アーバンデータチャレンジ2024徳島拠点イベント参加レポート
アーバンデータチャレンジは、公共データとテクノロジーを使って、地域の問題を解決するプロジェクトです。徳島も拠点として参加することで、地域の住民、学生、社会人、エンジニアなどが集まり、知識とアイデアを共有し、具体的な解決策を生み出すことができると考え、スタートを切りました。
アーバンデータチャレンジとは?
地域課題の解決を目的に、地方自治体を中心とする公共データを活用したコミュニティづくりと作品コンテストの2つのパートで構成されています。2014-2018年の5年間、「地域拠点」として各都道府県で活動の核となる場を作り、地理空間情報の流通や利活用を促進してきました。また、毎年広く募集を行い、地域課題解決に資する優良な作品を表彰する取組を行っています。
https://www.youtube.com/watch?v=XNT6XHUeI4s
私たち、徳島拠点のこのチャレンジは、”データを活用して地域の課題を「見える化」”し、それに基づいて新しい解決策を考ます。8月7日のインプットセッションで地域課題とデータ活用の可能性について学びました。今回は、イベントレポートです。イベントの中心となったライトニングトークでは、各分野の専門家が5つのテーマと専門領域における課題とアーバンデータへの期待についてお話しいただいたのち、それぞれのテーブルで参加者と対話をしました。
次のステップはアイデアソン(10月)で解決策を考え、ハッカソン(11月)を予定しています。
今回参加が叶わなかった人にもレポートを読んでくれたらうれしいです。
高齢者の孤立と終活支援:NPO法人アライブ・ラボ 岡理事長
現代社会で増加している孤独死や孤立死という深刻な社会問題
特に一人暮らしの高齢者が地域との繋がりを失い、孤立することがこれらの問題を悪化させていると強調しました。「人と関わることが少なくなった高齢者は、やがて支援が必要な状態になっても、その助けを求めるすべを失ってしまう」という言葉は、多くの参加者に深い印象を与えました。
岡さんのNPO法人アライブ・ラボでは、孤立の解消を目的に、様々な取り組みが進められています。代表的な活動として、多世代交流イベント「スナック雑談」が定期的に開催されており、地域の人々が集まって気軽に交流し合う場を提供しています。
ここでは、若者からお年寄りまで、さまざまな世代が自由に集い、日常的な会話を楽しみながら、お互いの存在を確認し合うことができます。これにより、高齢者が孤立することなく、社会と繋がりを持ち続けることが可能になっているのです。
岡さんは、このようなイベントだけでなく、データを活用した孤立リスクの早期発見と支援の仕組みにも大きな期待を寄せています。「データを活用すれば、地域全体で孤立のリスクを早期に察知し、効果的に支援を提供できる体制を整えることが可能になります」
例えば、アーバンデータを活用することで、独居高齢者の生活パターンや健康データをモニタリングし、異常な変化を検知することができます。これにより、地域住民や福祉団体が早期に介入し、孤立が深刻化する前に必要な支援を行うことが可能になります。
さらに、データの可視化を通じて、地域社会全体で高齢者の見守りが強化され、社会的孤立を未然に防ぐことが期待されます。
岡理事長は、「孤立死を未然に防ぐためには、データとコミュニティの力を組み合わせた支援体制が不可欠です」と語り、地域のデータを集積・分析することで、個別ニーズに対応した支援が提供できるようになることを目指しています。
データを活用した地域連携が実現すれば、高齢者の孤立を防ぐだけでなく、全世代にとって住みやすい地域社会を作り上げることができると岡さんは確信しています。アライブ・ラボの活動は、地域の絆を強化し、支え合いの輪を広げることで、持続可能な地域社会を目指しています。
雑談がきっかけでジャズストリート(音楽イベント)にデビューしたお話。
地域コミュニティと子育て支援:公益財団法人勤労者福祉ネットワーク 石堂常務理事
地域の子育て支援における現状の課題と、その解決策としての地域コミュニティの強化
ファミリーサポートセンターの役割とその重要性です。このセンターは、地域内で子育てに悩む親たちを支え、子育てを通じた住民同士の交流を促進するための拠点として機能しています。
石堂常務理事によれば、地域全体で子育てを支える仕組みが整っていれば、親たちが抱える不安や負担は大きく軽減され、親が安心して働ける環境が生まれます。
たとえば、仕事と家庭の両立に悩む親が、急な用事や体調不良で子どもを預ける必要がある際、ファミリーサポートセンターが柔軟なサポート体制を提供することで、親が孤立せず、安心して日常生活を送れるというメリットがあるのです。
このような支援は、親自身の安心感だけでなく、地域全体の結束にも寄与します。子育てという共通の課題を共有することで、住民同士が自然と協力し合い、地域コミュニティの強化に繋がっていると石堂さんは語りました。こうしたコミュニティのつながりは、地域全体の生活の質を向上させ、子どもたちも多様な大人と接する機会が増えることで、健全な成長に繋がるというのです。
さらに、石堂さんはアーバンデータの活用が、これまで以上に子育て支援ネットワークを強化するための有効なツールになる可能性についても触れました。
例えば、親たちが直面する子育てのニーズや支援の種類をデータ化し、それを分析することで、地域内でどのような支援が必要とされているかを可視化することが可能です。このデータをもとに、子育て支援リソースが最も必要な場所や時間帯に的確に配置され、支援者のリソースも無駄なく活用されることが期待されます。
石堂さんは、「このようなデータを活用すれば、支援が必要な親が迅速に適切なサポートを受けられるようになるだけでなく、地域全体での効率的なリソース管理も実現できます」と述べ、アーバンデータを使ったスマートな支援システムの構築に大きな期待を寄せました。
また、今後の展望として、子育て支援ネットワークのデジタル化が進む中で、親たちがスマートフォンやパソコンを通じて簡単に支援者とつながることができるようになる仕組みが検討されています。これにより、例えば緊急時には迅速にサポートが得られるようになるだけでなく、親たちが孤立せず、地域全体のサポートを実感しながら子育てを行うことができるようになります。
石堂常務理事は、「地域が一丸となって子育てを支えることが、親の負担軽減と安心感向上に直結します。これにより、地域全体の住みやすさも大きく向上するでしょう」と締めくくり、子育て支援の未来像を描きました。
防災減災のデータ活用:徳島大学 上月先生(録画)
現代の防災と減災におけるデータ活用の重要性
自然災害の頻発する日本において、データの力を最大限に活用することで災害リスクを大幅に低減できる可能性があります。
特に、地震、台風、大雨、洪水といったさまざまな災害が予測される地域において、データ駆動型の防災対策が急務です。
上月先生は、これまでの防災対策が「過去のデータ」に基づいて行われることが多かった一方で、近年の技術進化により、今ではリアルタイムで災害リスクを監視・分析することが可能になっていると説明。
「地域住民がリアルタイムで災害リスクを把握し、迅速に行動できるシステムが構築されれば、住民の安全をより確実に守ることができるでしょう」
このシステムの一例として、リアルタイムマップの作成が挙げられました。例えば、地域の地震データや降雨量、河川の水位情報をリアルタイムで収集し、それを即時に可視化することで、住民が自宅にいながらも地域のリスク状況を即座に把握できるようになります。このようなマップは、スマートフォンやPCで簡単にアクセスでき、住民がどのルートで避難すべきか、どの避難所が利用可能かなどを瞬時に判断できるため、災害時の迅速な対応が可能になります。
さらに、予測データの精度向上が防災において非常に重要であると指摘しました。これまでの災害予測は、過去のデータに基づいて作成されることが一般的でしたが、アーバンデータを活用することで、現在進行中の気象データや地震データ、その他の関連データを瞬時に分析し、より精度の高い予測が可能になります。これにより、早期警報システムの信頼性が向上し、避難指示のタイミングも最適化され、被害を最小限に抑えることが期待されます。
「防災減災においては、データの力がすでに私たちの日常生活に大きな影響を与えています。しかし、さらなる進展が求められます。アーバンデータを駆使して、個々の住民が迅速かつ適切に行動できるシステムの整備が、今後の防災対策の核心となるでしょう」
また、データの力は行政や自治体だけでなく、地域住民にも大きな恩恵をもたらすと強調しました。例えば、住民が自らのスマートフォンで災害情報を受信し、リスクを確認することで、個々の判断で避難や防災行動を取ることができるようになります。このように、住民参加型の防災システムが実現すれば、地域全体の防災能力が格段に向上することが期待されます。
上月先生の提言は、アーバンデータを駆使した未来型の防災体制のビジョンを示すものであり、今後の地域防災におけるデータの役割がますます重要になることを改めて認識できました。
地域の安全と安心:徳島県警察本部 多田刑事部長
多田刑事部長は、徳島県警察が取り組んでいる犯罪予防や交通事故防止に関する地理的情報提供の現状を紹介しました。地域の安全安心を守るために警察が提供している犯罪発生データや交通事故情報を住民がどのよう活用すれば良いか問題提起。
犯罪発生や不審者情報データの提供が地域の防犯力を高めるために重要
地域住民が、犯罪や不審者が多発する地域や時間帯を把握することで、より意識的に個人や家庭単位又は地域・職域で安全対策を講じることができます。県警では、地域ごとの犯罪や不審者情報の地理的情報をマップ形式でホームページ上で提供しています。
また、このマップは、徳島安全安心アプリ「スマートポリス」でも提供しています。
徳島安全安心アプリ「スマートポリス」
交通事故防止にも地理的情報が大きく貢献
県警では同様に交通事故発生状況の地理的情報もホームページと「スマートポリス」上で提供しています。
地域住民が、ご自分の行動範囲における交通事故実態をマップ上で正確に把握することにより、交通事故のリスクを低減し、安心して生活できる環境が整えられることが期待されています。
犯罪予防や交通事故防止は、警察や自治体による「公助」の取組は当然ながら、個人や家族単位で自らを護る「自助」、そして地域や職域単位で取り組む「共助」が不可欠です。住民と警察が協力関係を維持しながら、住民一人ひとりが防犯や交通安全意識を高め、積極的に行動することが求められます。
また万が一身近で犯罪や交通事故などを目撃した際には速やかに警察に通報いただくこともまた重要です。犯罪や交通事故を迅速に処理し安心安全を確保するとともにその情報を地理的情報として蓄積し、次の予防策や対策に反映させることができるのです。
問題は地域住民が合目的的にどのようにこれらアーバンデータを活用するか
「アーバンデータをいかに活用するかは自助・共助のニーズによって異なりますが、地域住民がニーズに合わせ創意工夫して積極的に活用していただければ地域の犯罪や交通事故の予防策がさらに強化されるでしょう」
住民参加型の安全安心な街づくりが重要であることを強調しました。
アーバンデータを活用することで、住民が安心して暮らせる環境が整う未来が期待されます。
都市計画と空き家問題:徳島大学 小川先生
小川先生の発表では、徳島市を中心に進行中の空き家問題に対する新たなアプローチが紹介されました。人口減少や都市の過疎化が進む中で、空き家の増加が深刻な問題となっていることは、地方都市に共通する課題です。小川先生は、この問題を解決するために、データを活用した都市計画が重要な役割を果たすと指摘しました。
空き家問題がなぜ解決されにくいのか
空き家は所有者が不明であったり、老朽化が進んでいるために修繕や解体が難しかったり、再利用のための手続きが煩雑だったりすることが多いです。こうした空き家は地域の景観を損なうだけでなく、防災面でもリスクを増大させ、地域全体の価値を低下させる要因になっています。
小川先生が提案したのは、空き家データの収集と共有による効率的な解決策です。まず、各自治体が保有するデータや住民からの報告を基に、地域内の空き家を一元的に把握します。
具体的には、空き家の位置、建物の状態、所有者の情報などをデータベース化し、それをリアルタイムで更新することで、空き家の現状を正確に把握することが可能になります。
また、こうしたデータベースを元にして、地域住民や民間企業、自治体が協力し合い、空き家の再利用を促進する仕組みを構築します。例えば、データを使って老朽化が進んでいる空き家を優先的に解体し、新たな土地利用を計画したり、リノベーションによる再活用の機会を提供することが考えられます。また、空き家を地域資源として再利用するために、賃貸住宅やコミュニティスペース、スタートアップ企業のオフィスなどに改装するプロジェクトも進められています。
小川先生は、「データを活用すれば、空き家の再利用を促進し、持続可能な都市計画を実現することができます」と述べ、データ駆動型のアプローチが都市の再生にどれだけ効果的かを強調しました。
特に、空き家を単に解体するだけではなく、新たな都市開発の資源として活用するという視点が、今後の都市計画において重要な役割を果たすと考えています。
空き家データの共有は、コミュニティの活性化にも繋がる可能性
地域住民や企業が、空き家情報をもとに、地域の活性化プロジェクトに参加する機会が増え、空き家が新しい活動の拠点となることが期待されます。例えば、アートスペースや地域交流センターとして空き家を利用することで、地域の人々が集まる場所を提供し、コミュニティの結束を強化することができます。
アーバンデータの役割への期待は?
空き家問題は、個別の所有者だけでなく、地域全体の問題として捉えるべきであり、データを活用することで、地域資源の再活用がより効果的に行われると考えています。さらに、データによる分析を通じて、将来的な人口動態や地域のニーズに合わせた都市計画が可能になり、持続可能な都市開発が実現することを目指しています。
「空き家データの共有と再利用は、地域社会にとっての新しいチャンスです。データを使って、私たちの住む町を再生させ、次世代に誇れる地域を築いていきましょう」
データを基盤にした都市計画の未来に大きな期待を示しました。この取り組みが成功すれば、空き家問題は負の遺産ではなく、地域を活性化させるための重要な資源となることに期待したいです。
スマートシティとデータ活用:徳島県庁 後藤田さん
徳島県が進めるスマートシティ化の取り組みについて
行政データや民間データを統合して、地域課題を効率的に解決する基盤を構築することが重要であり、これがスマートシティの発展に繋がると述べました。また、住民がデータを積極的に活用し、地域の問題解決に参加する住民参加型のスマートシティモデルも推進しており、これによって地域全体が協力し、持続可能な発展が実現すると期待しています。
後藤田さんは、データ活用と住民の参加が、徳島のスマートシティ化を支える鍵となることを強調しました。
参加者の感想
イベント終了後、参加者からは多くの前向きな感想が寄せられました。
Oさん(経営者):「死という重たいテーマについて真剣に考える機会をいただき、感謝しています。データが地域支援に役立つことを実感しました。」
Kさん(経営者):「学生との対話が新鮮で、発想力に驚かされました。発信方法についても多くの学びを得られました。」
Kさん(大学生):「普段接点のない人々と課題について話し合い、非常に有意義な時間でした。次回はさらにディスカッションの時間が増えると良いと思います。」
次回の予定
次回のアーバンデータチャレンジ2024徳島拠点イベントは、2024年10月に開催予定です。さらに多様な課題に取り組み、データを活用した地域課題解決を目指します。(日時場所が決まったら広報します!)
イベント参加者からのフィードバックや要望を受けて、次回のイベントの改善したいこともあり、楽しみです。いっぱい話しましょう!
次回のイベントも、ぜひご参加ください!
(文責:Code for Tokushima 清瀬由圭)
https://www.facebook.com/codefortokushima