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●ドゥーム・ジェネレーション●

初めてこの映画を観たのは2005年頃、レンタルのビデオかDVDだった。どこを切り取っても絵になるデザイン性の高さに衝撃を受けた。10年も前に作られたなんて信じられないほど鮮烈な画力があった。一言でいうとまさしくクールだった。

それからずっとグレッグ・アラキという監督名は私の中に刺青のように刻み込まれていた。
デジタルリマスター版公開の噂を聞き、札幌でも観られないだろうかと期待していたところ、年明けからシアターキノで上映されると知り楽しみにしていた。あの3人にまた会える。

90年代半ばのロサンゼルスのティーンエイジャー、ジョーダンとエイミーのカップル。アクシデントにより車に転がり込んできたグザヴィエと知り合ったことで3人の逃避行が始まるロードムービー。目まぐるしく巻き込まれていくスピード感と、繰り返されるモチーフ。生と死、たった今、この瞬間しか目の前にない。"今"に引きずり込まれていく3人を観ている私たちも引きずり込まれる。

約20年ぶりに観たことになる。
記憶よりもずっと過激だった。目を背けたくなるバイオレンスシーンがあると覚えてはいたが、ここまで暴力と性描写がバケツをひっくり返したかのようにふんだんにあったことはすっかり記憶から飛んでいた。
しかし、観終わって時間が経つと、やはり過激な場面はそれほど印象に残らない。それよりも主人公たちが抱える不安と絶望感、刹那の欲望やわずかな希望という内面の心情が、真っ赤なモーテルの部屋や汚れたクラシックカーの中、コンビニエンスストアやドライブスルー、荒野の古着店、煙るゴミ置き場なんかと一緒に、よっぽど残る。

くだらないが口癖のいつも不機嫌なエイミーと、欲望に忠実で手段を選ばないグザヴィエ、二人の中和役のような優しさと寛容さを持つジョーダン。ジョーダンの存在がなかったら滅裂すぎてきっと成立しない。
ジョーダン・ホワイト、エイミー・ブルー、グザヴィエ・レッドと3人のラストネームが色だということにエンドロールで気づく。確かにこの3色が映画のテーマカラーであり、色の印象がそれぞれの性格を表しているのだと、今回初めて気づかされた。
純粋な白、嘆きのブルー、衝動の赤。ティーンエイジャーとは、きっとその3色からなっているのだ。

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