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麻雀のスタイル分析 【スタイル分類編】
こんにちは、天鳳位の小江戸緑です。
今回は、天鳳における鉄強プレイヤーの麻雀のスタイルを統計的に分類・図示し、各スタイルのネット麻雀攻略のアプローチを考察します。
麻雀上達のアプローチに悩んでいる方にとって、本記事はネット麻雀攻略のための長期的な戦略を見つけるきっかけになるかもしれません。
また、自分の理想とするプレイスタイルのプレイヤーを見つけることもできるでしょう。
前編にあたる本記事では、麻雀のスタイルは統計的にどのように分類できるか、天鳳位を含む鉄強プレイヤーがどのスタイルに属するかを図示します。
有料記事としていますが、全文無料で読めます。
面白ければスキや記事のご購入をお願いします。
本記事は、過去に私のブログに掲載した記事のリニューアルになります。
より発展的な解析も行う後編に向けて、内容の更新も行いました。過去に読んでくださった方もご一読いただければ幸いです。
麻雀のスタイルとは?
「そもそも麻雀のスタイルって何?麻雀には最適な選択があるんだから、スタイルなんてないんじゃない?」
と思われる方もいるかと思います。
正直、これは否定できません。
ですが、現状のネット麻雀やプロ対局において、さまざまなスタイルのプレイヤーがそれぞれ好成績を残していることも事実です。
本当に突き詰めていけば最適解となるような選択は各局面に存在するかもしれませんが、麻雀というゲームは選択の自由度が高いため、プレイヤーの癖や個性がスタッツに反映されると考えられます。
例として、鳳凰卓東南戦を2000戦以上プレイした1124人の、副露率と安定段位(ネット麻雀における長期的な成績指標)を見てみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1729154873-DEjUQYlAdI40xZ6GoqT1uWXH.png?width=1200)
副露率は麻雀の数ある指標の中でもっともプレイヤーの意思を反映して操作できる項目ですが、図を見る限り、副露率と安定段位の間に明確なパターンは見出せません。
極端に副露率が高い(40%〜)プレイヤーは好成績を出しづらい可能性がありますが、少なくとも副露率30〜40%では安定段位9以上の素晴らしい成績を出せそうです。
副露率が25%を下回っていても、かなりの好成績を残しているプレイヤーが存在し、これは麻雀における副露率の自由度の高さを表していると言えるでしょう。
上記の例は、麻雀におけるプレイスタイルの違いを、副露率の観点から示した例と言えます。
以下では、副露率を含む麻雀の各種スタッツを統計的に解析し、麻雀のプレイスタイルの違いを分類・可視化します。
データについて
今回開発者の許可を得た上、のどっちさんから、鳳凰卓東南戦を2000戦以上プレイしたプレイヤー1124人のスタッツを取得させていただきました。
今回は、その中でも特に好成績を残しているトッププレイヤーに限定して解析を行いました。目安として、2000戦以上で安定段位が8.5以上のプレイヤー64名のデータを使用しました。
解析に使用したスタッツは以下の11項目です。
・副露率
・アガリ率
・アガリ打点(すべてのアガリの平均打点)
・副露アガリ打点(副露アガリ時の平均打点)
・アガリ巡目
・放銃率
・放銃打点
・流局平得(流局した際の平均得点)
・リーチ率
・リーチ先制率
・平均ドラ(アガリ時の表ドラの平均翻数)
「和銃差(アガリ率 - 放銃率)」や「局収支」といった、上記の基礎的なスタッツから複合的に求められるスタッツは除外しました。
解析手法
スタイルの可視化には、主成分分析(Principal Component Analysis)と呼ばれる解析手法を使用しました。
主成分分析とは、簡単に言えば、多数の情報を少数の「要約」情報にまとめることができる技術です。
以下は主成分分析のイメージを掴むための説明です。
【主成分分析のザックリとしたイメージ】
いま変数が2つの場合として、プレイヤーの「アガリ率」と「アガリ打点」のデータがある場合を考えます。
これを図示するには、横軸に「アガリ率」を、縦軸に「アガリ打点」を取れば、プレイヤーのアガリ率とアガリ打点の情報が過不足なく示せるでしょう。
では、変数が3つ、プレイヤーの「アガリ率」と「アガリ打点」、そして「副露アガリ打点」の情報がある場合はどうでしょうか。
この情報を過不足なく伝えるには、3次元の図示が必要になります。
でも、3次元の図は見づらいです。なんとか2次元に落とし込めないでしょうか?
今もし、「アガリ打点」と「副露アガリ打点」の間に、極めて強い相関があればどうでしょうか?
この場合、「アガリ打点」と「副露アガリ打点」は、一つの「打点」という情報に要約してしまっても、それほど情報は失われないかもしれません。
「アガリ打点」と「副露アガリ打点」のデータから適切に「打点」という合成変数をつくることができれば、わずかな情報の損失だけで3次元の情報を2次元に圧縮して図示できることが分かるでしょう。
主成分分析では、これがN次元であっても、情報の損失が最も少なくなるように変数を組み合わせ、最終的に2次元に図示することができるわけです。
上記の3変数の例では、「アガリ打点」と「副露アガリ打点」の合成変数が「打点」であると説明しましたが、実際にはどの変数がどのように重み付けされるかはデータ次第であるため、合成変数(としての横軸と縦軸)の解釈は人間側で行う必要があります。
スタイル分析【結果】
結果の図を以下に示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1729162302-FnXUrSLTpCwcf062JbaDAl3k.png?width=1200)
若干見づらい部分もあるため、図のプロットと矢印を別離した図もそれぞれ置いておきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1729162979-nMBWXGZh6eINoHpSwxUdrE1t.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1729163052-MgpoNi541tZcaxJIzXf0S78Q.png?width=1200)
図の説明をします。
・64名の天鳳のトッププレイヤーについて、それぞれ11個のスタッツのデータがあり、これを2次元に圧縮して図示しました。完全な情報を図示するには、本来11次元が必要ですが、これを2次元に投影するにあたり、70.7%の情報が保持されました。
横軸が元データの情報の41.2%を、縦軸が29.5%(合計して70.7%)を保持しています。
主成分分析の慣例からして、70.7%は十分な情報量が保持されていると言えます。
・スタッツの矢印は、各スタッツが軸方向に及ぼしている影響の大きさを、矢印の方向と長さで示しています。
たとえば、図の左側に向いて、「副露率」の矢印が長く伸びています。これは「副露率」が横軸に大きく影響しており、逆に縦軸にはほとんど影響していないことを示します。
・スタッツの矢印が同じ方向を向いていることは、元データにおいてそれらのスタッツの正の相関が大きいことを示し、反対方向を向いていることは、負の相関が大きいことを示します。また、直角を向いていることは、それらが無相関に近いことを意味します。
たとえば、「アガリ打点」「副露アガリ打点」「平均ドラ」は元データに大きな正の相関があり、「アガリ打点」と「副露率」は大きな負の相関があります。また、「アガリ打点」と「放銃率」は無相関に近いです。
簡単に言うと、矢印の先にいるプレイヤーほどそのスタッツの数値が大きく、矢印の反対側にいるプレイヤーほどそのスタッツの数値が小さい傾向があるということです。
![](https://assets.st-note.com/img/1729162302-FnXUrSLTpCwcf062JbaDAl3k.png?width=1200)
例として、図の右側の「リツミサン」は、「副露率」の矢印の反対方向に、「アガリ打点」の矢印の先にプロットされています。これは、「リツミサン」は副露率が低く、アガリ打点が高い傾向にあることを示しています。すなわち、「リツミサン」が門前打点型プレイヤーであることを意味しています。
軸の解釈
横軸と縦軸の意味は何なの?と思われるかもしれません。
横軸と縦軸の値は、11の各種スタッツを適当に重みづけした値となります。
主成分分析では、この重み付けされた値(としての横軸および縦軸)の意味は、我々人間で解釈する必要があります。
横軸・縦軸がそれぞれのスタッツをどのように重みづけして構成されているかを示した図が以下になります。
![](https://assets.st-note.com/img/1729162491-lFSoeqDfCPwMO9YtRNua8L1U.png?width=1200)
左側の「Dim1」が横軸を、右側の「Dim2」が縦軸を示しています。
円の大きさおよび色の濃さが、各スタッツが軸を構成する影響の大きさを示しています。
横軸について
横軸を構成している主要なスタッツは「アガリ打点・副露アガリ打点・平均ドラ・副露率・アガリ率」あたりです。
よって、横軸は「打点か手数か」の情報を要約していると考えられます。
門前高打点プレイヤーほど図の右側に、副露手数派プレイヤーほど図の左側にプロットされると解釈できます。
縦軸について
縦軸を構成している主要なスタッツは「放銃率・リーチ率・流局時得点・アガリ率」あたりです。
よって、縦軸は「攻撃的か守備的か」を要約していると考えられます。
よくリーチを打ち、よく放銃するがその分よくアガる攻撃的なプレイヤーが図の上側に、リーチ率は低く、放銃率も低いがアガリ率も低い守備的なプレイヤーが図の下側にプロットされています。
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重要なこととして、主成分分析では、各スタッツからの合成変数として算出された横軸および縦軸の値は無相関になります。
つまり、横軸(打点↔手数)と縦軸(攻撃↔守備)はそれぞれ独立な2つのスタイルを示しているということです。
たとえば、「アガリ率」は横軸にも縦軸にも影響を及ぼしています。
この場合アガリ率は、「横軸スタイル:副露手数派」として上昇する傾向があるのとはまた独立に、「縦軸スタイル:攻撃型」としても上昇する傾向があることを示唆します。
結果として、「副露型かつ攻撃型」(図の左上)がもっともアガリ率が高くなるということを意味します。
スタイル分析【まとめ】
![](https://assets.st-note.com/img/1729162302-FnXUrSLTpCwcf062JbaDAl3k.png?width=1200)
ここまでの結果をまとめます。
図の横軸は「門前打点派(右)か副露手数派(左)か」を示しており、
図の縦軸は「攻撃型(上)か守備型(下)か」を示していると考えられます。
さらに重要なことに、横軸と縦軸は独立した指標であるため、「副露攻撃型(左上)」「副露守備型(左下)」「門前守備型(右下)」「門前攻撃型(右上)」のどれもが、スタイルとして採用できるということを意味します。
以下では、その4スタイルについて、簡単に考察します。
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図の左上領域:副露攻撃型
アガリ率も放銃率も最も高くなる、全局参加型。流局時も聴牌していることが多いです。
アガリ打点やアガリ巡目などは平均的ですが、これはとにかく手数が多く、低打点から高打点まであらゆるアガリを拾ってくる結果、平均的な数値に収まっていると考えらえれます。
属する天鳳位:藤井聡太(渡辺太)、独歩(山田独歩)、いばらぎ(茨城啓太)
図の左下領域:副露守備型
副露守備型というとピンと来づらいかもしれないが、つまりは守備意識高めの躱し手多用タイプです。
アガリ巡目が最も早いがアガリ打点も最も小さい、早期決着タイプとも言えます。リーチ率が低い分、先制リーチ率は高く、自信のないリーチや追っかけリーチをあまり打たないと思われます。
早期決着とすることで他家のアガリを発生させない、「攻撃は最大の防御」を地で行くスタイルかもしれません。
属する天鳳位:COEDO緑(私)
図の右下領域:門前守備型
アガリ率も放銃率も副露率も極めて低い、言わば地蔵タイプです。
流局時もノーテンであることが多く、局の終盤にリスクを負わない戦術を採用していると考えられます。
門前型であり、打点意識は高めです。
属する天鳳位:すずめクレイジー(石川遼)、火時計を押せ!
図の右上領域:門前攻撃型
門前で手を作ってリーチをぶつけてくる、打点意識高めの戦闘民族です。
門前型かつリーチ多用タイプなので、必然的にアガリ巡目が深くなる後期決着型です。ガンガン手をぶつけていくが故に後手からのアガリも拾えるとも言えます。
放銃率は高めですが、毎回リターンの大きい手で押し返してくるイメージですね。
属する天鳳位:お知らせ、じょにおん!!
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「トトリ先生19歳(朝倉康心)」「コーラ下さい」は、副露攻撃と副露守備の間に位置しており、攻守のバランスが中庸程度の副露型であると考えられます。
「おかもと・右折するひつじ(岡本壮平)」は、打点傾向は中庸程度の守備型であると読み取れます。
「タケオしゃん」は、図の中心に近く、図中の天鳳位の中では最もバランスタイプに近いと考えられます。
前編に当たる本記事は、ここまでです。
本記事では、主成分分析を用いることにより、
・副露攻撃型
・副露守備型
・門前守備型
・門前攻撃型
の4分類が統計的に正しい麻雀のスタイル分類であることが分かりました。
ごく一部のトッププレイヤーにおいても、さまざまなスタイルがあるのが分かったのは興味深いことでした。
自身がどのスタイルに該当しそうかを考え、比較的スタイルが近いと思われるプレイヤーの牌譜を参照することは、麻雀上達のための近道となるかもしれません。
あるいは反対に、正反対と思われるスタイルのプレイヤーを参照して勉強すれば、新たな戦術の引き出しが見つかるかもしれません。
後半となる次回記事では、それぞれのスタイルが安定段位や着順といった成績や局収支などの重要指標とどのように関係しているのかを、統計的に分析します。
本記事が読者の麻雀に対する理解を深める一助となれば幸いです。
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