●ノーウェア●
目に映るもの、全部に手を伸ばしてみたい。今欲しいものを今手に入れたい。アクセサリーも洋服も化粧品も、本もCDもビデオも、ゲームもタバコもポルノ雑誌も、なんでもかんでも雑多に詰め込んだ箱の真ん中にいるのが10代なのかもしれない。
グレッグ・アラキ監督の1997年に公開された"ノーウェア"のデジタルリマスター版。ドゥーム・ジェネレーションに続き、主演はジェームズ・デュバル。彼が演じるダークを含めた19人のX世代のティーンエイジャーの一日を描いている。
「ティーンエイジャーは一日に10回生きては死ぬような興味深い題材」とグレッグ・アラキ監督が語るように、この映画が描く一日は恐ろしく濃い。スウィートだったりふざけていたり喧嘩したり、暴力的だったり衝動的だったり退廃的だったり、高揚感も万能感も倦怠感も絶望感も、くるくると変わる色の中にぎゅっと濃縮されている。そしてそれはグレッグ・アラキの手によると、大変に鮮やかなデザインになる。彼にとっては物語を書くことと絵を描くことが同義なのかもしれない。ただでさえ色濃い10代の体験をさらに圧縮してデフォルメすることで、過激な描写はポップアートのようになる。
90年代の最先端のカルチャー、ファッション、音楽もこれでもかと詰まっている。彼らのような生活を送っていないにしろ、同世代の私にとってはやはり懐かしく感じる。
そしてドゥーム・ジェネレーションと同じく、過激なシーンがふんだんなのにも関わらず、後に残るのは彼らの感情ばかりなのだ。彼らの感情が鮮やかな映像とともに残る。不思議と。