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●時々、私は考える●

人と関わることって、とっても怖い。
だって誰も本当の自分を理解してくれないだろうし、拒絶されたり変な奴だと思われたらもっと嫌だ。

この映画の主人公フランもそんなふうに考えている一人だ。
アメリカはオレゴン州の小さな港町アストリア。緑と海に挟まれた、どこか懐かしい雰囲気の静かな町。
職場とアパートを行き来する淡々とした毎日は、彼女にとって退屈でも幸福でもどちらでもないようだ。
ただ、人付き合いからはなるべく遠ざかっている。なるべく心を隠して波風を立てないようにしている。

そんな窮屈な心の逃げ場は、死を想像すること。
孤独のまま、静かに溶け込むように死んでいる自分を想像する。現実世界での窮屈さから解放されるように想像する。

でも本当は誰かと関わりたい。
隠し続けている心を誰かと共有してみたい。

新しく職場にやってきたロバートがなぜか気になって、恐る恐るの交流が始まる。
一進一退だけれど進み続けようとするフラン。その心の動きが痛いようにわかる。

人を遠ざけるのは傷つきたくないからで、もし誰かを傷つけてしまったらそのことにさらに傷つくからだ。
だから閉ざして隠しておきたいけど、心を理解しようとすることの素晴らしさは何にも変えがたい。理解しなくていい。理解しようとする、理解しようとしてくれるだけで素晴らしい。
私はそんな心を描いた映画が好きだ。
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」もそんな映画だったけれど、この作品もまた別の視点で心を描いたいい映画だ。
人と関わるのが苦手だと感じる人はぜひ観てほしい。2作ともまだ上映中なのでぜひ。

そしてこの映画の舞台であるオレゴン州アストリアはなんとあの「グーニーズ」のロケ地と同じだそうだ。
感じた懐かしさはそこからきているのかもしれないし、私の出身地である小樽と少し似ているからかもしれない。

とっても余談だけれど、ふだん昼から深夜までが労働時間の私にとって、朝の9時台の映画に出かけるというのはなかなか至難の業だ。
でもそうしてまでこの映画は必ず観ようと思っていた。きっと自分にとって大事なことが描かれているだろうと思ったし、そしてその予感はしっかり当たっていた。

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