あの頃の私へ、ライブハウスでエルレに会えたよ【ELLEGARDEN[The End of Yesterday Tour 2023]6.16 at Zepp Divercity 】
ELLEGARDENは復活ライブであったZOZOマリンスタジアム以来5年ぶり、この時はONE OK ROCKとの2マンだったが、ワンマンライブは初めてである。
そしてずっと夢に見ていたライブハウスでのエルレのライブだ。
場所はZepp Divercity、整理番号は200番台後半だったのだが、想定外なことに最前列は埋まっていたものの2列目がガラ空きの状態。「こんなチャンスはないし戦場に埋もれてこよう!」と覚悟の2列目をゲット。
前説
ライブが始まる前に、細美さんだけステージに登場。
いきなり下ネタ全開のMCだが、ライブ前にこうして本人の口から忠告してくれるバンドはいただろうか。
ライブ
細美さんの前説が終わると数秒もしないで再登場、1曲目はアルバムから「Breathing」。
16年振りに出したことだしアルバム曲が続くか…?と思いきや、いきなり名古曲「Space Sonic」「Supernova」で既にフロアはしっちゃかめっちゃか。
「いつかライブハウスでELLEGARDENを見たい」と言う夢が叶っている割には、あまりにも当たり前に受け入れていた。
”自分がライブハウスに通っているから”、そう主観的ではなく、その感覚はきっと”ライブハウスが彼らの居場所”であること大きいように思う。
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ライブで聴いてすっかり好きになってしまったのが「チーズケーキ・ファクトリー」。
もともとアルバムの曲でも一番のお気に入りの曲だが、しっとりとなめらかな多幸感と、自然と笑顔になれるソリッドさから滲み出る甘さに虜になってしまった。
「2人で食べたチーズケーキが永遠の輝きとなる思い出話」と「日常の小さな幸せの共有」、ライブは非日常でありながら”日常の一部”であるとたまに思う。
「音楽で食べる者」と「音楽が無ければ生きていけない者」がその”日常”を共有し、”ライブ”はその泡沫の日常を永遠に輝かせる。
「風の日」「Fire cracker」の流れから新譜より「ダークファンタジー」「Bonnie and Clyde」を演奏。
「風の日」では「ピエロみたいに笑えるわけじゃないから…そうだろ?」と問いかけたり、あまりのシンガロングの強さに細美さんがマイクから離れてステージの前に出る場面もあった。
次から次へとダイバーが頭上を転がり抜けるなか、ふと顔を上げると細美さんが楽しくてでたまらないと言わんばかりの穏やかな笑顔で身振り手振り歌っていた。
なんとなく細美さんにはどこか気難しいイメージを持っていたのだが、あの表情は心の底から本当に楽しいんだろうなと思った。
「Salamander」「Firestarter Song」「The Autumn Song」「Missing」と新旧織り交ぜて続ける。
制限なんてなんのその、既にライブハウスはモッシュもダイブもシンガロングも主催側で容認されれば全てOKとなった今、エルレのシンガロングの骨太さは凄まじかった。
不思議とライブで他の人が歌っている嫌悪感が全くないのだ。
何よりマイクがある以前に、細美さんの歌声が2000人を超えた客の歌声に全く負けていないのだ。
エルレについていくわけではなく、気が付いたら全力で歌っていた、全員がそんな感じだった。
大好きな「ジターバグ」だった。気が付いたらエルレを知っていた学生の頃から好きな曲だった。どうしてエルレを好きになったのか、何で知ったのか未だに思い出せもしないのだが、どういう訳か数あるエルレの曲でこの曲はずっと昔から知っていた。
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ライブを終えた今思うと、復活ライブの時とはライブを受け取る感覚が全く違った。
ZOZOマリンの時は個々が磨き上げてきた産物と空白の10年間の衝動をぶつけるかのように荒削りな無謀さの方が目立って、エルレのパワフルさに振り落とされないように必死だった記憶がある。
でも今回のライブは全く別で、お互いの顔を見ながら一緒に走り抜けていくようなピースフルな空間で、エルレがエルレを心から楽しんでいるんだなと思った。
そんなMCの後でも構わず「Make A Wish」ですぐにリフト発生、細美さんの「お前ら本当にバカだな!」みたいな笑顔からシンガロング発生。途中から細美さんが下ハモりにまわり、主旋律を客が歌う。
以前ZOZOマリンで聴いた時は「8/15は終戦記念日、だから時間をくれ」と平和へ祈りを捧げた。
今日は趣旨が違う。細美さんがこの場にいる私たちに、各々の願いに。
「『Make A Wish』には本当に願いを叶える力があるのかもしれない」と度々思う。
パワースポットでもなく、お金で解決出来るそんな浅はかさでもなく、「この曲を聴けばなんとかなる!」と思えるお守りのような確固たる確信がある。
神様のようで神様では無い、彼らが地に足をつけて正直に歩んできた結果だからそう思うのかもしれない。
本編ラストの「Strawberry Margarita」もまたライブですっかり大好きになってしまった。
「ありがとなクズ共!」と捨て台詞を吐いてステージから捌ける。
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アンコールですぐに登場するも「どうせやるだろみたいな感じだとやりづらいだろ!やり直していい?」とまた一旦はけて再登場。
「まずは俺らの好きな曲からやります!」と「Goodbye Los Angeles」。
「モンスター」を演奏して一旦はけるも鳴り止まない拍手からダブルアンコール、最後は「金星」で締めくくり「またやろうぜクズ共!ありがとうございました!」とステージを後にする。
「金星」の前に細美さんが「扉の向こうからガヤガヤ言ってくる奴はいて、聞こえないようにしていると本当に聞こえなくなってしまうかもしれない」とそんなことを言っていた。
外野の声を全てシャットダウンし、身の回りにイエスマンだけ残した時、アンチのいない世界というのは精神衛生上良いかもしれないが、本当に味方をしてくれる人の声までも耳を塞いでしまうかもしれないし、法に触れるような間違った道を歩んでいることを教えてくれる人がいなくなってしまうことを示唆しているのかもしれない。
全てが正しくも悪くも正解でも間違いでもない、細美さんは、エルレはクズのなりの人生の歩み方も教えてくれた。
嵐のような1時間45分、台風一過とは何のことか、終演後のフロアには華々しい熱気が残っていた。
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ELLEGARDENが復活したニュースが出た5年前、ライブ仲間はもちろん、リアルな学生時代の友達までひっきりなしに騒いでいたネット越しのあの異様な高揚感は未だに覚えている。
復活して5年経った今、コロナ禍の事情や倍率の高さを抜きにして、エルレのライブに行こうとしたり新譜を聴いている人は体感で1割もいなくなっていた。
当時は20代前半で、そもそも私の世代でエルレを知っている人が希少だったと思うが、それにしてもな割合だろう。
「どうせ半分以上は”復活”という一過性の熱気に呑まれただけ」と思っていたけど、実際そうであることが判明してしまった。勘は当たるというより、単に偽物が月日のふるいに掛けられただけの話だ。
ただ、実際復活から5年後のライブを見て思った。
未だ続くチケット戦争とライブの根太い熱気はエルレの人気は根強く不動であるということだ。
あれは時代を作り、後世に多大な影響を与えたバンドの強さだった。
あの頃の私へ
いつかライブハウスでELLEGARDENを見たかった。
復活した時か、出会ったばかりの頃か、でもいつからかそう思っていた。
今日、そんな小さいようで大きな夢が叶った。
10年前高校生だった私へ。
だらだらとでもなんとか這いつくばって生きてたらライブハウスでELLEGARDENに会えたよ。
大好きな「Supernova」も「ジターバグ」も聴けたよ。
5年前の私へ。
復活ライブの時のブログで「なんだかこの平成最後の夏で終わりではなく平均年齢45歳ほどのおじさんバンド、歳なんて関係無くまだまだ続いていくような気がした」と書いてたね。
確信の通り、ELLEGARDENはバリバリ現役バンドでやってるよ。新譜も出してツアーもやってるぐらいにね。
いろいろあっても生きててよかったね、またエルレに会える日が来るまで他人に自慢できない人生でも、だらだらと生きようか。