塀の向こう側
実は私には、今現在服役中の親族がいる。
刑が確定するのに1年以上かかり、先日受刑者となったその人に久々に面会してきた。
面会時間は30分と決められている。
ただ、顔を突き合わせて30分というのは割と長い。
部屋の隅には刑務官が座っているのでちょっとした緊張感は30分フルで感じる。
健康状態をひと通り確認してからの話題は大体ノープランだ。
4割くらいは私の近況報告になるのがパターンだ。
刑が確定するまでは拘置所に収容されていたが、刑が確定してからは刑務所へと移送になった。
拘置所と刑務所では、やはり違うらしい。
その環境の変化からなのか塀の中での暮らしが長くなってきたからなのか、今回のその人の言動に変化があったように感じた。
元々、家庭環境がよろしくなくその影響が大きくて今の状況にあると私は感じていた。
その人自身がどう感じているかは分からないが、家庭のせいにしたりということはなかった。
それでもその罪となったことに対しては向き合えてない気がしていた。
受刑者になるまでは。
自分を正当化する言動が多かったが今回はそれがなかった。
そこを出たら再犯してしまうのではないかと、いつも感じていた。
だけど今回の面会ではその片鱗は顔を出さなかった。
ここを出たらご飯をお腹いっぱい食べたい。
ここを出たら釣りがしたい。
それだけでいい、と。
刑務所はツラくないか尋ねると、慣れればそんなこともない。
かえって外の世界で生きてる方がツラいかもしれないと。
ここは完全に閉鎖的で自由のない場所だけど、外で自由のある世界で暮らしてる人の方がいろんなことに縛られていることもあると。
その通り過ぎて笑ってしまった。
食べたいものを食べれるし、行きたいところもいける。
会いたい人にも会えるし、やりたいこともやれる。
それをできないと思っているのは割と見えないもので自分を縛り付けているからだったりする。
胸が痛い。
耳が痛い。
本当にそうだ。
そこにいる人に言われるとものすごく説得力大。
それと同時に嬉しくも感じた。
そういうことに気づけたのだなと。
人生でどんな失敗をしたとしても、どんなに迷惑をかけたとしても、自分と向き合う機会を掴むことができれば人はいつでもどこでも成長することができるんだなと教えてもらいました。
勇気をもらえた。
そして私はこんなふうに人と関わっていきたいと思った。
何かしてあげなくてもいい。
目の前の人としっかり向き合える人でいたい。