生豆の流通を作り出すダイレクトトレード。コーヒーショップ『ビジネスモデル8選』Case1.堀口モデル
コーヒーショップのジレンマ
カフェ業界は居酒屋と同様に完全なるレッドオーシャンで、入り込む隙間は非常に狭いです。
とりわけ、コーヒーをメインに扱いたい人にとっては、そのハードルはさらに高くなります。その理由は、
① コーヒーは商品単価が低い → 一杯500円が相場
② 顧客の時間当たりの収益性が低い → おかわりが出づらい
③ 回転率が上がりにくい → コーヒー一杯で長居する
④ コーヒーなんてみんな同じと思われている → スタバと何が違うの?
例えばラーメン屋なら、ラーメン単品が700円だとしても、トッピングや親和性の高いサイドメニューで、客単価1000円以上を達成できます。
一方、コーヒーショップの場合、ケーキやお菓子などのスイーツに注力すると、『あそこはケーキが美味しいお店』なんて評判が出てしまい、いつしか何屋なのか、わからなくなってしまう。これは、良くあるジレンマの話。
今回の記事では、コーヒーショップとしてのアイデンティティを失うことなく事業を継続させている成功事例を取り上げていきます。
王道のロールモデルから最新のビジネスモデルまで、全部で8種類紹介します。
これから開業予定の方やリブランディングを検討している方に役立てばうれしいです。
今後、解説していくビジネスモデルは以下の通り。
Case1. 堀口モデル -生豆の物流を生み出す-
Case2. アンリミモデル -世界水準のバリスタ教育-
Case3. GLITCHモデル -圧倒的ブランディング戦略-
Case4. 茶亭羽當モデル -王道純喫茶モデル-
Case5. MAMEYAモデル -輸入系セレクトショップの金字塔-
Case6. The Localモデル -他者が喜ぶイベント戦略-
Case7. ALCBモデル -地の利を生かす-
Case8. バリスタハッスルモデル -コンテンツビジネスとしての活路-
今回は、Case1. 堀口モデルを紹介します。
Case1. 堀口モデル
スペシャルティコーヒーのリーディングカンパニーとして世界的に有名な『堀口珈琲』のビジネスモデルは、マジでスゴイ。何がスゴイかと言うと、
『生豆の物流を生み出した』ところです。
▶生豆の物流を生み出した、とは?
堀口珈琲は、世界に先んじてコーヒーのダイレクトトレードを始めていた企業です。それも、スペシャルティコーヒーという言葉が根付いていない時代からです。まさしく、業界の先駆者。
生豆のバイヤーが産地へ赴き、直接買い付けを行い、国内で珈琲豆として販売。商社を挟んでいないため、利幅はグッと上がります。
これだけではなく、堀口珈琲は生豆の買い付けグループLCFを主宰しています。グループには全国各地のビーンズショップが参加しており、参加者は常に高品質な生豆を入手できるメリットがあります。
また、これによって堀口珈琲は一度に大量の生豆を仕入れることが可能になります。他社が見つけていないようなハイエンド商品を安く仕入れることが可能になり、さらに国内のグループ参加店に生豆を降ろすことも可能。
国内に生豆の流通網を築いているのです。
しかも、コーヒー生豆の生産者は安定的な収益を確保することが可能で、堀口珈琲自身も高品質な商品を継続的に仕入れることができます。LCF参加店は、信頼のおける企業から最新情報とともに生豆を仕入れることができるのです。
まさに、win-win。流通を作ることは、収益の流れを生み出すことにも繋がります。
いまでは、生豆のダイレクトトレードをよく聞くようになりました。多くのロースターさんが、自社買い付けを行っています。
これは、仕入れ値を押さえつつも、唯一無二の高品質な商品を仕入れる手法として、最適な解と言えます。
ここで問題になるのが『買い付け時の資本をどうするか?』と言うこと。堀口珈琲の場合は、すでに潤沢な資金があるでしょうし、LCF加盟店からの共同出資を募ることも可能です。
一方、私たちのようなマイクロロースターはどうやってここにたどり着くべきか。。。
その一つのアンサーが『LIGHT UP COFFEE』が実施した、『コーヒー農園のオーナー制度』です。
SNS等で出資者を募り、それを元手に現地生産者(今年はバリ島の農園)への支援や生産援助。成果物は自社での店舗販売とオーナー制度参加者へ還元されます。
私たち一般消費者でも、年額数万円でオーナー制度に参加することができます。
サービス内容は以下の通り。
・4本の木のオーナー権:お名前のタグ付け
・オンラインイベント:年2-4回を予定
・収穫優先参加権:7-8月(渡航状況を見つつ実施)
・毎月の農園レポート:写真と情報をお届け
・隔月のコーヒー豆:最新の収穫分からお届け
このサービスは、コーヒー好きなら心が震える内容です。
すでに今年度の募集は終わっているようですが、ウェブページは残っているので、是非ご一読いただきたいです。
このストーリーは心に刺さる。。。すごく良い。。。
グッとくるストーリーとともに唯一無二の商品を提供できるこの仕組みは、ダイレクトトレードの醍醐味であり、最高のロールモデルです。
最近ではCAMPFIREをはじめとするクラウドファンディングサービスもたくさんあります。これを利用するのも有りです。
まとめ
堀口珈琲のように、物流を生み出している企業は非常に強い。なぜなら、
① 商社を仲介しないため、仕入れ値を抑えることができる。
→『安く仕入れて、高く売る』は商売の原理原則。
② 生産者との直接取引から、他者がマネできない商品を生み出せる。
③ 国内への盤石な生豆流通網により、産地を支え、ロースターも潤せる。
一見どれもシンプルで、当たり前のことなのだけれど、ここまで徹底してやり抜けるコーヒーショップは数えるほどしかありません。
ぜひ、参考にしていてください。
次回は、世界水準のバリスタ教育を提供するUNLIMITED COFFEE ROASTERS を取り上げ、コーヒーとセミナー事業の親和性について解説します。