テクノロジーで学びを変える!学校現場で子供たちの協働学習を実現するコードタクトの創業ストーリー
公教育に向けた授業支援クラウド「スクールタクト」、そして企業に向けたリフレクション・マネジメントシステム「チームタクト」の2つのプロダクトを軸に事業展開するコードタクトは、2025年に創業10周年を迎えます。コロナ禍など時勢の追い風も受けながら、教育や企業研修の場で着実に協働学習の機会を広げてきたコードタクト。
今回は創業メンバ−3名と共に、教育者や子供たちからフィードバックを受けながら成長してきたこれまでの道のりを辿ります。
協働学習支援クラウド「スクールタクト」が
教育実証事業に採択されたのがコードタクトの出発点
コードタクトの創業は2015年1月。創業時からのメインプロダクトである授業支援クラウド「スクールタクト」は、国公私立問わず、全国2,500校以上、100万ID以上の導入・利用実績があります(2024年9月現在)。
その前身は、CEOの後藤正樹が個人開発し、いくつかの教育機関で試験的に使用されていたプロダクトでした。
後藤が予備校講師や高校での非常勤講師といった教育現場での経験を経て、教員が子供たちの学習状況をリアルタイムで把握できるようにできないか、と発想して開発。当初は「realtime-LMS(※)」と名付けられ、このプロダクトをもって、後藤は2010年度の情報処理推進機構(IPA)の「IT人材発掘・育成事業」において、「未踏スーパークリエータ」に認定されました。その後、realtime-LMSは「スクールタクト」へと進化しました。
リリース当初は後藤個人のSNSを通じて発信。興味をもった教育関係者に無料で使ってもらってフィードバックを受け、さらなる開発につなげていきました。地道な作戦ではありましたが、教育DXに先進的な思いをもった教育関係者がスクールタクトに注目を寄せ、利用者は広がっていきました。
なかでも、スクールタクトリリース直後にコンタクトをとってきた、ある小学校長。この人物が、コードタクト創業のきっかけとなったのです。
後藤「公立小学校の校長でありながら、独自で校内にWi-Fiを入れ、民間企業に働きかけてタブレット端末を1人1台用意し、小学校にデジタル教育を導入していました。国が1人1台デジタル端末を配る『GIGAスクール構想』を始めたのは2020年ですが、それよりも10年近く前のことです。この方がスクールタクトを評価してくださり、国の実証実験に参加してはどうか、と紹介してくださったんです」
こうしてスクールタクトは、総務省と文部科学省が進める「先導的教育システム実証事業」に採択され、これに伴って法人「コードタクト」がスタート。教育現場で、最先端のデジタル教材を低コストで導入・運用可能な「教育クラウド・プラットフォーム」の実証に参加することになりました。
創業メンバーは全員エンジニア!
基幹プロダクト「スクールタクト」で着実に事業成長
コードタクトの創業メンバーは、後藤を含めて3名。全員がエンジニアで、創業前からフリーランス的にともに仕事をしてきた仲間です。
現CTOでもある石田智也は、高校在学中よりプログラミングを始め、3年時にU-20プログラミング・コンテスト最優秀賞を受賞。大学卒業後にフリーで沖縄にいた石田に、後藤が会いにいったことで縁がつながりました。
後藤「沖縄にすごいエンジニアがいると聞いて、2013年2月、知り合いのつてをたどって会いに行きました。一緒に働こう、と誘ったら受けてくれて。それ以来一緒にやっています」
石田「僕はそのとき、Geek House Okinawaという、プログラマが集まるシェアハウスに住んでいて。そこに後藤さんが来て、スクールタクトの原型である『realtime-LMS』をつくるから手伝ってほしいというので承諾しました。ちょうどやることが決まっていなかった時期でしたし、未踏スーパークリエータのこの人なら面白いプロダクトをつくるんじゃないかな、という思いもありました」
もう一人の創業メンバー、吉野白竜はもともと法人営業職に就いていたのを、後藤と石田の教えのもとエンジニアへと転身した人物。
後藤「吉野さんは、私がCTOを務めていた前職のエドテック企業で法人営業をしてたんです。ひょんなことから、業務上で吉野さんがプログラミングを学ぶことになったんですが、最初は僕が教えることになって、そのまま一緒に仕事もするようになって。石田さんも吉野さんも、気兼ねなく本音を言い合える関係で一緒に仕事をしやすい仲間、という感覚です」
吉野「それまでやっていた法人営業という職種を極めていきたいという志向はなく、仕事の中身を大きく変えたいと考えていたところだったんです。そのタイミングで、未踏スーパークリエータと天才エンジニアに教えてもらえるという得難いチャンスが訪れました。
後藤さんはすごく面倒見がよくて、僕が知らなかった世界のことを積極的に伝えようとしてくれました。そういうところを尊敬していましたし、そういう人が会社をいちからつくると聞いて、そんな経験に巡りあえることは今後ないだろうなという気持ちで飛び込むことにしました」
創業期のスタートアップベンダーが往々にして苦労するのは、なんといっても資金繰り。しかしコードタクトの場合はすでにスクールタクトというプロダクトがあり、しかも総務省の事業に採択されていたことから、年間ある程度の収入がある状態でスタートを切ることができました。
また、ほかにもソフトバンクやClassiなど、いくつか大型の業務提携・代理店契約が早くに結べていたことから、安定した財務状況で、創業以来、増収増益赤字なしで経営することができています。
教育事業の強化、そして生涯学習へと領域を拡大
総務省・文科省の実証事業参加をきっかけに創業したコードタクト。実証事業はコードタクトにとって、いくつかの事業展開を迎える契機となりました。
事業の実施中にはプロジェクトマネージャーからの依頼を受け、複数のウェブサービスをシングルサインオンで利用できるプラットフォームを開発。
これが、現在もNTTコミュニケーションズ(NTT Com)と共同開発をしている「まなびポケット」の原型となりました。また2020年1月には、コードタクトはNTT Comの連結子会社となりました。
後藤「GIGAスクール構想が始まり、1人1台端末導入など教育DXが加速しはじめたタイミング。事業の成長もよりスピード感が求められる中で、実証事業以来、長く信頼関係を培ってきたNTT Comとしっかり組むことにしました。
NTT Comは、ICTやデータを活用して社会課題を解決する『Smart World』というコンセプトを打ち出しており、その柱の一つとして『スマートエデュケーション』を掲げています。その強化のためにコードタクトとの連携を強めたいという意思があったんです。
一方私たちコードタクトとしては、開発力には自信があるものの、エンジニアが立ち上げた会社というのもあり、どうしても営業、マーケティングなどビジネスサイドの整備に苦労する面がありました。NTT Comと組むことで、そこが補完されるメリットは大きかったです」
時を同じくして、2019年から20年にかけてコロナ禍に。学校教育のデジタル化は否応なく加速することになります。この大きな変化のタイミングでNTT Comの子会社として、スクールタクトが学校教育に貢献する機会をより広く得ることができました。
また、NTT Comの依頼により、スクールタクトを応用して新入社員研究をオンラインで行うシステムを開発。これは企業向けリフレクション・マネジメントシステム「チームタクト」としてリリースされました。
後藤「私たちは、公教育の場で子供たちの学びを支援することに注力してきました。このころからは、子供たちだけでなく、大人になってからの学びもサポートできる可能性が見えてきたんです。
スクールタクトはまだまだこれから機能を拡充して進化していく必要がありますが、その先には、生涯学習というテーマにも目線を拡げて追い求めていきたいと考えています」
協働学習で子供たちの自己決定性を育み、学びの革新を
『学び』を革新し、誰もが自由に生きる世界を創る」をミッションに掲げるコードタクト。固定化された「勉強」の概念を解体し、子供も大人も主体的に学ぶことができる世界を目指し、それを支援するプロダクト開発に取り組んでいます。
後藤「これまでの学校教育では、一斉授業を代表とする、先生が知識を教えるような先生主体の学び方が行われてきました。スクールタクトも最初の最初は、先生が生徒の学習の進度をリアルタイムで把握できるようにしたい、という構想で開発したんです。
でも実際に教育現場で使ってみて評価が高かったのは、子供たち同士がお互いの答えを見て学び合うことができる点でした。ここにヒントを得て、スクールタクトは協働学習に舵を切りました。
例えば初めての海外旅行でタクシーを止めるとき、周りの見よう見まねでやってみるように、人間は、自分を取り巻く環境から主体的に学び取ることができます。先生から生徒への片方向ではなく、双方向、あるいは生徒同士の横のつながりのコミュニケーションの中で、みずから問題解決を選び取っていく。この過程で自己決定する力が育まれていきます。それが、子供たちが大人になって社会に出てからも、本当に必要とされる能力なのではないでしょうか。
今の教育現場では、協働学習や主体的な学びは間違いなく重要視されてきています。ただ、先生自身も片方向の「教える」教育を受けてきたわけで、どうやって進めていいのかわからない、というケースも少なくない。私たちはスクールタクトというプロダクトを通じて、新しい学びのありかたを支援し、『学びの革新』を実践していきます」
コードタクトについては、こちらをぜひご覧ください!