ニンジャ・ストライクがいつまで経っても実装されないので書いたジャニット背景ストーリーSS(シティバトル風味)
その者は、歴史の原初から超獣世界に居たとされる。しかし、歴史の表舞台に姿を表したのはさほど昔の事ではない。
いがみ合っていた文明同士が手を取り合って、XXを筆頭としZへと立ち向かっていくその様。歴史的な光景を目の当たりにするべく、満を辞して世界に降り立ったという。
決して加勢する為ではない。自身が干渉せずとも、運命の歯車は寸分違わず狂わない事を半ば承知していたからだ。
元より天才として持て囃されていた存在である、過ぎ去る年月の中で憧憬 が廃れようと、何も分からぬまま場に割り込み掻き乱そうとする愚者とは訳が違う。
ジャニット。かつてその名を修飾していた言葉の数々は、歴史の裏に葬られていた。
やがて最終決戦は終幕した。皆ともども希望に打ち震え、陰で黒幕によるさらなる侵攻が蠢いていた頃。ジャニットはというと微睡みと操縦席の背もたれに、うつらうつらと身体を委ねていた。
体格が比較的小柄なサイバーロードは、戦闘と移動を自主開発したパワードスーツで補う事がある。中でもコックピットがある部類は、四六時中その内部で過ごす事となる生活基盤の核という扱いにもなる。
つまるところ、住環境を最適化するべく改良に改良を重ねた末に、“体にフィットし骨抜きにさせる例のビーズソファ”紛いの心地よさを最大出力で発揮するようになった訳だ。
ふいに、右斜め後方のモニターが瞬いた。惰眠を貪りつつあったジャニットは振り向こうともせず、物臭に手元の操作盤に手を伸ばした。
幾つかの簡易な操作の後に画面は消灯し、その視界には再び静寂が訪れた。
三日三晩続いたと 言われる決戦を、端から端まで目に焼き付けようとしていたのだ。一抹の不安すら抱かずに 安眠を優先させる程に、疲れが満ち満ちているのも無理はない。
こうして見た目相応の子供らしい寝ぼけ眼は、再び閉じられる事となるのだった。
この先に待ち受ける運命を知らないジャニットは、良く言えばあどけない、悪く言えば危機感 に欠けた寝顔を浮かべ、ずぶずぶと椅子の中へとのめり込んでいった。
沈み行く身体と意識は、つんざく警告音や鞭打つような衝撃ですらも覚醒へと至らなかった。
***
「——という書き出しの自伝を出そうとしてたじゃに」
勿論だが、メインターゲット層であるデュエマシティの市民は、前提知識である背景ストーリーを知る由も無い。各所の出版社に持ち寄った原稿は、軒並み没になったそうだ。
人々が自身の理解が浅い事に対し憤りを感じる、件の当事者“ジャニット”。
あだ名は“じゃにこ”と言うらしい。
その怨嗟を暫く聞いていた自分だったが、ふと手元にデッキケースがあるのに気が付いた。
訪れるであろう展開を察し、後退りする彼を強引に気分転換のデュエマに申し込む。ご存知の通り、十八番の流れである。
こうして始まった勝負は、程なくして自分は難なく勝利をおさめる事となった。いつに無くあっさりとした手応えであった。
当然、デュエルの腕だけで言えば真のデュエリストらに匹敵するか、それをも優に超える実力を 自分は持ち合わせている。虚栄ではないれっきとした事実である事は、よく自覚している。
一方で、クリーチャー世界で天才と謳われ(自称かは真偽不明)、実際にシティの要所でその 天賦の才を発揮していると耳に聞く彼。
その手元からは、数月前に初めて邂逅した時のデュエル のような、軽快ながらも執拗に手元のカードを弾く音色は一向に聞こえてこず、プレイもどこか鈍かった。
「——この際だから伝えておくと、ぼくは、女の子じゃに」
鈍かったのはどうやら自分の方であった。奥歯に物が挟まったような物言いをするジャニットは、当にカードを片付け終え帰り支度を始めていた。
散乱したカードを拾い集めている筈の両手は、主人と共に呆然としたまま動く気配を見せようとしなかった。
***
ともかく、シティでの認知度の低さが彼女の自負を大きく削いでいたようで、尽くすあの手この手も空回り、自己存在の揺らぎに拍車がかかっていた。
そんな事を考えつつ超次元から出すクリーチャーを吟味をしていると、対面のダピコにムッとされてしまった。上の空な様子は、薄々どころかあからさまに伝わっていたようだ。
「『せっかくレンタルしてくれたのだから、私とのデュエルに集中して欲しいぞ』とでも言ってやりたい、所なんだが」
「......珍しいな。その、筋金入りのデュエル馬鹿なプレイヤーがデュエル中に他 所に意識にいくなんて」
事情を説明しなければダピコに失礼だと思い、ひとまず除去を撃ち合う攻防戦を危なげなく制する。次に、レンタルデュエリストとしての対戦がひと段落ついたダピコを、すかさず昼食に誘う事とする。
いつもながらに戸惑いながらも嬉しそうな表情を見せてくれる彼女を見ると、つい奢ってしまう悪癖が出てしまう。
悪癖とは言いつつも、一連のルーティンを見かねたルピコに指摘されようやく自覚し、そう称しているだけで省みるつもりはあまり無いのが実情である。いっぱい食べる君が好き。
アルバーノさんお手製のピザを口一杯に頬張っているダピコは、やはり眼福である。
奢りがいのある彼女を暫く眺めていたが、腹ごしらえが済んだ頃合いを見計らって、件の経緯を余すことな く伝えてみる事にした。
「すまない。あちらの世界で彼女の話を聞いた事はなさそうだ。恐らくキリコなら何か知ってる んじゃないか」
「——そうだな、プレイヤーなら守護者達の力も借りやすいんじゃないか?ルカやエ レナならクリーチャー世界にまつわる文献の出版にも協力してくれそうだ」
「——む、彼女のモノを監修するのは悪手になりうるから、むしろプレイヤー視点からによって独自のものを作り出すのも一つの手になるのか」
状況こそ違えど、シティで生活するのに苦労した境遇からだろう。見知らぬ彼女について、ダピコは真摯に相談に乗ってくれた。
数刻が過ぎ、夜が差し迫る。それは、ダピコが次のバイト先に出向く必要がある事を意味する。そんな彼女を見送る頃には、自分は久方ぶりに筆を執って、このモノローグをしたため終えていた。
これは、ユーザーアンケートに明記された事で実装される兆しが見えてきた【ニンジャ・ストラ イク】と、リメイクで実装されながらも“凡才”と揶揄された【ジャニット】へ贈る、スキン化を熱望する一介のプレイヤーによる三次創作の冒頭である。
後日。
「そんなに気を遣われるほど気にしてないじゃに」
本人に原文を見せてみたところ、考え込み過ぎだと鼻で笑われてしまった。なお、善意は素直に嬉しいとの事だったが、一箇所訂正を要求された。
性別はあの場ではああいったが、実際の所は無性か両性らしい。夢は末広がりらしい。
たぶん続かない。
【ジャニット+シノビ与太話 】
デュエプレリリース当初より収録カードにイラストとして登場し(冒頭)、15弾という覚醒編の末期に 満を辞してリメイク版が実装された。
一族一同シノビ種族が雲散しているが、デュエプレ世界線における姿は、世を忍ぶ仮のものなのか、それともシノビが干渉しなかった世界線の元クリー チャーなのかは定かではない。
登場済みのサイバーロードはアクアン・コアクマン共に♂なので、ジャニットはショタかもしれない。が、判断材料が皆無な為、一応性別不明である。
一方で、水文明であるサイバーロード故の変幻自在性により、無性とも両性とも扱えるという噂がある。
なお、水文明かつ元シノビの共通点がある蒼神龍バイケン。そのフレーバーテキストは、
もし運営が、背景ストーリーの伏線を回収してくれるような心優しいお方たちであれば、霧隠ではなくなってしまったバイケンをほったらかさず、救いの手を差し伸べて欲しい所である。
終わりに
キャラクター原案は、あさげ氏が昨年手がけ、作品を投稿していたジャニットの擬人化
“じゃにこ”である。
題材にしたイラストや4コマ漫画が2022年当時よく投稿されており、Twitter垢を変えた今でもその供給が見られる。
不定期に投稿される、プリンプリンやジャスミン、擬人化されたバイケンやじゃにこが織りなす不条理4コマは個人的に好きであったので投稿頻度を上げて欲しい所である。
最後に二言だけ
ニンジャ・ストライク流石に実装して欲しい
サイゾウミスト使わせて