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コーヒーもう一杯 vol.33 イベントレポート

滋賀・東京・名古屋(メンバーの在住場所は違えど便宜上の活動区域として)のアコースティックを基盤とした個性派バンド3組、という今回のブッキングは、初夏の告知開始から名古屋ハポン周辺の音楽好きに大きな期待が寄せられ、おかげさまで当イベントでは珍しく(苦笑)多くのご予約をいただきました。


今回3組ともその期待に違わず、どころかその期待以上のライブを披露してくれました!


コーラスウォーター
撮影・松波宏尚

1番手は、当イベントでもお馴染みの「名大ブルーグラス同好会」出身のブルーグラスポップ・グループ、コーラスウォーター

メンバーの在住地が名古屋・東京と半々に分かれてしまったため活動のフットワークがやや鈍くなり、今回は久しぶりの登場。
抜群の演奏力をもって、米国伝統音楽でモダンなポップスを奏でるスタイルは変わらないものの、数年前まで感じたフレッシュでちょっと(若者らしい)ワチャワチャした雰囲気は鳴りを潜め、ちょっと渋みを増した円熟味を感じさせる演奏が、彼らを見慣れている僕にはちょっと感慨深い印象。

正直なところ、ソロが弾ききれていなかったりと彼らにしては若干精彩を欠く場面はあったものの(練習不足が否めないとは本人談)、初見の人はやはりそのアマチュアのレベルを遥かに凌ぐ演奏力とオリジナル楽曲のクオリティの高さに唸らされたに違いない。

Saboten Neon House
撮影・松波宏尚

2番手は、東京を拠点に活動するフォークロック・バンド、Saboten Neon House

4人組なれど、今回は不運にもギタリストが急病で欠席となり、急遽アコギ・ベース・ドラムという3人編成のアコースティック・バンド形態での出演。
完全な形での出演でないことは残念だけど、元々フォーキーな音像で歌心溢れる楽曲をじっくりと聴かせるスタイルの彼らなので、さほど違和感はない。

シティ・ポップ主流の音楽シーンと少し距離を置いたそのノスタルジックな雰囲気は、正に「日常に寄り添う」音楽そのもの。
フォーキーな音像のロックバンド、というと、やはりはっぴいえんどやサニーデイ・サービスを連想するけど、それらのグループ特有の緊張感はなく、良い意味で「隙のある」音の風通しの良さがとても心地よい。
僕の好きなグループに例えるなら、はっぴいえんどよりはジプシーブラッド、サニーデイよりはハッピーズ、といったところか。
高田渡のカバーも、実にハマっていて素晴らしかった。

ゴリラ祭ーズ
撮影・松波宏尚

そしてトリは、最年少でありながら(だからこそ)精力的な活動で脂が乗っている滋賀の3人組・ゴリラ祭ーズ

タワーレコード・レーベルからのアルバムリリースや、「レコード・コレクターズ」誌などに寄稿する音楽ライター・松永良平氏との交流など、音楽業界の筋からの評価も高い彼ら。
個人的には、過去にサポートを加えた5人編成でのライブや、中心人物・古賀礼人の弾き語りライブは観たことあるが、正規メンバー3人だけのライブをみるのは、今回が初めて。

1曲目こそ、エレキギター・エレキベース・ドラムスというシンプルなギターバンド・スタイルで演奏していたものの2曲目以降からは徐々にその編成を崩していき、リコーダーや鍵盤ハーモニカ、トイピアノやマリンバなど、彼らのトレードマークとも言える楽器も、そこかしこに飛び出す。
誰がどのパートということも決まっていなくて、メンバーはそのポジションを楽曲ごとに変えていく様子は、比較的バンド然としていた5人編成でのライブと比べると、だいぶアヴァンギャルドでフリーフォームなスタイルだ。
後に古賀君のXポストで明かされていたのは、ほぼ新曲だけのセットリストだったとのこと。攻めている。

とは言っても、観客を置いてけぼりにするような感覚は全然なく、出す音やメロディーをあくまでもポップに響かせるあたりは、栗コーダーカルテットやSAKEROCKを連想させる。

加えて言えば歌ものはいずれも味わい深く、「HOSONO HOUSE」期の細野晴臣を思わせる古賀君の低音ヴォイスと絶妙にマッチしていた。
自由奔放な音作りと、低い声での歌唱、それをポップにまとめ上げるさまは、個人的には初期のケヴィン・エアーズの世界を感じさせた。
ファンに向けたバンドの定番曲や安易なコール&レスポンスなどなくても、その場で出てきた音だけで聴衆を巻き込んでいくライブ、見事という他にない。

以上、三者三様の素晴らしいパフォーマンスで、今回も実に楽しい初秋の昼下りとなりました!



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