コーヒーショップに”新たな付加価値を加えるヒント”。ビジネスモデル Case2.アンリミモデル。
差別化モデルの成功事例
他店舗と『差別化を図ること』は、生き残る上で重要なポイントです。
・最新トレンドをいち早くメニューに加える
・外観や内装を洗練させる
・社会的なテーマを主題にする
・定期的にイベントを開催する などなど。
多くの飲食店が多種多様な取り組みを行いシノギを削っている一方で、『時間が経てばみんな同じことをやっていて、結局差別化に至っていない』ケースも多々見られます。
トレンドをいち早くキャッチしても、他社がすぐ追随してしまうパターンが多いのです。タピオカなんていい例ですね。
しかし、差別化に成功して独自のブランドを確立している事例は確かに存在していて、その実態を観察してみると、一定の共通項が見えてきます。
今回は、コーヒーショップに親和性の高い新しいサービスを加えることで成功を収めた『UNLIMITED COFFEE ROASTERS』と『TRUNK COFFEE』を事例に、差別化のポイントを考察します。
国内トップレベルのバリスタトレーニングを展開する『BARISTA TRAINING LAB』
まず、企業の体制ですが、アンリミテッド株式会社が『UNLIMITED COFFEE ROASTERS』『UNLIMITED COFFEE BAR』『BARISTA TRAINING LAB』を運営しています。
◇UNLIMITED COFFEE ROASTERS →スペシャルティコーヒーの焙煎事業
◇UNLIMITED COFFEE BAR →飲食事業・カフェの運営
◇BARISTA TRAINING LAB →バリスタトレーニング・セミナー事業
『BARISTA TRAINING LAB』は、" 日本におけるバリスタの知識・技術・職業性の向上を目的とし、ワールドクラスのバリスタトレーニングを行っている" 場所です。
これは、コーヒーショップにセミナー事業を付加して成功した事例で、凄い点は以下の3つ。
①セミナーがワールドクラスで、国内トップレベル
②所属バリスタが競技会で受賞→サービスに”権威性”をプラス
③セミナー受講者の開業前後の活動を包括的にサポート
他にも、セミナー事業を展開しているコーヒーショップは多いですが、ここまで抜きんでたところはありません。
①▶ セミナーがワールドクラス
BARISTA TRAINING LAB の凄みは、その実績にあります。
まず、世界最大のコーヒー協会であるSCA(スペシャルティコーヒー協会)からSCAプレミアトレーニングキャンパスの認定を受けています。
ここではSCAが実施するCOFFEE SKILLS PROGRAMを受講することができ、世界に通用する資格認定を受けることができるのです。
コーヒー後進国である日本で、ここまで学べるのはすごいこと。
日本は世界的に見てもバリスタの社会的地位は低く、職として確立できていません。なぜなら、アルバイトでもコーヒーを淹れればバリスタと名乗れるくらいです。調理師免許のように、職業として担保できるものがないのです。
一方、コーヒー先進国のオーストラリア・メルボルンでは、バリスタを生業として、まっとうな給与を得ることができます。社会全体が、”職業として”認知しているのです。
COFFEE SKILLS PROGRAMの認定を受ければ、世界中どこに行ってもバリスタとして働けます。履歴書に書けるし、それが認められるわけです。
ちなみに、オーナーの方は、世界大会でのジャッジの資格を保有されています。抜かりなく、信頼感抜群です。
将来独立開業を検討する方は、ぜひここで学んでほしい。
②▶ 所属バリスタが各種競技会で受賞・入賞
同社の飲食事業を展開するUNLIMITED COFFEE BARに所属するバリスタの多くは、世界・国内競技会での受賞入賞実績を持っています。
なんと、総入賞数は2013~2020の7年間で19回。詳しくはコチラ
日本で最も大きなコーヒー協会のひとつである日本スペシャルティコーヒー協会が主催する競技会とその上位機関であるSCA(スペシャルティコーヒー協会)の世界大会で、華々しい成績を挙げています。
これらの実績を作ったバリスタは、もちろんBARISTA TRAINING LABの出身者であり、このサービスに大きな付加価値をもたらしています。
③▶ セミナー受講者の開業をトータルサポート
セミナー受講者へのサービスも、めちゃくちゃ手厚いです。そもそも、セミナーの質が抜群に高い上に、開業支援も行っています。
これは、両者にとって大きなメリットがあります。
まず、セミナー受講者側としては、世界水準の知識と技術を身に着けられること。さらに、アンリミテッド株式会社はエスプレッソマシーン等機材の卸しも行っているため、最適な形で開業に必要な機材物品を揃えることができます。
そして、アンリミテッド側には『セミナー受講者からバリスタを雇用できること』と、セミナー受講者の多くが独立後もUNLIMITED COFFEE ROASTERSの珈琲豆を使用するため『コーヒー焙煎豆の卸し先を確保できる』というメリットがあります。
企業にとっての雇用リスクと販売チャネル確保を同時に解消できるのです。
すげーwin-winです。
コーヒーショップに付加価値をプラスする方法
コーヒーショップに飲食サービスだけでなく、新しい付加価値をプラスする方法を考察します。
これまで紹介したUNLIMITED COFFEE の BARISTA TRAINING LABの注目ポイントは次の2つです。
① 優れた実績と広い認知度を持つ団体のサービスを活用していること
② 業界全体に認知・影響のある競技会で実績を残し、権威性を得ている
まず、BARISTA TRAINING LABで受講できるCOFFEE SKILLS PROGRAMは、世界で最も大きく、スペシャルティコーヒー業界へ強い影響力を持つSCA(スペシャルティコーヒー協会)が認定する教育プログラムです。
そして、UNLIMITED COFFEE BARで活躍するバリスタの多くが国内と世界の競技会で入賞・受賞実績を挙げています。これにより、BARISTA TRAINING LABの権威性を高めています。
これと同じようなフレームワークで、コーヒーショップに新しいサービスを付加しているのが『TRUNK COFFEE』です。
TRUNK COFFEEの戦略
TRUNK COFFEEは名古屋を代表するコーヒーショップです。ここが展開するORIGAMIシリーズの販売フレームは、UNLIMITED COFFEE と非常によく似ています。
▶ ORIGAMIとは?
ORIGAMIとは、コーヒードリッパーやカップなどの陶器製コーヒーアイテムを展開する商品シリーズです。製造は光洋陶器、販売はケーアイが行い、TRUNK COFFEEが企画に大きく関わっています。
ORIGAMIシリーズはすべて美濃焼。色合いもカラフルで美しく、シンプル。実用性とデザイン性を兼ね揃えた、バリスタのニーズを満たすコーヒーアイテムです。
とりわけ、ORIGAMIドリッパーの人気は高い。それに、すごく良い。
今回はドリッパーの解説は割愛しますが、めちゃめちゃいいドリッパーです。買ってまったく損はないですよ。どちらかというと浅煎り向けのドリッパーです。
▶ アンリミモデルとの共通点
BARISTA TRAINING LABを展開するUNLIMITED COFFEE のビジネスモデルとの類似点は、ズバリ、
① 優れた実績と広い認知度を持つ団体のサービスを活用していること
② 業界全体に認知・影響のある競技会で実績を残し、権威性を得ている
です。
まず、美濃焼という日本を代表する陶磁器を採用しています。さらに、2019年に開催されたWorld Brewers Cup で中国代表のJia Ning Du 氏がORIGAMIドリッパーを使用して世界一に輝いています。
この2点は、アンリミモデルのフレームワークと共通している。
こうして、TRUNK COFFEEは、コーヒーショップにコーヒーアイテムの企画販売と言う新しいサービスを確立しています。
もちろん、他にも同じ取り組みをしている企業はありますが、すでに追随できないポジションを勝ち取っています。
この2社の共通項は、ビジネスモデルの構築に非常に参考になるモデルケースです。
まとめ
コーヒーショップに新しい付加価値を与えるサービスを生み出すには、次の2つのポイントがあります。
① 優れた実績と広い認知度を持つ団体のサービスを活用していること
→今回の事例では、SCAやSCAJなどの一般社団法人や非営利団体。美濃焼などの社会的な認知度の高いコンテンツが該当します。
② 業界全体に認知・影響のある競技会で実績を残し、権威性を得ている
→権威性の付与により、強い納得感のもとで認知度が高まります。
BARISTA TRAINING LABとTRUNK COFFEEは、コーヒーショップに新しいサービスを付与したい時、付加価値を生み出したい時、参考にしたいロールモデルです。
是非一度、お店にも行ってみてください。めちゃめちゃ良いコーヒーショップですよ。