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ご機嫌なキーボードを求めて〜KBDcraft Kit Adamビルドログ

これまでのあらすじ

遊舎工房のお楽しみ袋・お苦しみ袋を購入した後、私は抗えない欲と戦っていました。

きっかけは、思いがけず手に入れてしまった、とにかく私好みなこちらのキーキャップです。
使いたい。できればそこそこキー数があるコトコト系キーボードで、ご機嫌に年末を迎えたい。
元々昔から60%キーボードが欲しいと思っていた私にとっては、そっと背中を押された気分でした。突き落とされたとも言います。

とはいえ年末年始。ただでさえお楽しみで散財後。いろいろ削ったとしても限度があります。
「2024年内はいったん諦めよう。いざとなったら自分で基板から作ってやる」
そのためにもまだふんわりしている自分の好みを洗い出そうとKLEを起動し、配列を検討し始めて数分もたたず、すぐ買える範囲にうってつけのベアボーンキットが売られていると気付きました。

  • 理想の60%配列ニアミス(スペースバーが割れていないだけ)

  • 設計中のキーボードの参考になりそう(ガスケットマウント、広ベゼル、本体プラスチック)

  • かつ、全く同じ構成(30%、金属プレート)ではない

除夜の鐘を待てず、物欲に負ける

ハロー!

ほらもう、パッケージからめちゃくちゃご機嫌じゃないですか?
レビューを確認して
「ひょっとしたらNot for meかもしれない」
と感じた箇所も、改善済だったり自分で対策できそうだったので、何の心配もなくさくっと組み上げるつもりでした。

まさか、あんな予想外な結末を迎えるとは、この時思っていなかったんです。

内容物

プレートの形状やフォームがちょっと独特。同梱物の包装がとにかくかわいい。
説明書と、販促用と思われるスイッチサンプル。
記事は組み立て後に書いていますが、たしかにこのキーボードにはこの感じが合いそうだと思います。

我慢できず開封したりフォームの穴を開けたりしてしまいましたが、ポップで凝ったデザインの梱包です。これは雑貨好きの人の心も掴めるんじゃないだろうか……。
フォームは日本で一般的なporonフォームと感触はほぼ同じなんですが、つるつるしたフィルムに貼り付いているので、一瞬プレート接着タイプかと思ってしまいました。

これ、キーボードですよね?

そして、普通のキーボードキットではまず見ない各種ブロック。私はしばらくAとBの違いに悩みましたが、混ぜても全く問題ありませんでした。

思わぬ誤算、その1〜使えるはずだったスタビライザー

いつか一度試してみたかった、WSのスタビライザー。ラメ入りで気分もちょっとリッチです。

私は呼吸をするように付属スタビライザーを丸ごと取り替える性分なので、今回も当然のごとく別途準備済でした。
キット付属品はプレートに取り付けるタイプですが、国内流通品は基板に取り付けるタイプの方が種類も防振対策も充実しているのでそちらを選択。

遊びが少し大きい気がしたので、針金以外の部分もルブ
お苦しみ袋に入っていたネジトレイが大活躍

早速スイッチを組み立て……ようとしたのですが、プレートがはまらない。
あれ?しっかりそれ用の穴も空いてるのに、どうして?
なんとか頑張ろうとするも、フォームがやはりスタビライザープレート装着が前提の形状をしていることに気付きました。どうも、ここはちょっと加工が必要に思えます。これは面倒だ。
付属品もおそらくルブすればある程度はなんとかなるよな、と、ねじ込みスタビライザーの使用は断念しました。

思わぬ誤算、その2〜POMプレートの柔らかさで基板が曲がる

実は撮影時にも全体が若干Uの字になってます

これは私の選択と至らなさが招いた悲劇だと思っています。

今回最初に試したのは割と寸法がみちっとタイト(な気がする)なDurock Ice Kingでした。
理由はご機嫌になりたかったからです。
私のご機嫌はタクタイルを意味するんです。
まるでスキップのように指先で弾むあの感触が欲しいんです。

しかし、普段はFR4やアルミといった結構硬めなプレートを使うせいか、どうも自分の力加減やインストール順がよろしくなかったらしいです。
スイッチを全部嵌め終わった時には、基板が炙りスルメのごとく反りかえっていました。

12月といえば、自作キーボードの探求や開発に勤しむ皆様がアドベントカレンダーで各々1年の研究成果や活動報告を発表する時期。
そんな中、なんで私は基板を炙りスルメに喩えながら途方に暮れてるんですか?
ごめんねAdam。苦しいよね。つらいよね。こんなこと誰も望んでいなかったよね。

何回かスイッチを付け直したりしたところ、完全水平とはいきませんがだいぶましになりました。POMプレートにトラウマが生まれた瞬間でした。

キーボードのケースを組み立てる(!)のは自信があったと言えば大嘘ですが、わりと順調にいきました。

ここから一体どうなるのか見当がつかない
それっぽくなってきた気はする

フォームを貼り付けたタイミングで基板を乗せます。

POMプレート怖い、POMプレート怖い

いや本当なら多分こんなことになるはずは……
いざという時にツメを削り落とすための基板用やすりの場所を確認しつつ、干渉を可能な限り整えて、いったん上部まで組み上げてみます。

キーボードだ!キーボードになったぞ!

不思議となんとかなりました。上下をブロックで挟んだことで、傾いていたブロックの位置がうまい具合に整ったと思われます。やすりは引き出しにしまいしました。早まらなくてよかった。

キット購入画面のおすすめ欄にこのキーキャップが出てくるのも納得のフィット感

というわけで、突発的にお招きしたAdamさんですが、数多の(私起因の)苦難を乗り越え、無事に動かすことができました。
Vial対応なので、お馴染みの画面でさくっと色々調整可能です。購入時にはその辺りを全く考えていなかったんですが、プレートの特性も相まってLEDの光もすごく綺麗に回るので、机の上が一気に華やぎます。ひと足お先に、メリークリスマス!

思わぬ誤算、その3〜スペースバーが戻らない

早速試し打ちをした時に気がつきました。
スペースバー、戻りません。

元々スペースバーはスイッチの相性次第で戻らないことがあるという話は以前から小耳に挟んでいたのと、少し触ってみて
「やはり重タクタイルはもう少し硬いプレートに乗せたいな」
と感じたため、Ice Kingは断念しました。取りあえず数の揃っているリニアに取り替え。

これもお楽しみ袋で頂いたスイッチ

サイレントリニアは流石、やはり、と言うべきか、押し心地もかなりしっくりきます。
しかし当初のご機嫌なタクタイル、という想定と全然違う、厳かな着地点になってしまいました。
でもこの柔らかい感触もまた一興、と一晩寝かせることにしました。

思わぬ誤算、その4〜1年越しの再インストール

元々POMや柔らかめのプレートはタクタイルと相性がよくないよ、という話は聞いていました。しかし最近のトレンドはまさにそういう方向だよなあと思います。そういうキーボードが流行れば、そういう構成が流行れば、やはり人気が出るのはリニアの方だろう。ここまでは素人の私でも簡単に推測できることです。

また、タクタイルはリニア以上に嗜好のばらつきが出やすいスイッチだと思っていますし、これについては異論も少ないと思います。重さ、滑らかさといった要素に加えて「バンプの山」「触感」といった好み全てを満たすスイッチを探すのもなかなか大変です。
テスターで好感触でも、キーボードの特性が持ち味を削いでしまう、といったことも多いでしょう。(その逆だって然りだと思うのですが)

私が最初に購入したメカニカルキーボード(マクロパッド除く)はKeychron K2 Proのタクタイルでした。

 このキーボードが到着したその日のうちに、私はスイッチをKailh clione limacinaのタクタイルに換装しました。
事前リサーチでの予想通り、フィードバックはとても軽やかで、なによりも音が低め控えめ僅かにハスキー。その感触に夢中になり、そこから私はキーボードというガジェットに魅せられていきました。

あれから1年もしないうちに、そのスイッチは遊舎工房の商品ページから消えてしまいました。たしかに癖が強かったと思います。ひょっとしたら品質管理も大変だったかもしれません。山が穏やかすぎて、リニアと区別がつかない、と言われることも多々ありました。
率先して使ったせいであのスイッチのストックが手元にほとんどないのですが、しかし、あれくらい軽量のタクタイルが手元にあったならば、Adamの素材や特性にも合うかもしれません。でも今はもう私の手元にそういう条件を満たすスイッチは

ありますね。
到着即日で取り替えられて、ずっとしまわれてしまっていたこの子がいましたね。

思いついて即乗せました。
バッチリです。光の周り方も十分です。スペースバーの動きも快調です。当初は自分の好みとちょっと違ったと思っていた高めの音も、自分好みの軽い感触も、POMプレートに合わせるとすごく、すごくご機嫌です。

ここでふともう一つ、とある組み合わせを試してみたくなりました。

POM Jellyもまた、奮発して入手した(機能キー分が当時の精一杯でした)けれど今は眠っている思い入れのあるキーキャップです。
そして何の因果か手に入れたばかりのお苦しみ袋のキーキャップと同じプロファイル、同系色です。どちらも光透過と相性が良い加工になっているので、発色がとてもきれいなAdamにも、いい具合に馴染みそうです。

思わぬ誤算の先に、予想外の再会

2024年おそらく最後に組むことになったこのキーボードは、当初の予定から大きく変わって、奇しくも「初めてキーボードに魅せられた時の思い出」が色濃く出た構成になりました。

AdamはLEDのプログラムパターンもかなり多く、その中の一つが「こんな光らせ方ができたら素敵だろうな」と思い描いていた理想に近かったのも驚きの一つ。
まさにPOM Jellyはそんな光を透過したら綺麗だろうな、と思って購入したものなので、1年越しにそれも叶った形になります。

ライトを付けると全く違う顔を見せます。
光が時折ランダムにちらつくのが良い

キースイッチを付け替えつつ、同時にキャップをはめ込みながら、おおよそ1年間のめり込んできた道を振りかえりながら。
不思議な気分でご機嫌に、私は最後のキャップを手に取り、スイッチに差し込み

そういえばこのキーキャップの出処、お苦しみ袋でした

できませんでした。
Sだけがセットの中に無い。
こんなオチってあります?

※結局、WASD部分をPOM Jellyで埋めることで誤魔化しました。

今回のビルドまとめ

Keyboard :  KBDcraft Kit Adam
Switch : Keychron K Pro G3
Keycap : PBT カラーキーキャップ white / EscapeKeyboard POM Jelly Keycaps ANSI fullsize Mod Kit Sugarcube

このNoteは、KBDcraft Kit Adamで書きました。