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リコのトリコ



午後の柔らかな日差しが差し込むテーブルで



俺の正面に座っている小柄な彼女は


腕を枕にして、目を閉じていた。


「寝るなら、ソファー席にすればいいのに...」


俺がそう呟くと


「ここじゃなきゃ
足が浮いちゃうじゃないですか?」


「それにソファーだとたぶん寝過ぎちゃうと
思うんです!」



(分からなくもないけど...)


(そんなとこだけ真面目でどうすんだよ笑)


そう答える彼女に


俺は少し納得しながらも、


ふと彼女の手に目が止まった。


「...その指、大丈夫なの?」


俺が少し心配げに尋ねると


「昨日、包丁使ってたらうっかり切っちゃって...」


(赤ちゃんが包丁なんて、、、ね?)


(そりゃ怪我しますよね笑)


「それで包帯巻いてるってワケ?」


「まぁ、そんなとこです...」


「まだまだ子供なんだな、りこは」


「そんなことないですよ!」


「...でも、大丈夫そうで良かったよ。」




ホッとした矢先



「先輩!」


「痛い時は痛そうにしてた方が

得なこともあるんですよ?」


ほぇ...


痛いことで...得すること...?




考えてはみるが



分からない


ならば、聞くしかない



「何か良いことでもあるの?」



その途端


彼女は少し俯きがちになりながら



呟いた



「それはですね...」



「○○先輩に...



心配してもらえるからです!」



彼女の小悪魔のような笑みに



俺の胸が少しざわつく。



「そんなことしなくても、俺は最初から
 理子に優しくしてるつもりなんだけど、、、」



つい目を逸らして、そう答えた。



「やっぱ、○○先輩はたまに優しいですね!」



その一言に内心ドキッとしながらも、



「...いつもだろ。」



なんて素っ気なく返してみた


(今じゃないのは分かってるけど...)



(誰かにとられる前にこの気持ち伝えないと...)



「理子、俺s...」



想いを伝えるべく



彼女の方に再び目を向けると



「Zzz‥Zz...」



気持ちよさそうに眠っていました



(俺もこれだけ呑気な人間だったらなぁ)



彼女の寝顔を見ながら



そっとため息をついた。



彼女の



一挙手一投足に



俺は心を狂わされる



今更、思ったわけではないけれど



きっと俺は





リコのトリコなんだろう





end

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