私的名盤①麗蘭「麗蘭」
もう30年近くずっと僕の大好きな、ブルースロックユニット・麗蘭。
恒例だった年末の京都・磔磔でのライブが、今年4年ぶりに開催されるという。
みんな待ちわびていたのだろう、チケットは当然ソールドアウト。
今日から3日間(27~29日)だけど、僕は諸事情により断念した。
来年こそはぜひ行きたいと思う(できれば全日程!)から、どうか元気でいてくれよ、お二人共。
高校生の頃、僕は音楽の好みではガチガチのパンク小僧だったけど、ある日突然"ブルース"という音楽が知りたくなった。
"ブルース"は、ロックの歴史を紐解くと必ず出てくるし、当時の僕の"神"だったブルーハーツのルーツでもある。
でもよく知らない。何を聴けばブルースがわかるのだろう、と考えあぐねていた頃に、僕はこの名盤と出会った。
なんだかワルそうでロックなお兄さん2人に"麗蘭"という怪しげな漢字のフォント。
「なんか知らないけど、この人達がきっと"ブルース"に違いない!」と感じた少年の嗅覚は、やはり間違ってはいなかった。
解散の表明こそ無かったものの活動停止していたRCサクセションのギタリスト・仲井戸"チャボ"麗市と、同じく"冬眠中"だったストリート・スライダーズのギタリスト・土屋"蘭丸"公平が1991年に結成したのが、このブルースロック・ユニット、麗蘭だ。当初はツアーのみの活動だったらしいが、手応えを感じた2人は同年にこの1stアルバムをリリースした。
80分弱の収録時間たっぷりに、チャボさんの詩的で文学的な言葉が並び、2人のブルースギターが絶妙に絡み合ったり時には火花を散らし合ったりする音世界に、パンク一辺倒だった僕は完全にノックアウトされた。
ストーンズの『Sympathy For The Devil』を彷彿させる悪魔的グルーヴで揺さぶられる1曲目「ミッドナイトブギ」に始まり、ややリラックスしたムードの「待ちわびるサンセット」「さみし気なパイロット」、紫煙たなびくスモーキーなスローナンバー「真夜中のカウボーイ」「ユメ・ユメ」、フォーキーで牧歌的な「ハイキング」「ハーモニー」、2人のギターがうねりを上げるディープなブルースロック・ナンバー「ココナッツ バター」「がらがらへび」、ドゥービー・ブラザーズの『Listen To The Music』からインスパイアされたであろう「ミュージック」に、夏の午後に溶けてゆくようなラスト・ナンバー「夏の色調」まで。
60~70年代ブルースロックのうねるグルーヴ感に日本文学的な感性を加えた楽曲群は、未だに追従者が見当たらない圧倒的な完成度を誇る。
その中でも眉唾なのは、やはり4曲目「今夜R&Bを...」だと思う。
オーティス・レディングの『The Dock Of The Bay』を連想させる、夜の香りが漂うヴィンテージ・ソウル・サウンドをバックに、チャボさんがいにしえのR&Bへの愛をスマートに歌う。
そして圧巻なのは、数多のブルースマンやソウル・シンガーなどのレジェンドの名前を次々と連呼する終盤だ。
この曲が、僕にとってのブラック・ミュージックの教科書になったことは言うまでもない。
もうリリースから30年以上も経っているが、今聴いても普遍の魅力を放っている。
その後の麗蘭は、毎年年末の磔磔でのライブやフェスへの参加、CDリリースなどをマイペースに続けて今に至り、結局2人にとって最も継続期間の長いグループとなっている。
この間、フルアルバムは3rdまでリリースされているが、やはりこの1stは超えられていないと僕は感じる。
結成当初のツアーは『Welcome Home!!』というビデオ(現在はDVDになっている)になり彼らの初のフィジカル作品として1stCDに先駆けてリリースされた。
僕も観たが、正しく"熱狂のるつぼ"と表現しても過言ではない、凄まじいツアーだった。
きっとその熱量があふれて、この1stができたのだろう。
おそらく今ではもうなし得ない、平成日本のロックシーンに燦然と輝く名盤だ。
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