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鶴亀杯【短歌】審査員賞「あなたの短歌にちむどんどん」

鶴亀杯で 主に短歌のマガジン追加を担当させていただいた者です。
誠に僭越ながら「審査員賞(てまり賞)」として10首選ばせていただきました。
題して 

あなたの短歌にちむどんどん


こちらから選ばせていただきました。




いつだって繋がれるから疲れてて首輪外せぬ飼い犬のよう

「SNS疲れ」という言葉なども想起されて やめたいと思ってもなかなかやめられない 犬の首輪のような ネット社会に飼われている気分というものを端的に表現されているなと思いました。



傷付くの怖くて怖くて身を守る自分は傷付けてるの気付かず

人は 自分が傷つけられることには敏感ですが 自分が誰かを傷つけているかもしれないと思いを致すのは なかなか難しい。そんな気づきをいただいた歌です。



お別れが死後硬直する熱帯夜静かに静かに泣く父を抱く

大切な人を喪って 静かに静かに泣いている父の肩をそっと抱く。せつないです。泣きそうになります。「お別れが死後硬直する」の表現が秀逸。お母さまを送る火葬場での歌も胸を打ちました。



はずされたえんどう豆の青いすじ唐草模様を流しに描く

料理の下ごしらえでしょうか。何気ない日常の描写。いざ詠もうとすると なかなか難しいものです。日々の暮らしを丁寧に過ごされている作者の眼差しが伝わる短歌です。



八十を二つさば読む母の手に一時外した結婚指輪

もう歳だから、と結婚指輪を外していた母。長く連れ添った夫を亡くし、葬列の席ではめられているのに気づく息子。母の、父への愛情の深さと妻としての矜持に気づくのです。



豊かなる穀倉地帯焼き尽くし裸の王の何をかは得る

きっと 裸の王は何も得られはしません。むなしいです。焼き尽くされた穀倉地帯が 再び豊かな実りを生むことはあるのでしょうか。戦争ごっこをしながら育つ子どもの生い立ちの歌も秀逸でした。



自転車の足を伸ばして風になる広がる海の彼方へ跳ぶよ

海へと続く長い下り坂。両足を広げ 加速する自転車で 海の彼方へダイビングするように 坂道を走り抜ける爽快感 たまりません。

香川県豊島の「海へ飛び込む道」




駅方面とだけ書かれた矢印が指す夏の大三角形

とても不思議な歌です。宮崎駿のアニメーションを思わせるようなファンタジーを感じます。仰臥するセミの歌にもはっとさせられました。



さいばしを入れると泡が上がります熱波の街で鳴くアブラゼミ

熱波の街を 揚げ物をする鍋に見立てられたとのこと。面白い。さいばしを入れて 泡の上がり具合で油の温度を確かめて。「アブラゼミ」が 一種の言葉遊びとしてとても効いてるな と思いました。



完熟のトマト幾つも押しつぶすようにそうして描く太陽

真っ赤な完熟トマトを押しつぶすように描かれる太陽。つぶされた割れ目からはみ出す果肉 滴る果汁  塗られた油彩の絵の具の厚みまで目に見えるようです。



以上です。



上記の10首以外にも 切ない恋心を詠んだ歌 文語を駆使したたおやかな歌 力強い益荒男ぶりな歌などなど バラエティーに富んだ応募作品の数々でした。
このような機会を与えていただき    感謝の気持ちでいっぱいです。

あなたの短歌にちむどんどん


いやぁ、短歌って、ホントいいものですね✨️

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