
ツンデレな彼女は今日も甘々だった
「……○○、何か言うことあるやろ?」
改札の前で立ち止まり、
瞳月がじーっと俺を見上げる。
「え、何か忘れてる?」
「あるやろ?」
腕を組んで、少し不機嫌そうな顔。
でも、よく見ると耳の先が赤い。
「えーっと……映画、思ったより感動したよね?」
「そうやけど、それちゃう!」
「お昼に食べたパスタ、めっちゃ美味かったね。」
「確かに、あの明太パスタは凄い美味しかった!」
「....って!それもちゃう💢」
「えー……あ、今日の服、めっちゃ似合ってた」
「……そんなん、、、
言われんでも分かってるわ...///」
そう言いながらも、ちょっと顔を背ける。
耳がさらに赤くなった気がする。
「ごめん...ヒントをください。」
「はぁ……○○ってほんま鈍いなぁ。
そんなんで彼氏名乗ってええと思っとん?」
「もしかして彼氏失格?」
「ギリギリ合格やけど減点やな」
「厳しっ」
俺が少し笑いながら言うと、
瞳月はため息をついた後、少しだけ目を伏せた。
「しーはな……
今日、めっちゃ楽しみにしとったんやで?
朝から色々考えて……映画もご飯も、
全部○○と一緒に楽しみたくて……」
小さな声でポツリと呟く。
「なのに、○○は何も言わんと
さっさと帰ろうとするし……
ちょっと寂しかったわ」
そこで俺はようやく気づく。
「……あぁ、ごめんね瞳月。
今日、めっちゃ楽しかった。
ホントに瞳月が彼女で良かった!ありがとね」
そう言って、そっと頭を撫でると──
「べ、別に感謝されるためにしたわけちゃうし!」
瞳月はぷいっとそっぽを向く。
が、そのまま俺の袖をぎゅっと掴んだきた。
「……でも、まぁ……○○に喜んで貰えたから...」
「しーはそれだけで十分嬉しいけど...///」
何とか機嫌を損ねずに済むことができた。
「単純だなぁ、瞳月は笑笑」
「は!? なんやと!?」
「いやいや、なんでもないよ笑」
俺が笑って誤魔化すと、瞳月は
ちょっとムスッとしながらも、
袖を掴んだ手は離さなかった
「なぁ、○○?」
「ん?」
「帰る前に……
もうちょっと一緒におりたいんやけど....」
「ダメ?」
小さな声で、
でもしっかりと俺を見つめながら言う瞳月
「ダメじゃないよ。俺もそう思ってたから」
「んな///」
「そしたら……近くのカフェでも行く?」
「……行ったるわ」
「行ったるわってなんだよ笑」
頬を染めながら、ちょっと偉そうに言う瞳月。
そのツンデレっぷりが可愛くて、
思わず笑ってしまった。
*
「○○、何か奢ってや」
カフェに入るなり、
瞳月がメニューを見ながら言ってくる。
「お礼言ったのに、まだ減点ついてる感じ?」
「そうやな。
まぁ、減点がチャラになるくらい
奢ってくれたら、考えんこともないけど?」
「だったら水でいい?」
「は!? なんやそれ!?」
「水ならタダやし」
「アホちゃう!?
ちゃんと甘いやつ頼むに決まってるやろ!」
「はいはい……で、何がいい?」
「んー……この期間限定のやつ!」
瞳月が指さしたのは、ホイップもりもりの
キャラメルラテ。
「めっちゃ甘そうだね」
「うるさいな! 甘いもん食べたら
幸せになるんやから、○○も感謝しーや!」
「俺が奢るのになんで感謝するんだよ……」
「そーやったら、やめとく?」
「いや、奢りますとも」
「ふふっ、最初からそう言えばええねん」
得意げに笑う瞳月を見て、俺は思わず苦笑する。
「まぁ、甘いもん食べて
ご機嫌になってくれるなら、それだけで俺は
幸せだけどなぁ」
「……ふふ、○○、やっぱり優しいな」
小さく呟かれた言葉に、一瞬ドキッとする。
でも、俺が反応する前に瞳月は
「ほら、早く頼んで!」
とメニューを押しつけてきた。
まったく
ツンデレな彼女は今日も甘々だった
だけど、こうやって振り回されるのも
悪くない
「...○○.....○○!」
「....あぁ、ごめんごめん。
ちょっとボッーとしてた」
「ほら、はよしーや!」
せかす瞳月の横顔を見ながら、
俺はふっと笑って
「はいはい、お嬢様」と注文をしに行った。
──きっと、これからも俺はこうして
彼女に甘やかされるし、
甘やかしてしまうんだろうなぁって
君の笑顔をみながらそう思った
end.