【感想・ライブレポート】凛として時雨が起こす奇跡とライブハウスのリスタート「PerfakePerfectツアー」@KT Zepp Yokohama 2021.1.19
今回のライブを一言で表すなら「ロックバンドの下剋上」。
今回は最新シングル「Perfake Perfect」を提げたツアーの初日。凛として時雨にとっては1年半ぶりのツアー、個人的にはちょうど1年ぶりのライブである。
この日のために有観客のライブは2020年内は行かない、ライブ映像や配信ライブは見ないなどして、3ヶ月ほどライブ断食をしていた。ニュートラルな状態で、いっそのこと初めてライブに行った時ぐらいの生の音楽を受け止めたかったからだ。
ライブハウスの感染対策
「KT Zepp Yokohama」はつ昨年オープンしたばかりのZepp系列のライブハウスで、横浜駅から約12分と徒歩圏内でアクセス抜群だ。
入場時は予め足元に貼られたテープを目印に整列し、検温、アルコール消毒など、スタッフの案内通り進む。
こんな感じ。流れはかなりスムーズで待機時間のストレスは皆無。
アルコール消毒と検温を終え事前告知通り、入場時に凛として時雨のロゴ入りのブラックの不織布オリジナルマスクを配布。実際は自前のマスクをつけている人が多かったため、記念に持ち帰る人が多かった印象。
実物。使うのは勿体無いので私も記念品行き。
緊急事態宣言中のためKT ZeppYokohama側からドリンクの提供はソフトドリンク含めて中止、そのためドリンク代の徴収は無し。
席は指定席で左右前後1席間隔を開けるスタンス。個人的には左右ぶつかる心配がないこと、目の前に背の高い男性が来てもメンバーがしっかり見える可能性があるため、かなり快適だった。
【緊急事態宣言中のライブ(KT ZeppYokohamaの場合)】
・緊急事態宣言中のためドリンク提供停止、よってドリンク代600円の徴収は無し
・入場時にアーティスト側からマスク配布
・1階、2階共に全席指定席。左右前方空席状態で、収容人数は座席有りキャパのの50%なので実際に用意した座席はおおよそ600人ほど
・ライブ中は立っても座っててもOK、だが8割方座っていた
・歓声NGのためメンバー名を叫ぶ、MCに反応するは絶対NG。拍手はOK。
ライブレポート(ネタバレ有)
19:30、定刻通りライブはスタート。金属音のようなSEが流れると、最新グッズのLTSシャツを着たピエール中野、同じくLTSシャツをオーバー目に着た345、TKは七分袖にスキニーとラフなスタイルで登場。
1曲目から転がるような曲展開が魅力の「鮮やかな殺人」にはじまり「テレキャスターの真実」、続けて「トルネードG」と昨年リマスタリングバージョンを発売したアルバム「#4 」より古株の曲でトップギアに。
コロナ禍でリセットされた今、初心に戻り“リスタート“の意味を込めても、初期曲をトップに持ってきたのかもしれない。
この曲らは#4の収録曲を中心に行ったスタジオライブの劇場公開の時に聴いているので、曲自体はお久しぶり感が無いのだが、1年ぶりの現場のライブで感覚が麻痺しており、「本物の凛として時雨だ」と強い感銘を受けるよりは「私今、凛として時雨のライブを見ているらしい」と、彼ら彼女らが目の前で演奏しているのに、現実味がなくどこか客観的だった。
TK「お久しぶりです、凛として時雨です。慣れない環境かもしれませんが、最後まで楽しんでください」
そんな夢見心地はすぐに壊れる。
続けて「Enigmatic Feeling」。性癖に突き刺さるコールドでソリッドな音、歪む近未来型のライブハウス空間、アンバランスを更なるアンバランスでバランスを取る3人、ここで私の死んでいた感性が蘇った。ああ、これだ、これだ、と。私が求めていたのは画面越しじゃ無い、生のロックバンドの音だと、身に染みて痛感した。心の栄養不足が一気に解消されたような気がした。
ライブの持つ魔法を全身で強く感じた途端、「SOSOS」でTKの“鼓膜に突き刺さる“のシャウトで完全覚醒。体の内側に無理やり封じ込んでいたものが、蓋も扉も破壊されて解放されたようだった。心のサビの塊がごっそり取れた途端、さっぱりとした体内に目や耳だけでなく、全身のありとあらゆる細胞に轟音ががつんと通り抜けで染み込んでくる。
続けてアルバム「i‘mperfect」より「sitai miss me」を投下。記録上では日本武道館単独ライブ以来、約8年ぶりの演奏となる。
“Perfect”並びを狙ったのか、続けてメインである新曲「Perfake Perfect」へ、難解な曲構成ながらもサビの4つ打ちで昇天、快感とカタルシスを一気に得る。
名曲「abnormalize」の鋭さとスピード感は健在だった。ライブ断食効果もあってか、1番最初に「abnoralize」を聴いた時と同じくらいの感電したかのようなドカンとした衝撃を受けた。
「I was music」でTKが中指を立てると、一気に空気が凍りつき“いいよ おかしくなって”と歌えば、オーディエンスの内に秘めた熱気と、凛として時雨の無機質な氷点下は制限された中でも強い化学反応を起こし、混沌空間へと生まれ変わった。
「DISCO FLIGHT」では345がジャンプ、ピエール中野も負けじと煽る。ライブ定番のこの曲、3人とも演奏中お得意な表情でフロアのボルテージを音で上げに上げる。345は心に火がついたフロアを見渡し、立ってる人、座ってる人、座りながら手を挙げる人、どんな楽しみ方も受け止めているように見えた。
ここで換気が必須とのことで、TKがドラムスピエール中野にバトンタッチし、短めのMCとドラムソロで場を繋ぐ。
お馴染みの「どんぐりころころ」のドラムソロでは歓声禁止のため、いつももなら笑いや歓声が上がるものの、こちらは拍手と見ることしか出来ないので、白けたようになっていたのが半分気の毒、半分普段は感じられない空気で面白かった。
「laser beamer」は照明を駆使してレーザー風の演出。ギターのピュンピュン音を生音で披露し会場を轟かせ、「DIE meets HARD」ではTKがシャウトをかまし、サビでは345のボーカルが魅力的に映える。どちらも近年発表された楽曲だが、ラスボスのようなどっしりと構えた時雨ポップスに撃たれる。
切り裂くようにテレキャスターが絶叫したのは定番曲「Telecastic fake show」で今ライブの絶頂を作り上げ、勢い止まらぬまま「TK in the 夕景」で一切妥協を許さない緊迫感とスピード感で圧倒された。
TK「大変な中来てくださってありがとうございます。無理せず終えることが一番で、音楽はここから繋がっていくので、安全に無事に終えることが大事だと思ってます。安全に帰ってください。今日は皆さんの思い出になればいいなと思います。ではメンバー紹介を...こっち?(345指す)こっち?(ピエール指す)ベースボーカルの345です」
345「こんばんは345です、グッズを作りました。“としてtoとしてボディバッグ“...攻めたデザインです。ンンンッ(咳払い)」
TK「大丈夫?」
345「大丈夫っ!(ポーチからタオルを取り出す)あと、かっこいいタオルも作りました..」
TK「みんなの声を中野くんが代弁してくれます(無茶振り)」
ピエール「345ー!買ったよー!」
345「あとTシャツ(ピエール)と、七分袖(TK)と、Tシャツ(345)を着ています。暗闇で光るやつ...なんだっけ?夜道も、安全。あ、これ(キーホルダー)も光ります。あ、Tシャツ着てる人、見えてます!」
TK「2人はお揃いなんだね」
ピ「TKも着ればいいじゃん、ストーリーに上げたのをスクショしてTwitterにあげる」
3「お揃いにしても絶対投稿しないよね(笑)」
ピ「このLTSの意味、凛として時雨じゃ無いんだって。知ってた?」
3「うん、私もさっき知った(笑)」
ピ・3「なんだっけ、Love、Tornado...?」
TK「Sadistic。」
345「なんでそんなスラッと出てくるの?」
(会場笑)
345「こんなにたくさんの方が来てくださってありがとうございます、また会える日まで、またお会いしましょう、凛として時雨でした、ありがとうございました」
普段345のMCをサポートしないTKがMCに参戦するというレアな光景。客が喋れない分、たくさん喋ってくれたらしい。
ラストはメンバーの仲睦まじいほっこりしたMCから空気が一変、「傍観」でノイズを一切許さない緊迫感が会場を張り詰める。
赤い照明に3人の黒いシルエットは、今のアーティスト写真そのものだった。アウトロで345はベースを置いて去り、ピエールは345に続いてステージを後に、TKが真ん中で弾き狂いギターをステージに置き去った。
ライブハウスに鳴り響く轟音のギターの残響が、そのまま耳鳴りと化した。
休息する間のない旋回の激しいロックナンバーを連発し、知らぬ間に体内に蓄積したストレスを彼らが代弁し、音楽で爆発させたようなあまりにもサディスティックなセットリストで、終始”音楽は強い”と証明されたライブだった。
世間的にも様々な面から緊迫を迫られる中でのライブは、人一倍強い彼ら彼女らの音楽に対する責任感と、ブランクを感じさせないベテランバンドの風格を見せつけた圧巻のパフォーマンスで、ツアー初日は終演かつ成功を収めた。
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終演後は二階席からスタッフの案内で順次規制退場。スタッフの「ご来場ありがとうございました」の言葉に自然と送られた拍手が暖かかった。凛として時雨のファン、いや音楽を愛する人は暖かいと思った。ライブハウスの出口でもしっかりアルコール消毒。
退場もスムーズで、不満は一切なかった。
凛として時雨が切り拓くコロナ禍のライブ
凛として時雨は絶対に真似することが出来ない唯一無二の存在なのに、いつだってロックバンドの見本だった。
楽器のスキルに世界観の独創性、そしていつの間にか15年というキャリアを持っていて、追いかけても見上げても、その先には常に凛として時雨がいた。
二度目の緊急事態宣言の地域をほとんど含めた中で、ツアー決行を決断、その決断は音楽人として20年のもキャリアを持つベテランバンドの“音楽を届ける”という強い気持ちとプライド、同時にプロのエンターティナーとして”息抜きする場所を提供する”という強い意志を感じたライブだった。
今のライブハウスは全く自由ではない。指定席でスタンディングのライブのように好きな場所で見れない、モッシュダイブはもちろん禁止、お酒を飲みながらライブも見れない。
だけどそんな制限の中でも今回の時雨のライブはライブに行く、行かない、立って見る、座って見る、ライブに行った人/行きたかった人を含む”全ての選択肢を全肯定する自由なライブ”にさせ、ライブが思うように出来ず窮地に立たされた音楽業界の現状を打破しようと、音とパフォーマンスで”下克上”を起こしているようにも見えた。
TKが「安全に帰ってください」と諭した時、私は“凛として時雨を守りたい“と思った。
ファンがバンドを支えるのではなく「ファンがバンドの未来を守る」と、コロナ禍の影響でいつの間にか好きなアーティストの応援の仕方と気持ちは変わっていて、応援“する“側にも絶対的な責任感が生まれていた。
絶対にライブで感染者を出さない、そのためにライブだけでなく日常生活でも常に感染予防の最善を尽くす、これからツアー行く人たちのために、これからのライブのために。
ツアーという冒険は始まったばかり。気を抜かず、でも気張りすぎず、安全に気をつけて行ってらっしゃい!
ツアーを成功させるという奇跡と、ライブが出来る奇跡を、続けて起こそう。
セットリスト
1. 鮮やかな殺人
2. テレキャスターの真実
3. トルネードG
4. Enigmatic Feeling
5. SOSOS
6. sitai miss me
7. Perfake Perfect
8. abnormalize
9. I was music
10. DISCO FLIGHT
11. laser beamer
12. DIE meets HARD
13. Telecastic fake show
14. TK in the 夕景
15. 傍観
ラババン外し忘れてた。でも外したくない感じ、ライブだな。
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