弱いんやわ。特に、じいちゃんの一周忌やったやん?」
彼の旅行中、私の父の一周忌だった。
彼の気持ちを聞いて、そうかぁって思った。
木彫りのフクロウ、ちゃんと大事に飾ろうと思い、棚に並んでいる父と義父の写真の横に、ちょこんと置くことにした。
そして、一緒に行った彼の友だちが、私へお土産を買ってきてくれました。
わぉ!おばちゃんは嬉しいよー!
ありがとうございました!
フクロウ親子も見慣れてきたら、可愛いと思えなくもない気がする。
特に赤ちゃんは可愛い。
それに一周まわって、逆におしゃれとも言えるような気もしなくもない。
息子に「アパートに持って行く?」と聞いたら、全力で首を横に振ったのは、気のせいだと思いたい。
フクロウパワーで、皆さまにも福が届きますように!