「コーヒーもう一杯 夜の歌集」編者セルフライナーノーツ【試聴リンクあり】
2021年5月末、僕の主催するイベント「コーヒーもう一杯」に参加していただいたミュージシャンによる同名のコンピレーションCDを、2枚同時にリリースしました。
そのうちの1枚「夜の歌集」は、日が落ちた頃から真夜中までの時間を想定した選曲で構成しました。
今回は、このアルバムの収録曲を1曲ずつ解説していこうと思います。
ぜひ動画と共にお楽しみ下さい。
1.僕の万年床 / アジマカズキ
愛知県を拠点にソロ弾き語り、バンド「すぱっつ」、ロックDJなど、幅広く精力的に活動するアジマカズキ。
ライブでいつも披露されていたこの曲が僕は大好きで、このコンピレーションを作ったきっかけもこの曲を音源化するためだった、と言っても過言ではありません。
浮遊感のある不思議なメロディーが導く、彼ならではの文学的でネガティブな歌詞が冴えるスローナンバー。
2.虫の音 / 冬支度
音楽好きが目を瞠る卓越したテクニックとアンサンブル、そして飄々とした人柄でコアなファンを増やしている大阪のアコースティック・ユニット、冬支度。
アコースティック・ギターやマンドリンなどの弦楽器の優しい響きと、フルートやアコーディオンの儚い音色に乗せて描き出される、何気ない日常の風景を切り取った端正な歌の数々は、音楽ライターからも高い評価を得ている。
ノスタルジックなアコーディオンの響きと共に初秋の風情を静かに歌う、どこか無常観を感じさせる1曲。
3.暮らしに歌を / コーラスウォーター
アメリカの伝統音楽・ブルーグラスの大学サークル出身の4人組、コーラスウォーター。
トラディショナル音楽とJ-Popの融合を目指す彼らの「ブルーグラス・ポップ」は、既に多くの幅広い世代の音楽好きを魅了する。
ささやかな願いをこめた丁寧な歌詞が沁みる、少し陰りのあるメロディーを流麗な演奏で聴かせるミディアム・ナンバー。
4.眠れない夜の唄 / すぱっつ
前述のアジマカズキ率いるバンド・すぱっつ。
元々はスピッツのコピーバンドから始まったこのバンドはメンバー全員が「たま」を敬愛するグループでもあり、それを思わせる飄々とした歌詞とポップ・サウンドが、どこか不思議で心地よい余韻を残す。
トイピアノや玩具楽曲を使ったサウンドとアジマカズキならではのファンタジックな歌詞が、なんとなく「みんなのうた」を連想させる楽しい雰囲気のフォークロック。
5.銭湯のうた / 海洋天堂
愛知を拠点に活動する女性2人組アコースティックユニット・海洋天堂。
アイリッシュ・ミュージックや日本のフォークをベースにしたサウンドと少年のような歌声で、とぼけた雰囲気の歌詞をちょっとヘンテコなメロディーラインで歌うさまは、女性版「たま」という感じ。
「私、お風呂が嫌いなのよね」という冒頭からタイトルを裏切る歌詞がユニークで、まったりとしたマンドリンと揺らめくようなタブラの響きが正しく湯船に浸かっているような気分にさせてくれる1曲。
6.パラレル同窓会 / トロエッパ
金山の老舗喫茶店であり、近年では穴場のライブスポットとして全国の音楽好きにも有名なブラジルコーヒーの店主・角田波健太氏の助言により、福沢幸久をバンマスに同店の従業員たちで結成されたポップ・グループ。
メンバー全員がソロ活動をしていて、バンド内でも曲を書いてそれぞれヴォーカルをとり、音の雰囲気も76~78年頃のシティポップ前夜のジャパニーズポップスを連想させるさまは、さながらB級シュガーベイブという感じ。
ギター担当の加藤眼球のペンによるこの曲は、掴みどころがない不思議なポップ・サウンドとユニークな歌唱が特徴の「大人の童謡」といった感じの1曲。
7.Dismaland / リバーヴス
90年代から名古屋の音楽シーンで活動を続けるベテラン、リバーヴス。
伸びやかながらも渋みのあるヴォーカルと、グルーヴィーで温かみのあるAORサウンドが「酸いも甘いも噛み分けた大人のシティポップ」という雰囲気を醸し出す。
深夜の都心高速をゆったりとドライブしているような雰囲気の、ビターながらもエモーショナルな1曲。
8.七面鳥を食べた夜 / 百景借景
名古屋を拠点に「カタリカタリ」や「しょうにゅうどう」などのバンド活動を展開する河合愼五率いる、様々なキャリアを積んだ4人のミュージシャンによるアコースティック・ユニット、百景借景。
バイオリンやワイゼンボーン、フルート、コントラバスなどの楽器を駆使して独特のアンサンブルを奏でるスタイルは、フェアポート・コンヴェンションや「はちみつぱい」に例えられる。
ゆっくりと噛みしめるように流れる演奏が、寝静まった時刻の食堂のような雰囲気を感じさせる、濃密なインストゥルメンタル・ナンバー。
9.極夜行 / ベイブス
愛知や三重を拠点に音楽活動をするエナイダニコウヘイのポップ・ユニット、ベイブス。
新旧のロックに影響を受けたメロディーやサウンドと、文学青年的な歌詞を繊細な歌声で淡々と歌う雰囲気は、幅広い世代のポップス好きを魅了する。
ビートルズを彷彿する優しく切ないメロディーと、繊細なアコギとピアノの響きが、雪の降る夜によく似合う儚い雰囲気のバラード。
10.yotaka / そらしの
ラストは、ピアノ弾き語りのシンガーソングライターとして、セッションやバンドのサポート活動の鍵盤奏者として、愛知を拠点に活動するSSW・そらしの。
宮沢賢治『よだかの星』をモチーフとしたミディアム・ナンバーで、真夜中の空を思わせるしっとりとしたピアノの響きと、優しくも哀しい歌詞が心に沁みる美しい1曲。
以上、厳選した収録曲10曲は、『夕暮歌集』同様にいずれも歌心あふれる名曲揃いで何度聴いても飽きない、と編者の私は自負します。
SoundCloudにて全曲、1コーラスのみのサンプル音源が聞けますので、音楽好きの皆さんにぜひとも一度聴いていただきたいと思います。
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