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「珈琲マインド」から、能登半島地震に寄せて。

その時、僕はアルバイトの最中でした。
毎年、元旦から営業する名古屋市の大型商業施設のレストラン街は、福袋やセール品を抱えたお客さんでごった返しており、午後4時という昼食には遅く夕飯には早い時間帯にもかかわらず、中華レストランの店内はほぼ満席。
その店のバイトリーダー的な存在の僕は、学生や外国人のアルバイトたちに指示を出し、忙しくなるであろうディナー帯の準備を進めていました。
そんな時、お客さんやスタッフのスマートフォンから突如、悲鳴のようなアラーム音が一斉に鳴り響き、その直後に「揺れ」がやってきました。
縦に振動するような「揺れ」ではなく、横にユッサユッサとゆり動かされるような不気味な「揺れ」
それは、かつて僕も体験したことのあるものでした。
程なくして揺れは収まり、その後は何事もなかったように多忙な元旦の夜を迎えました。

それからのことは、御存知の通り。
「能登半島地震」で壊滅的な被害を受けた地域は復旧の目処が立たず、1月6日現在でも余震が続き天候悪化による二次災害が懸念され、未だ予断を許さない状況です。

やはり連想してしまうのは「3.11」です。
当時、家具職人の修行中だった僕は、工房で先輩たちと製作の真っ最中。
その時に感じた「揺れ」は、かつて体験したことのない大きな横揺れであり、背筋に寒気が走るような不気味なものでした。
その後、帰宅して見たテレビに映し出された惨状は、いつまでも心に焼き付いています。
当時とっていた読売新聞も、未だに3月12日以降の数日分を所持しています。

読売新聞 2011年3月12日
読売新聞 同日夕刊

情報確保のため、ツイッター(現・X)を頻繁にチェックし、それがきっかけで日常的に最も利用するSNSとなったのもその頃です(そういう人は多いのではないかと)。
当時僕は音楽好きが高じて「Rumble The Whiskey!」という自主イベントの主催を始めたばかりで、震災の翌月上旬に直近のイベントがあったので、それをチャリティー・イベントとしました。

Rumble The Whiskey! vol.4 フライヤー

2000円1ドリンク付きのチャージから500円を募金する、というなかなか思い切ったチャリティー内容で、確か数万円の募金ができたように記憶しています(確かちょっと赤字でした)。

電気うなぎ (2011年4月3日)

その時に出演してもらったバンド「電気うなぎ」のリーダー・ギターうなぎ君とは、今でも長い親交があり、「珈琲マインド」でも彼の宅録ソロアルバムを取り扱っています。

もう長いこと愛知県に在住している僕は、東日本大震災の直接の被災者ではありませんでしたが、心の中には大きな傷跡が残りました。
「2011年」という年が、一つの大きな区切りになっているのは、僕だけではないはず。
そんな僕にいま何ができるかを、じっくり考えてみました。

政府の人間でもないNPO団体でもない僕らが、現時点でとりうる最善の現実的な援助は「募金」です。
既に赤十字石川県など公的な機関が義援金を募っていて、そちらで手続きをすれば支援活動としては間違いないでしょう。
ただ、CDショップの経営者として、音楽イベントの主催者として、それらの支援を促すことができないか?
そう考えた結果、以下の2つの施策を思いつきました。

① コンピレーションCD「コーヒーもう一杯」チャリティー販売

当店は基本的に、ミュージシャン・バンド・レーベルから音源をお預りする"受諾販売"のショップであり、売れた場合の当店受け取りの販売手数料はできるだけ安く設定して、それぞれの制作元には多く還元しています。
なので、CDが売れても当店の利益は非常に微々たるものではありますが、例外があります。
それは、2021年に販売開始した当店制作のコンピレーションCD「コーヒーもう一杯」2種の売上。

左・コーヒーもう一杯 夕暮歌集
右・コーヒーもう一杯 夜の歌集

このCDについては、売れたらそのまま当店の利益となります。
その利益を、丸々寄付してしまおうと。

厳密に言えば、1枚販売につき2,000円を募金します。
このCDは、イベント等での対面販売では2,000円WEBショップでは消費税を加えた2,200円で販売しています。
ただ、WEBショップではサイトの決済手数料として200円ほど取られてしまいますので、実際の利益は直接販売と同じく2,000円ほどになります。

2年前に販売開始したこのCD2種、恥ずかしながら未だにそれぞれ30枚ほどの在庫が残っています。
このまま在庫として残しておくより、今回の募金を促す役割を果たせれば、CDとしても本望でしょう。

このコンピレーション「コーヒーもう一杯」は、当店が主催する同名イベントに参加してくれたミュージシャンやバンドと共に作り上げた、日常生活に和みのひとときを与えてくれるような作品集です。
具体的な例えをするなら、はっぴいえんど金延幸子など70年代のフォーク・サウンドや、サニーデイ・サービス空気公団たまハンバートハンバートなど、アコースティックな質感を持ったポップスが好きな人には、自信を持っておすすめできる内容となっています。

作品内容の詳細は以下のページから。
視聴もできます。

このCDが、今回の惨事に胸を痛めて募金をする優しい心を持った人達の"和み"となれば、これほど嬉しいことはありません。

② 当店オリジナル・ミニステッカーのチャリティー販売

当店には、WEBショップでご購入の際1会計につき1枚同封している、オリジナル・イラストのミニステッカーがあります。

当店のイベントでも深いつながりがある愛知県のミュージシャン・アジマカズキのペンによる、ファニーなイラストのこのステッカーは、50円でも販売しています。

このミニステッカーの売上も全額寄付しようと思います。
50円であれば、気軽な寄付も可能では無いでしょうか?

以上、2つの施策を2024年3月末まで行おうと思います。
WEBショップや自主イベント「コーヒーもう一杯」での販売以外にも、僕がお客として参加予定のイベントなどでも受け付けます。
「珈琲マインド」のXで、参加イベントの情報を随時投稿しますので、気になる方はぜひお声がけください。


あと、重要なことを一つ。
募金(赤十字の義援金)については、1月・2月・3月の月末(3月31日は日曜なのでその翌日)に、その時点で集計した分を最寄りの郵便局から手続きを行い、その結果をSNSで公表します。

ただ「珈琲マインド」はワンマン経営なので正確な売上が把握できるのは僕だけであり、冷徹な見方をすれば販売数を改ざんして店の利益とすることも可能、ということです。
それについては

「僕を信頼してください」

としか言えません。

第三者の手を介しての募金となると不安になるのは当然なので、やはり上記の正当な機関に直接募金するのが確実です。
ですが、同じ金額を募金するなら、その優しい心に対する当店からの「気持ち」を受け取っていただければ、という考えに偽りはありません。
それでもし、CDを気に入ってコンピレーションに参加したミュージシャンやバンドに興味を持ってくれたのなら、僕としてこれほどの歓びはないでしょう。

もう一つ。
これを行うことによって「偽善だ」「売名行為だ」との蔑みを受ける覚悟はできています。
実際そのとおりかも知れません。
ただ、僕の尊敬する泉谷しげるさんが同様のことを言われた時に

「そうだよ、もちろん売名行為だ。だからお前らも偽善しろ。1日1偽善だ!」

と返したことは、ずっと僕の心に刻まれています。

ずっとカッコいい泉谷さん。

どうか、よろしくお願いします!


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