
可愛いが溢れる
平日の午後、少し冷たい風が吹く遊園地。
紅葉がちらほらと色づき始め
どこかロマンチックな雰囲気が漂う中、
俺たちは付き合って半年記念のデートで
遊園地を訪れていた。
「次、あのジェットコースター乗ろうよ!」
彼女が指差した先には、
急降下がウリの大きなジェットコースター
目を輝かせている彼女に
俺は苦笑いを浮かべる。
「いや、それはちょっと…ご飯食べたばっかだし、
落ち着けるやつにしようよ。」
「せっかく来たんだからスリル満点のやつ
行ってみようや〜!」
そういうと彼女は俺の腕を軽く引っ張る
「本当に大丈夫なの?」
「もちろん!」
少し不安ではあったが
こんな風に無邪気に笑う彼女をみると
そんなことなどどうでもよくなった
結局、俺たちはいくつかのアトラクションを
巡ることができた。
笑い合いながら写真を撮ったり
点数を競いあったりと
その度にみせる彼女の反応に
こっちまで自然と笑顔になってしまう
「お腹空いてない?」
彼女がぽつりと呟いた
「確かに、そろそろご飯にしようか。」
そう言うと、うさぎのように飛び跳ねていた
「確か...限定メニューとかあったよね?」
「うん!あれ食べたいって思ってた!」
彼女がぱっと笑顔を浮かべて、
案内板の方を見つめる。
その姿がまた愛らしくて
思わず頬が緩む。
「ねえ、○○これすごい美味しいよ!
やっぱり、遊園地のご飯って特別だよね!」
「そうだね。」
ちなみにご飯代は私が出しました...
...割り勘じゃないのかって?
いいんです。あんな笑顔見たら
世の男性はみんな
買ってあげたくなっちゃうんですよ
(まあ、優が嬉しそうに食べてるの見てる方が
俺は楽しいけど..)
「何か言った?」
「いや...なんでもないよ」
「私に隠し事するの...?」
あ、、
これ雰囲気悪くなりそうな感じだよね?
さっきまでめっちゃニコニコしてたのに
ちょっと悲しい顔してるし、、
目がうるうるしてきてるし...
恥ずかしいけど、言うしかないよな...
「隠し事とかじゃなくて、、」
「優が嬉しそうに食べてるのを見る方が、、」
「俺は楽しいなぁって思っただけだよ。」
「...」
「もう/// またそういうこと言う!」
彼女はそう言いながらも、口元を緩ませて笑う
少し照れくさそうにするこの反応が
どうにも愛おしい
"この瞬間を記憶として残しておきたい"
そう思った俺は
カメラを取り出し、彼女に向けると、
彼女はすぐにピースを作り、
にっこり笑ってくれる。
「撮れた?」
そう聞いてくる彼女に俺はまた
「うん、完璧。」
「可愛すぎて困るぐらいだよ。」
なんてことを言うと
「またそうやってからかうんだから!」
そう言って頬を膨らませる姿も愛おしい
この半年、何度彼女に「可愛い」って
言ったか分からないけど、
全然まだまだ足りない気がする。
夕方になり、パレードの時間が近づいてきた。
通路沿いに座り込んだ俺たちは、
空を見上げて話していた。
ふいに音楽が流れ始め、
華やかなフロートが登場する。
「わあ、始まったね!」
彼女の声が弾む
光り輝くフロートの上では
キャラクターたちが踊りながら手を振り
色とりどりの衣装が
ライトに反射して輝いている。
彼女はキャラクターたちに手を振りながら
夢中で見ていた。
「ねえ、あのキャラクター可愛い!ほら!」
指を指して教えてくれる彼女に
「うん、見てるよ。」
「でも、優の方がずっと可愛いよ?」
また、"可愛い"と口にしてみた
「またそれ!ほんとにやめてってば…///」
彼女が照れながら俺の肩を叩く。
きっと周りからは
バカップルだと思われてるはず
だが、そんなことは気にしない
クライマックスには
花火が夜空に打ち上がり、大歓声が響いた。
彼女はそのたびに
嬉しそうに笑って拍手をする。
その姿を見るだけで、
俺はこの場所がもっと好きになった。
帰り道、
遊園地の出口近くで
彼女がふと立ち止まる
「今日、すごく楽しかった。ありがとう。」
「俺もだよ。」
「優といると、どんな場所でも特別になるよ。」
「もう、本当にやめてってば!」
彼女が照れたように笑うその顔は
昼間よりももっと綺麗だった。
それはきっと
彼女が可愛いからだろう
end.