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今出来ることを精一杯、最善を尽くしたライブハウスのライブ[Champagne]vs[Alexandros]2020.8.14

ライブハウスに貼ってある「モッシュ・ダイブ禁止です」の張り紙は大して意味を成さない。が、今のライブハウスはそうはいかない。

[Alexandros]の有観客配信ライブを見た。

約6年ぶりに復活した主催対バンイベント「THIS SUMMER FESTIVAL」通称ディスフェス。

二日間あり今日は初日、思うことがいっぱいあった。アーカイブがあるから、有料だから、そんなことはどうでもいいから、感想も、思ったこと馬鹿正直に書く。


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今回は明日のファンクラブ限定の2日間、いつもなら迷わず2日間チケットを取ったり買うのだが、今回は迷った。

なぜなら6月に行われた2日間ともセットリストが99%一緒だったからだ。

もう配信終了もしているので中身を言うと、2日目のセットリストが1日目の一般向けにアンコールでプラス1曲だった。
セットリストが一緒なら1日でいいじゃないか?もしくは、ファンクラブのみアンコールが見れるようにすればよかったのじゃないか?

彼らも経済的に厳しいのは音楽業界に身を置いていない私でも分かるが、内容からすれば1日3000円のチケット×2日間=6000円分のチケット代を払う価値は無かった。だから今回もギリギリまで2日間買うか迷った。

1週間を切れると公式からも「全く違う内容」と発表があった。どう考えても前回同じセットリストだったことが大クレームだったようだ。

で、ギリギリになってやっぱ見るかと思い、2日間とも買った。

なんやかんや文句を言いつつもチケットを買う、立派なオタクである。

[Champagne]

ライブがはじまる前、予告通りMCとしてドラム・庄村が登場。
ベストアルバムが延期になり勇退も延期になりヌルッと在籍している。

副音声でも冗舌多弁ぶりを見せるサトヤス、場を盛り上げ方も上手い。

MCをしながらちらほら客席が映る、客席はみっちり並んだパイプ椅子に一席ずつ間隔を開けて、マスクは着用を義務付け、そして声出しは厳禁。

そこに写っていたのは私たちの知っているライブハウスとはまるっきり違う光景、映画館の応援上映のようだった。

そう言えば以前、ライブハウスでスタンディングと知らされていたはずなのにチケットが全く売れず、当日になって会場に入れば席が並んでいたことがあった(これもこれで問題な気がするが)がそれとは訳が違う。


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大人の事情で旧バンド名である[Champagne]とは言えないらしいので公式では「しゃんぺ」である。が、私はガキなので堂々とこの記事タイトルを[Champagne]にしている。

「BugerQueen」で登場するなり、今回グッズのTシャツのモチーフとなった「For Freedom」からライブがスタート。ぶっきらぼうで朦々たる楽曲から下克上を感じる。

「Waitress,Waitress!」で突き上げ、踏み切り板のように勢い付けば続けて「Starrrrrrr」。大サビで大合唱も出来ず物足りなかったが、逆に言えば大サビで洋平さんが歌ったのは新鮮だった。

繊細なギターが際立つ「Kids」ではメロディが染みる。

ライブ前から公式がSNSで話題にしていた「Kill Me If You Can」ではタイトルが散らばるVJをバックに、Aメロで洋平さんのボーカルを強調したアレンジで披露。通称キルミー、どんなアレンジにも映えるカメレオン曲だ。

ジャズマスでシャープなアルペジオを鳴らせば名曲「City」のはじまり。曲がはじまるなり客席から降るパラパラとした拍手が起こる、その拍手はまるで音源に刷り込まれていたように綺麗だった。

本人たちは爽やかな曲と言う「Don't Fuck with Yooheikawakami」をかます。見所はなんと言ってもギター・白井眞輝のメタリカ風ギターソロだ。迫力のギターソロ、普段寡黙な男が主役となった瞬間は無敵だ。

反骨精神の強い快然とした曲で終わりかと思えば「最後かと思った?もう一曲だけやらせてください」と洋平さんが話すと、クールダウンするかのようにゆるやかに締めた。曲は「Untitled」
この曲はバンド名を改名した武道館のライブで最後の最後に演奏された、ターニングポイントの曲だ。特別な意味を持つ曲、だから無理にこの曲好きだからやって欲しいなんて言わない。

楽器、機材、ファッション、洋平さんがきていた[Champagne]のくたびれたよれよれのTシャツ、[Champagne]の復活だった、

これにて先攻[Champagne]のライブは終了。

[Alexandros]

MCにサトヤスが再度登場。

「スポットライトで客席が見えない。武道館に立った時、ドラムソロで客席が全く見えなかった時と同じ景色です」とドラマーに戻れなくなってしまった今、ドラマーであったことを誇りに思っている感慨深さを顕にする。

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同じく「BugerQueen」で登場、「BugerQueen」はシャンペの曲じゃないかというツッコミを他所に[Alexandros]名義での初シングル「Adventure」からライブはスタート。この曲も本来ならば観客の合唱が行われるはずなのだが、規程で禁止、代わりに「コメントしてくれ!」とチャットやTwitterの画面をバッグステージに映し出す。

繋ぎの美しい「RunAway」で観客は飛び跳ね、精一杯曲へのアクションを起こす。すっかり定番曲となった美メロ曲「ムーンソング」から、「もう一曲月の曲を」と言えば「月色ホライズン」。夜から昼間へ、爽快なポップナンバーは暑い夏にぴったりだ。

「Dracula La」では客が歌えない分、コメントで歌うことに。現地でできないことをインターネットが埋める世界線、Twitterではディズフェスがトレンド入りの快挙。オープンしたばかりのZeppHanedaにサイレンが鳴り響くと「Girl A」へ、洋平さんが飛べー!と叫べば、観客は全身で応える。ラストは「Mosquito Bite」でステージから去った。

アンコールでは今月発売予定の「Bedroom Joule」から「Thunder」のリミックスと新曲「rooftop」を披露。

今にも寝てしまいそうなチルアウト曲を終えると、最後に[Alexandros]のライブのラストは日本を代表する曲になった「ワタリドリ」で「THIS SUMMER FESTIVAL」は羽ばたいて幕を閉じた。

この名曲すらもライブで聴けていない。そう思ったら、涙がどんどんこぼれた。ライブに行けなくて悔しい、会いたい、寂しい。でも、そんなぽっかり空いてしまった心を超えるんだ、絶対に。


「いつかまた会う日まで」



個人的に感じた良かったところ


今回は有観客配信ライブということで、約5媒体からのライブ配信が可能であった。回線や使い勝手も個人個人なので、前回1媒体のみだったことからしたら大進撃だし、とてもいいことだと思う。


個人的に感じた悪かったところ


ライブ本編の話ではないのだが、本来ここZepp Hanedaで本日8/14-15の二日間でベストアルバムを提げたツアーのファイナルで行われる予定だったが、代替え公演として公式キャパ2500人のことろ500人に減らして今回の「THIS SUMMER FESTIVAL2020」が行われた。

私も今年のツアーは仙台、札幌、羽田に当選していて楽しみにしていたのだが、当然の如く無期限延期という名の全公演中止となってしまった。

正直当選した喜びを踏みにじられているような気分だった。羽田公演に当選してた人は優先当選などの優遇もなく0からの抽選だ。

「もともと抑えていたハコでイベントを新たにやる」と言うのが最大のもやもやポイントで、代替えではなく別途のイベントとしてやってもらえればこんなもやもやした気分は無かったかもしれない。


関東圏に住んでいるけど現地に行こうと思わなかった

東京には電車で行けるぐらいには近い。でも、今回大好きな[Alexandros]に会えると言うのに、申し込みすらしなかった。

その理由は2つ。

1. 15000円払って行くライブの内容ではないと思った
2. 移動手段が電車しかないのでリスクが高い

今回のチケット代は15000円。大体いつものチケット代の2倍のお値段。おそらく今後もこのチケット代のアーティストは増えて行くでしょう。キャパを減らしてでの開催なのでこの値段は覚悟しておりました。

が、前述のように「マスク着用・声出し厳禁・着席指定」の規程。

ロックバンドのライブなのにライブハウスで着席指定?そんなライブは最初から私が望んでいるライブハウスのライブじゃない。

不完全燃焼だと分かってて終わるライブなら、大好きなメンバーの前に立つのは、いくらなんでも彼らの音楽を浴びるのは、そんなのはかつてないほど失礼だと思った。


それともう1つ、車で行くのなら感染リスクは低いが、電車移動のため品川駅乗り換えで羽田に行かなければならない。あまりにも感染リスクが高すぎる。

例えライブハウスが過剰なまでに感染予防を徹底したところで、電車、ホテル、飲み屋で感染してしまえば、全てライブハウスのせいにされてしまう。

もしライブに行ったことで感染してしまえば、会社、バイトの他、社会人の夏休みは実家に帰る予定もあり親とも会う、自分以外のことを考えると自分本位でこの状況下ライブには行けなかった。


取り戻そう、あの日をライブを


今回ZeppHanedaで観客を入れてライブをするのは[Alexandros]が初めてだそうだ。実質柿落とし(ライブハウスや劇場などがオープンして初めての公演)を任されているに等しい。ドロスが柿落としを任されるのはZeppOsakaBayside以来だ。

[Alexandros]が作るライブハウスのライブは「Starrrrrrr」や「City」でダイバーがいて当たり前だった。好きな時に好きなだけ歌えて当たり前だった。上手、下手、後ろ、好きな場所で見れて当たり前だった。洋平さんやまーくんがピックを投げて当たり前だった。MCで洋平さんの問いかけに返事したり、話したりして当たり前だった。ヒロさんもまーくんもペットボトルを投げて当たり前だった。洋平さんがハイタッチやグータッチをして当たり前だった。

でも、従来のようにライブができなくなり[Alexandros]のライブやフェスに行きたい、行く予定だった人も居たはず。受験が終わった、社会人になった、最近好きになった、そうしてやっとライブに行ける人も多かったはずだ。

彼らが150%のパフォーマンスをしても、今の規定を守ったライブで初めて彼らのライブを見た人に、彼らの魅力やドロスのライブの楽しさ、ライブの素晴らしさは50%も伝わらないと思った。

[Champagne]も[Alexandros]も、家なのにまるでライブ会場にいるかのような錯覚に堕ちるほどにパーフェクトなパフォーマンスだった。

いつも「いえーい!」と応えるところを拍手、いつも「ふう!」と言うところも拍手、メンバーの問いかけに対するレスポンスは、拍手と相槌しか手段がないのだ。

パフォーマンスの完成度が高ければ高いほど「本来のライブに行きたい欲」がむくむくと膨れ上がってしまう。今日がまさにそのライブだった。

生配信で見ても物足りない。満員の、みっちみちの、自由なライブハウスでないと、満足できない。すっかりそんな体になってしまったんだ。手遅れなんだ。

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最後に洋平さんがこう言ったんだ。

「ライブをやるか迷った。だけど、ドロスのファンなら大丈夫だと思ったからライブをやった。決め手はファンの存在。運は無いかもしれないけど、ファンには恵まれている。」

[Alexandros]を好きになって良かったと思う瞬間はたくさんあった。それが、今日更新された。

「ドロスのファンなら大丈夫だと思った」

今までずっとシャンペとドロスのファンをやっていて、一番嬉しい言葉だった。

私がドロスを信頼している以上に、ドロスが私たちを信頼してくれている。


これからのライブを作るのは、過去のライブを取り戻すことに尽力すること


新しいフェスやライブの在り方を考えるなどほざいているが、結局私たちが求めているのは新たなライブの在り方を作るのではなく、過去のライブに戻すこと、これに尽きる。

そうはっきり言うのは、ライブに変えられるものは無いから。

今回の最善を尽くした万全体制のライブハウスのライブは、あの日を取り戻すための遠い道のりの途中でしかない。今日のライブは紛れもなく長い道のりでも大きな一歩だ。メジャーデビューしてゴールではなく、スタート地点と経ったのと同じように、有観客ライブ配信もまた坂を登っている途中なのだ。

今回の有観客ライブはライブハウス業界として大きな一歩だと思う。今出来る最善を尽くし、制限されたライブハウスでのライブでは、きっと最高峰のライブだ。メンバー、スタッフ、観客、大きなリスクを背負ってあの会場にいた人たちに大きな拍手。

最後に彼らがライブハウスでライブをしたのは今年の1月、九州ツアーの沖縄だ。あれで終わらせてはいけない。


絶対に取り返す、自由が当たり前だったライブを。

ライブと言う文化は絶対死なせちゃいけない、

生き返らせなきゃ。

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紅葉
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