【ライブ】TK from 凛として時雨 TOUR 2024 「Birth or Death」@高松MONSTER 2024.11.15
なんだかんだで3年ぶりの飛行機、そして5年ぶりの四国上陸。知らぬ間に香川がヤドンだらけになっていた。運よく整理番号がよくツアー初日を最前列で堪能してきたのでレポ。
ライブレポート
定刻通り、SEが鳴るとサポートメンバーが順次登場。いつも通り黒レースのフォーマルでシックな衣装のヴァイオリン杏さんとピアノ和久井さん、イカつ可愛いドレッドヘアーのドラムあまたつ、ユニクロのような無地のTシャツにスキニーとシンプルな装いの中尾さん、最後にリネン風のワイドYシャツにワイドなボトムスとゆったりした衣装のTKが登場。
「シャボンのように」の歌い出しから最新リリースの「誰我為」。
先日2か月ほどかけてヒロアカを1から履修したばかりなのだが、ドラムの悪魔・あまたつと今回初参加の中尾憲太郎による悪魔的で暴力的な轟音に死柄木(触ったものを壊す個性を持つヴィラン)が街ごと破壊するシーンがフワッと浮かんだ。そんな暴力性と自暴自棄のような脆弱と共に、「もう誰も悲しませない」とヒーローたちの確固たる美しい正義がこの1曲に共存していた。
家族をも破壊した死柄木、血への興味が尽きず”普通”に生きることができなかったトガヒミコ、とにかく運の悪かったトゥワイス、ヒーローの父に振り向いてもらえずヴィランとなった荼毘。歌詞に散らばるフレーズが、個性を受け入れてもらえずはみ出た道を歩みざるを得なかったヴィラン達を連想させた。
「弾ける前に映し出した虹色」のフレーズから「彩脳」と鮮やかなるドラマティックな曲繋ぎ、てけふろレギュラードラマーであるBOBOさんへのリスペクトで「Crazy Tampern」と業界トップクラスの轟音を出すリズム隊の腕がギラギラ光るキラーチューンを連発。
こちとらも「まさか年に2回もソロで全国ワンマンツアーをやるとは思っていないわ!」と心でツッコんだ。
「melt」ではピアノの和久井さんがsuisパートを担当。
今回のライブはプロジェクターを使用した映像演出があり、空の青に吸い込まれつつ海の碧さに溺れるような、自らが惹かれつつも包まれる壮大ながらも緻密な轟音に窒息させられる不思議な感覚があり、また演奏するTKの影が映像に投影されていたため、まるでMVの世界迷い込んだような錯覚に陥った。"世界観に入り込む"とはこういうことか。
「conteast」は1サビ丸々クラシカルにアレンジしたライブバージョンでの演奏。「fourth」を演奏するのもかなり珍しい気がした。もしかしたらライブで聴いたのは初めてかもしれない。
こうした落ち着きのある曲の杏さんのヴァイオリンは、一気に高級ホテルのラウンジのような優雅で高貴な雰囲気に様変わりするので大好きだ。
6分超えの超大作「蝶の飛ぶ水槽」の間奏は、音源ではコウモリの鳴き声のようなヴァイオリンの音と鎌野愛さんの美声による静かな不気味さを全面に感じるが、ライブでしか聴けない悲鳴のようなTKのギターソロは圧巻で言葉の通り釘付けになった。まるでギロチンで処刑される寸前のような気分だった。一歩ズレれば黒板を爪で引っ掻く音だったり、まな板と包丁が擦れた時のような不快な音なのに、不快音ではなく忌まわしさの範疇スレスレで留める絶対的なTKの感覚に平伏する。
そのまま説明もなく新曲を披露。新曲の雰囲気は「絶絶絶絶対聖域」の突き抜けたポップさと「Fantastic Magic」のサビの四つ打ちの快感と「melt」の壮大さのいいとこ取りといったところだろうか。私としては”TKらしいポップさ”だなと感じたが、これまた新しい音のアプローチだったので百聞は一見に如かずとしか言いようがない。
今回NUMBER GIRLの中尾憲太郎さんがライブ初参加である(3度目のナンバガ復活を期待しているので元は付けない)。サポートメンバーに中尾さんが参加すると知った時、ガッツポーズをした。
中尾さんがサポートメンバーとしてツアーに参加するのは珍しいなと解禁当初から思っていたし、ライブはどこか固く緊張してそうだなと薄々感じていたのだが、本当に緊張していたらしい。ベテランでも新しいチームへの参加は緊張するんだな。
「yesworld」も「蝶の飛ぶ水槽」も背中がゾクゾクするようなイアリーな雰囲気の2曲が演奏されたのが約3年ぶりだと記憶しているが、こうした曲らがセットリスト入りしたのは今回のツアーがノンタイアップだからこそだと思う。
春の「MAD SAKASAMAツアー」が初めてTKのライブを見る人にも楽しんでもらえるような大衆向けで、今回の「Birth otr Death」はTKの激しい曲を特に好むライブ常連のコアな客向けだと思う。音楽はうるさければうるさければいいと思っている私としては今回のセトリは特にブッ刺さりセトリだ。
「歌っていただけますでしょうか」と呼びかけで「P.S RED I」、ラストは「クジャクジャノマアムアイア」でステージが真っ赤に染まったまま終焉。
後半の「yesworld」以降、終盤に向けてだんだんと激しさを増し、「得意分野だぜ!」と言わんばかりにあまたつ&中尾さんが抑えの効かない無敵オフェンスモードに突入、激情的なターンではフロント男性陣3人がとにかく強烈で轟音の爆風が凄まじい。
ハードコアメタルに身を置くのタイトでダイナミックなドラムに、シーンを築き上げた轟音ベースの元祖とも言えるベース、クラシカルで上品な音色のピアノとヴァイオリンもTKの楽曲とこの強靭なリズム隊による鼓舞にかかれば凶器ともなる。
一瞬あまたつと和久井さんがニコニコと目を合わせて弾き狂っていたのが印象的で、他のバンドやアーティストであれば絶対に見られないピアノとドラムが音で殴り合いをしていた。
常時音が旋律をなぞりながらも激突しているのだけど、それは勝つか負けるかの試合でも、弓道やダーツのように如何に正確に的中させられるかでもなく、自分の色の音を最大限引き出し、どれだけ自分の音でTKの音楽を彩れるかを自分自身と戦っているようにも見えた。そんな”ロック”というジャンルだからこそ出来るアクロバティックな演奏は、どんなプロミュージシャンでもTKfrom凛として時雨でしか見られない、というかTKのライブでしか見たことない。
とにかく全員がバッチバチで好戦的なのだ。ヒロアカでいえばミルコ、鬼滅の刃なら不死川実弥、銀魂なら神威、呪術廻戦なら宿儺。それも見ている側なら爽快と思うほどの規模の大きさと圧倒的な強さだった。
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アンコールではツアーTシャツに着替えたTKが先に再登場。
いろんな場所でライブを見ているけど、大体終電の心配をしてくれるのが地味に嬉しい。リリースから10年経った今も変わらず支持の厚い「unravel」。
「最後は……トゥギャザーデス、しましょう」と「Birth or Death 」のツアー初日、想像通りのタイトル回収する形で「first death」。
「誰我為」「彩脳」が空にかかるような淡い虹色だとすれば、「first death」は同じ虹色でもコントラストがはっきりとしていて、サイケデリックで禍々しい。
何回も書いているけど「first death」をライブで聴くたびに「ノーベル賞は俺のものだ!」と永遠の悪魔と戦うあのシーンのデンジを思い出す。
全員が感情を曝け出して弾き狂うアウトロはTKがデンジになりきっているような、それが伝染してステージの全員にデンジが憑依しているような。アニメの主題歌をライブで聴くという体験はアニメでは決して得られない栄養素で、声優さんや俳優さんの演技よりも断然生々しくて血みどろだけど、これを聴くだけでも元が取れたと思うぐらいに毎回気迫と熱量に圧倒される。
喰らう側でも溢れんばかりにアドレナリンが出るんだよ、やったことはないけど多分パチンコで大勝ちしたらこんな気分なんだろうなと思う。あんなにエクスタシーを感じることは無い。
赤と青と虹色
TKが意識したのか分からないが、歌詞や演出でなんとなく曲にイメージカラーがあるように思っていて、セットリストの順番からしてそれを「Birth or Death」=生と死に当てはめているのかな?と思った。
この話はシナスタジアに近い話なのでもちろん人によって異なると思うが、私のイメージでは今回演奏された曲では「誰我為」「彩脳」「first death」が虹色、「melt」「unravel」「蝶の飛ぶ水槽」は青、「P.S RED I」「クジャクジャノマアムアイア」は赤、「Signal」「yesworld」「Showcase Reflecion」は無彩色(と言いつつ私の中では黒やグレー寄り)なのだけど、赤が生、青が死、無彩色が命はあるが心が死んで空っぽの状態。
今回のライブは「誰我為」の虹色から始まり、「first death」の虹色で終わる。諸行無常を暗喩しているようにも思えた。
Birth or Death or Re:birth
気兼ねなく爆音鳴らせる喜び、難易度の高い楽曲を弾き切る達成感、そうしたポジティブな感情や多幸感が近年のTKからダイレクトに伝わってるような気がする。数年前は「近寄るなオーラ」が強くあり、「完璧なライブを完璧な状態で演奏して叩き潰す」と殺伐と張り詰めた緊迫感や空気がステージからフロア全体に張り巡らされているように思ったが、ここ数年はいい意味でファンを信頼しているように思う。
それまで「リスナーを信用していなかった」という意味ではなく、例えば上着を着るときに持ってる一瞬荷物を持ってもらうとか、荷物を半分持つとか、些細なことだが人に何かを頼むように出来るまでになったのかなと思う。
毎回ツアーに通っている常連もいれば、気が向いたらライブに行く、最近ライブに行くようになった新規のファン、そうは言ってもファンの年数もライブに行った本数なんて全く関係ないけど、TKが今まで「自分が全てやらなきゃ」と自責していた部分をライブに来た目の前の人全てに肩を預けているように感じる。
そういった意味でも生まれ変わったのかな。
時代も価値観も変わって当たり前だ。だからこそ、今をこの目で焼き付けるのだ。
セットリスト
そういえば公式Twitterが「As long as I love」の映像出してたのに結局やらなかったんだけどなんだったんだろう…?