阿波踊り大会の課題をIoTで解決する①
このお話は、「自分たちができるもの、身に着けながら実現できること」を実践しながら、地域課題を1つずつ解決し、ステップアップしていくお話の前編、いわば仕掛け編です。結果は、実際に本番を迎えてから書きたいと思います。
1.チーム「Code for Susono」
Code for Susono は、静岡県裾野市を拠点に活動する団体です。
「みんなで楽しく、データや技術をつかって地域の課題を解決したいね」という感じで活動してます。
それはそうと・・・裾野市をご存じですか?富士山の麓にある市で、近くには「富士サファリパーク」とか「ぐりんぱ」がある、といえばピンとくる方もおおいことでしょう。
2.地域課題「たどりつけない阿波踊り」とは?
実は裾野市でも毎年阿波踊り大会が行われています。今年で36回目になります。この大会を終えると、秋がやってくる、という感じの名物行事です。
大会には20近くの連が参加します。もちろん、四国からも来られます。そして、連の1つに「にわか連」があります。
にわか連は、お祭りにきた参加者が、踊りに参加できる「自由参加枠」の連です。地域の人もさることながら、県外から来た方も参加するという、「楽しむための枠」です。
実は、2018年(35回)のお祭りには、阿波踊りのために東京から参加を目指したお客さんがいました。しかし、「どこにいるか分からないから、参加できないよ」と連絡がきたのでした。
確かに、連とお客さんが入り組んでいますから、初見で見つけるのはかなり至難の業ともいえます。
これが「たどりつけない阿波踊り」と呼ばれる課題です。
3.Open Street Map との出会い
Code for Susonoでは、4月にOpen Street Map や uMAPを学んでいました。これはオープンデータの地図をつくれるというものです。
作った地図の上には、uMAPをつかってマーカーを置くことができます。
こういう技術って学ぶのは楽しいんですが、実はそれだけでは続きません。それは、「それらを使って何を解決するのか(達成するのか)」という目標が必要だからです。
それこそ、地図をつくるのが趣味になれば別ですが、たいていの人はそこまでつづきません。
そこにこの課題が結びつきます。「そうだ、自分たちがつくった地図に、にわか連の場所が表示されれば、地図を作る意味も、課題も解決できる!」
(実は、そのあとにもつながるプロジェクトがあって、その前段階としてこのプロジェクトをやることになりました)
4.位置情報をどうやってとるか?
ここで問題になるのは、位置情報。携帯電話でとるのもいいんだけど、電池が切れて電話ができないのも嫌な人はおおいだろうし、もうちょっと面白い道具がないかな?と思ったときに、そういえば・・・
そうだ、こういう道具があったよね!こういうのをうまく使えないだろうか?
最近メイカー(回路やモノを自作するひと)集団で何かと話題になっている端末「M5Stack(エムファイブスタック、エムゴスタック、エムウースタック…呼び方色々。)」
これにいろんな部品をくっつけていけば、やりたいことを実現できるのでは?ということで、部品を探すことにしました。
5.部品を吟味する
M5Stackには、いろんな入出力パーツを組み合わせられるように、部品が売られています。その中には、GPSモジュールがあったり通信部品があったりします。
Arduinoシリーズなら、シールドと呼ばれる拡張ボードがあり、わたしもいままでは、さくらインターネットのLTEボードを使っていました。
このボード、送信も早く、通信費も安く、ライブラリもシンプルなので、割と使いやすくて好きなんですが、サイズが少し大きくて、M5Stackとの組み合わせだと、サイズが全然合いません。
しかーし!先日、SORACOMから3G通信モジュールも発売されていたりして!これを使えばぴったり収まるし、サイズも小さいし・・・これはM5Stackと使うしかないなーと、運命的なものを感じながら、用意することにしました。
6.内部スタッフの方に助けていただき…
さて、この部品をつかうにも、ノウハウが足りず、サンプルをちょっと書き換えてもうまくいかないなぁ、と思っていたところ、ひょんなところから声をかけていただくのでした。
松下さんは、ソラコムのテクノロジー・エバンジェリストという肩書をお持ちの方で、いわゆる「ソラコム伝道師」ですね。
暗号化通信(SSL/TLS)の対応方法とか、いろいろアドバイスをいただきながら、位置マーカーをつくることにしました。
このマーカは、20秒ごとに、サーバに位置情報をおくります。サーバは、そのデータからGeoJSONをつくる、といった感じの連携が取れるように作りました。
なんかあったときのために、らびやんランチャーでアプリ切り替えもできるようにつくってあります。
7.地図側の対応
位置をとることができたとして、それを表示できなければ、あまり意味がありません。
・Open Street Map のデータを使う
・uMAPで書いたデータをプロットする
・スマホなどでも使いやすいUI/UXを狙う
というプランのもと、みんなで地図を作っていくことにしました。
もうすでに、何十回もテストを重ねていますが、まだまだ改善点がなくなりません。こういうのは、やればやるほど、いろんなことが見えてきます。
いざ地図をつかってみると、区画整理で図と現場が異なっていたり、「もっと見た目をきれいにしたい」など、いろんな問題がでてきますね。
「使いにくかったりすると、使ってもらえなくなるから、つかってもらえるようにしよう!」という声もでてきて、地図を作りこんでいく勢いも出てきました。
8.本番まであと少し!
本番は、9月7日(土)。まだ地図のレベルアップ、情報の精査、機器の動作耐久テスト、バックアック手段構築、地図自体をどうやって広報するか?などいろいろ課題は残っています。
これらを1つ1つ丁寧に解決しながら、「当日の困り事が1つでも、1人でも多く解決している」ことを願って、これからも活動を続けていきたいと思います。
本番がおわったら、後半編(実践結果)を書きたいと思います。
※地図データ:CC BY-SA、“© OpenStreetMap contributors”