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【sonny boy】8話と10話のサブタイトルと戦争についての考察

主人公・長良役の市川蒼さんが新人声優賞や文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門にて優秀賞を受賞するなど受賞ラッシュで再注目を浴びてる「sonny boy」。一番好きなアニメなので嬉しい限り!

今回は8話と10話を中心にサブタイトルの元となった作品との関連性と、共通項となる「戦争」について考察。

ヘッダーは久しぶりにイラストを描いてみた。特訓しないと。

説明

・漂流されたのは中学3年生のクラスメイト36人

・異世界では生徒それぞれ超能力がランダムに1つ与えられている

・異世界を作っているのは長良の能力

・この世界では瑞穂の「静止」の能力で時は止まっており老いはしない。
だが時空は歪んでおり、久しぶりに顔を合わせると時間がズレていたり、平気で1000年以上の月日が経っていたりする

「死」の概念がなく、命を落とすと物などに変わる能力遺物となる

・やまびこが犬に、ラジダニが森になったように自分の意思で人間以外に姿を変えることも可能

・この世界全体が概念などが具現化されたり擬人化された世界

・漂流は校長(ヴォイス)によって起こっており、校長はこの異世界では神のような存在

・異世界は元の世界のコピー。元の生徒らは普通の日常生活を送っている

8話「笑い犬」→サリンジャー「笑い男」

8話「笑い犬」は先輩漂流者の犬であるやまびこから、かつて忠誠を誓ったリーダー的存在の女性「こだま」と疫病をもたらした「戦争」についての昔話を聞く回。

この回はサリンジャー の「笑い男」のストーリーに忠実だと思う。

【笑い男 簡単なあらすじ 】

少年野球チームに所属する少年は、練習終わりの移動バスでチーフからケシの花びらをお面にする「笑い男」の話を楽しみにしていた。

ある日突然チーフのガールフレンドが練習に登場、しばらくゲームに参加していたがまた突然ガールフレンドがグラウンドに来なくなった。

2ヶ月かけて話された「笑い男」の話は、山賊と暮らしていた笑い男は居場所を移し狼や小人たちと暮らし始めた。
ある日笑い男は仲間の狼の代わりにフランスの探偵に人質として捕らえられた。瀕死寸前だったところ小人から行方をくらましていた仲間の狼のことを尋ねると、その探偵に殺されていたことが判明。憤慨した笑い男はケシのお面を外し、そのまま息絶えた。

少年たちは察した。

忠実なのはストーリーそのものではなく立場

・チーフ →やまびこ(語り手)

・フランスの探偵 →戦争(おそらくこの探偵は狼以外の動物も殺めているはず)

・チーフの彼女 →こだま(彼女がいなくなる)

やまびこだけがこの世界で生き残った理由は長良とほぼ同じ「世界を創る能力(心の内側を具現化する能力)」を持っており、自分の殻に籠もっていたのでやまびこだけが疫病にかからなかったそうだ。

「戦争」がなぜやまびこにつっかかったのか、単に「戦争」もこだまのことが好きだったからでしょう。

10話「夏と修羅」→宮沢賢治「春と修羅」

「戦争」について書くにあたり必要事項なので以前書いた内容の再掲+α。

10話「夏と修羅」では希、朝風、骨折、あき先生の4人で「戦争」を始末する旅に出る。同時に朝風には神から「死という概念を創る」ミッションが課せられた。

この回は「春と修羅」に限らず、宮沢賢治の小説を多く採用していると思う。

【宮沢賢治感のあるシーンまとめ】

・サブタイトルが「夏と修羅」、希が旅路の休憩中ハガキにスケッチしている
「春と修羅」(心の内側や概念を具現化する「心象スケッチ」)

・待ち合わせの駅で人の心を読む能力を持つ骨折の語りから始まる
 →「銀河鉄道」

・瑞穂の猫と2匹の蟹が戯れるシーン
 →「やまなし」

・希がコンパスになる(死亡)
 →「よだかの星」(鷹が星になる=能力遺物)

・2人の若い紳士が山奥の人食いレストランに迷い込んでしまい、山奥で出会った犬に助けられたものの2人の恐怖で歪んだ顔は治ることはなかった
「注文の多い料理店」(時間の静止)

宮沢賢治が生まれたのは明治29年。時代からして彼自身は一揆や戦争を経験したかもしれないが、彼の物語には一切戦争が出てこない。

宮沢賢治は戦争を続ける日本からの現実逃避でファンタジーを書いていたのかもしれないと思うと、この回は作品そのものと作者が生きた時代背景を共存させた珍しいストーリーだと思う。

2人の戦争

受取手によってかなり意見が分かれるのだけど、私は2人の戦争は同一ではなく「別の戦争」だと考えてます。

・やまびこが対峙した戦争

5000年前やまびこが対峙した「戦争」は、ボロボロのスナフキンのようなファッションと中世ヨーロッパ発祥大量の勲章のバッジをつけているので「ヨーロッパあたりの海外の戦争」そのなかで「ドイツの戦争」だと推測。

「ドイツの戦争」だと思う理由として、やまびこが人間時代に行きついた「骸骨だらけの道」がヒント。

そこでベルリンにあるユダヤ博物館をご存知ですか?

画像は下記サイトよりお借りしました

空間全体を芸術にするアート・インスタレーションを駆使した体験型歴史博物館。館内全体が戦争やユダヤ人虐殺の悲惨さを全身で痛感させる設計となっており、またジグザクで複雑な作りから名建築としても有名。

このユダヤ博物館の「記憶のヴォイド」というブースには約10000枚の人の顔をした鉄板を敷き詰められた道があり、ホロコーストの犠牲者を連想させる異質な空間となっている。

この人の顔が敷き詰められた道、やまびこが歩いた骸骨だらけの道と重なりませんか?

骸骨だらけの道は骨を踏んで歩かざるを得ない状況ではあったけど、ここも同じく人の顔を踏まないと次のブースにいけない動線になっているんです。

このことからやまびこが対峙した戦争は「ドイツの戦争」だと推測。あと希がベルリンからの帰国子女であることも一つの理由。

改めてユダヤ人の虐殺についてしっかり調べたけど、”ユダヤ人”というだけで600万人近くの人が殺されるなんて非人道的すぎて胸が苦しくなる。

・朝風たちが退治した戦争

やまびこが対峙した「戦争」は悪そのものだが、朝風たちが見つけた「戦争」は威勢がないどころか空っぽ。

能力遺物となった拳銃のモデルは「M1849」という型が一番近く、また顔立ちがアジア系統なので幕末〜現代の日本の戦争と推測。

そもそも軍服ではなくスーツ(制服?)だし、敗戦後の絶望的な雰囲気すらないので、実際の兵士などでなく日本の現代社会で戦う「社畜」と言う名の兵士だとも思う。

顔立ちがアジア系統と言ってこの人が日本人だと思う理由は、日本人は勤勉で真面目な性格から搾取されやすいから。

・勝者と敗者

同じ戦争なのに見た目が全然違うのはやまびこが対峙した「戦争」は勝者で、朝風が退治した「戦争」は敗者だからだと思う。

最初に「同一ではなく別の戦争」と書いたけど、正確には「同じ戦争だが種類が違う」と言う意味で「別の戦争」だと考えてる。

「戦争は勝っても負けても失うものしかないからダメ!」ではなく「勝利」と「敗北」に注目したから2回も「戦争」をテーマにしたストーリーを書いたと思うんですよね。

こちらの動画では「戦争は同一人物」との見解。確かに5000年前の戦争は退治できていないし、時が経ちすぎてしまったという点でも同一人物である可能性が高い。そうなるとこの世界で生きている時に姿を変える(変わる)のと、死んで能力遺物になるのは別なのかしら。疑問が次々湧いてくる…

あき先生の目的

突如生徒たちの前に現れた巨乳教師。やまびこ曰く「同じ学校の生徒しか漂流しない」のでおそらく卒業生。

あき先生の目的はおそらく「戦争」を始末するため、理由は神(ヴォイス)に認められるためだと思う。

あき先生はヴォイスの愛人ポジで、どうせヴォイスに「『戦争』を始末したらこの世界まるごとあげる」とか言われてたんじゃないですかね?

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元の世界に帰る途中の長良と瑞穂に「あき先生もどっかに行った」と報告してたけど、あき先生は「戦争」を始末して用済みになったから朝風を捨てたのだと思う。

そう考えると希が言ってた「おっぱいの大きい人は信用しちゃいけない」は当たってるよね。

8/16に漂流した理由

そもそも「夏休みにクラス全員学校に集まっていたこと」が私としては意味不明なんだけど、夏季講習とか強制登校日とかの名目で漂流を知る校長や明星が集めたんでしょうね。

・終戦記念日の次の日

彼らが漂流した8/16は送り火などご先祖様をお見送りする日だが、ピンポイントの日付としてはパッとしない。

となると「終戦記念日(8/15)の次の日であることに意味があるのでは?」と思う。

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漂流の目的は大きく2つあると思っている。

  1. 異世界では終わっていない「戦争」を終わらせるために漂流を定期的に起こしている

  2. 与えられた能力に溺れる優越感かオリジナルになれない劣等感が勝るかを前提に、生徒の人間力そのものを試している

8/16に漂流した理由として前者が有力だと思う。

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ちなみに9話の「この鮭茶漬け、鮭忘れてるにゃ」は、双子のソウとセイジが髪の毛1本の多さで不”毛”な争いを何千年も続けており、喧嘩に巻き込まれて困惑している人たちを長良たちが手助けする話。

8・9・10話の3話連続で大きなテーマに「争い」があるんだよね。
この3話以外にもなにかと喧嘩してるから「争い」をしてる場面は多い。そりゃ中学生が突然異世界に飛ばされたらぶつかるのは当たり前の話だけどね。

でもみんな喧嘩したあときちんと反省したり謝ってるので偉いと思う。

・「カゲロウデイズ」との共通点


考察とはあまり関係ないけど8/15といえばボカロ全盛期世代としては「カゲロウデイズ」だよね。

「カゲロウデイズ」はトラックに轢かれたり鉄柱が貫通したり、悲惨な事故がループする自然の敵Pの殿堂入りボカロ曲。

銀杏BOYZやtoeなど参加アーティストからしてボカロは関係なさそうだけど、曲に関しては共通点がいくつかある。

  1. 「カゲロウデイズ」の少年少女には8/16が永遠に来ない

  2. どちらの少年少女も8/15(8/14)までは普通に過ごしていた

  3. どちらの少年少女も死ねない

日本人にとって8/15はインパクトが強いので偶然でしょうけど、興味深いリンクだと思う。

まとめ

①やまびこが対峙した5000年前の「戦争」

・こだまに自慢していたつけていた勲章のバッジは中世ヨーロッパ発祥
・ベルリンのユダヤ博物館にやまびこが昔歩いた骸骨だらけの道と似た展示がある
・希がベルリンからの転校生

このことからヨーロッパ圏の海外の戦争、なかでも第二次世界大戦(1941〜45)年あたりのドイツだと推測

②朝風たちが発見した「戦争」

・日本人系統の顔立ち
・スーツ姿(制服)で凄まじい虚無感
・日本で小型拳銃が主流となったのは幕末辺りから

このことから幕末〜現代の日本の戦争と推測。拳銃で幕末〜昭和までの戦争を、スーツ姿で現代社会で働く社畜を現していると思う。

③あき先生の目的

おそらくヴォイスから「戦争を始末せよ」と言う指令があり、ミッションをこなすため軍隊のように生徒を指導したり、ソウセイジや朝風のような強力な能力者をあの手この手で探していた。

④8/16に漂流した理由

終戦記念日(8/15)の次の日だから。終戦したのは現実世界での話、異世界では「終わってない(始末できていない)戦争があり、その戦争を始末するために定期的に漂流を起こしている」と考えられる。

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現在進行形で起こっている戦争に触れるのはナンセンスかもしれないが、戦争を題材にした作品が絶え間なく作られているのは「戦争による悲劇を二度と起こさないため」だと思ってる。

シュールな「sonny boy」の世界には、そんなメッセージ性も含まれてると思う。



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