![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/1802781/rectangle_large_0d67397fcbaadf6e96bdfe80c430c3aa.jpg?width=1200)
6/29 えねかぷ・狼・大神真BD記念SS
脚本を担当させて頂きました18歳以上推奨シチュエーションCD。
『えねかぷ』こと『えねみーかっぷりんぐ』の狼・大神真先生のお誕生日が本日6/29とのことで、記念のSSを書きました。
こちら記念のお祝いをこめて個人的に書いたお話ですが、公式様にチェックして頂いております。
公式様、この度もお忙しい中ありがとうございました……。
それでは、大神先生のお誕生日をお楽しみに頂けますと幸いです。
今日は、俺の誕生日だ――。
平日だからいつも通り教師の職務をまっとうし、放課後は教科準備室にこもって作業をしている。
ただ、まあ……多少はいつもと違う。
「……終りが見えないな」
キーボードから手を離すと、目頭を押さえて軽い痛みを和らげる。
肩にも鈍痛を覚えて軽く動かし、息をついた。
「今年も、断るのが大変だったな」
隙あらばと、プレゼントを渡そうとする生徒が絶え間なかった。
生徒は断りやすいが、厄介なのは同僚教師だ。
無碍に断ることもできないから、フェイクの指輪を見せて恋人が嫉妬するからと笑ってかわしていた。
だが、回を重ねると本当に恋人が居るのかと怪しむ人も出てくるわけで
「まあ、今は本当に居るんだけどな。フェイクがかえって仇となったと言うか……いや、誤魔化せているからいいのか」
頬杖をつき、指輪を見つめながら軽くため息を付く。
あの子は、生徒たちに取り囲まれる俺の姿を見掛けては心配そうに見つめていた。
多少の嫉妬は可愛い愛情表現の内だとも思ったが、あの子の場合は本当に心配をしてくれるから複雑だ。
俺に気遣って、距離を取る始末。
彼女が帰る間際にこっそり、仕事が滞っていそうだから無理しないでと心配された。
彼女を抱きしめるだけで、ストレスも疲れも癒やされるのに今日ばかりは無理だろうと自覚もしていた。
見つかっては大変だ。
「……今日はもう帰るか」
さすがにこの歳で当日に祝って欲しいというこだわりはない。
だから、あの子からは今週末の休日に祝ってもらえることになってる。
「いや、週末を楽しみにもう少し頑張るか」
苦笑いを浮かべると、携帯に着信が入った。
「ん? 宇佐か……」
震え続ける携帯を手にとって通話ボタンを押した。
ただの通話ではなく、顔の見えるテレビ電話で繋がる。
『あ! 大神先生こんばんは! よかった出てくれて~』
宇佐が満面の笑みで手を振っている。
相変わらず元気そうだなと思うと、自然と口元に笑みが浮かぶ。
「どうした? 何かあったのか?」
『何って、先生お誕生日でしょ? だからおめでとうって言いたくて!』
「そうか、それは嬉しいな。わざわざありがとう」
『なんのなんの~! 先生からは僕の誕生日の時にプレゼント貰ったしね。本当はー……』
「プレゼントは誰からも受け取らんぞ」
目を細めて呟くと宇佐が一瞬目を丸くし、すぐ破顔した。
『分かってますよ~。彼女さんからしか受け取らないって徹底してるんだよね』
「ああ。あと、一度貰いだすとキリがないからな」
『そっかー。僕らが生徒だった頃から相変わらずモテモテなんだねー。まあカッコいいから分かるけど』
「宇佐もカッコいいぞ?」
『ホント! 先生に言われると嬉しいなあ』
嬉しそうに照れる様子を見ると、年齢よりも幼く見える。
それは見た目よりも、純粋な素直さから来ているからだろう。
宇佐みたいな子と話していると、和むなと思う。
『ところで先生。まだ学校にいるの? せっかく誕生日なのに』
「平日だしな。先日定期テストが終わったから、その成績を参考に夏期講習のプランを練らないといけない」
『そっか、そんな時期か……。お仕事って大変だね』
「他人事だな。お前だってあっという間に仕事をするようになるんだぞ」
『あはは……そうなんだろうね。じゃ、お仕事の邪魔しちゃいけないからそろそろ失礼しまっす』
「ああ、本当にありがとうな。彼女にもよろしく伝えてくれ」
『はーい! それじゃ、あまり無理しちゃだめだよ。身体壊して、彼女さん悲しませたら鈴くんと叱りに行くからね!』
「それは怖いな。気をつけよう」
『そうしてください。それじゃーねー!』
宇佐は最後も笑って手を振ると、通話を切った。
俺は携帯をデスクの上に置こうとしたが、そのままスラックスのポケットにしまう。
「帰るか……」
体調崩して、週末の楽しみを断念するような事はしたくない。
帰り支度をして部屋から立ち去ろうとしたら、ドアをノックする音が聞こえた。
こんな時間に誰かと思い、まさか誕生日絡みで誰か来たのかと咄嗟に構える。
だが、俺は廊下から聞こえてきた声に驚いて耳を立てると、すぐドアへ駆け寄り開けた。
「……お前」
目の前に、俺を見上げてくる恋人がいる。
自分でも笑えるぐらい、しっぽを振ってしまっている。
「帰ったんじゃなかったのか。どうして……」
彼女は答えず、入ってもいいかと言ったので俺はすぐに一歩ひいて招き入れる。
礼を言って奥へと入っていく後ろ姿を見つめ、戸惑いながらもドアを閉めた。
「なあ、何かあったのか? 真面目なお前がこんな時間に来るのは珍しいな」
彼女は少し黙り込んだ後、手に持っているケーキの箱を差し出した。
「これは……もしかして、バースデーケーキか?」
彼女が小さく頷くと、はにかんだ笑顔を浮かべる。
……可愛すぎる。じゃなくて。
「週末一緒に過ごす約束だったじゃないか……。都合でも悪くなったのか?」
不安になって両肩をそっと掴むと、彼女が慌ててかぶりを振った。
週末はもちろんお祝いするつもりだが、やっぱり誕生日にケーキだけでも渡してお祝いしたかったとのこと。
俺は安堵のため息をつくと、彼女が不安げに迷惑だったかと顔を覗きこんできた。
「違う違う。週末一緒に過ごせないのかと、相当ヘコみそうになった」
ちょっと意地悪く言うと、彼女は絶対一生懸命お祝いするんだと言い切り、ケーキの箱をデスクに置いた。
彼女がフタを開け、俺は中を覗きこむ。
「チョコレートケーキ? ああ、ガトーショコラか。今、煎茶しかないんだよな……」
マグカップを手に取ると、お茶の用意をする。
「皿とかはいるか? 紙皿とフォークも買ってきたのか。気が利くな」
お茶の用意はすぐできたが、ケーキを皿によそう姿が可愛くてじっと見つめる。
指先に少しケーキが触れたようで、拭き取ろうとする手を掴んで止めた。
少し驚いて見上げてくるのを見つめ、笑って指先を俺の唇に引き寄せて舐めとった。
「うん。美味しいな」
彼女が少し眉根を寄せて、行儀が悪いと窘める。
「わ、悪い……確かに行儀が悪かった」
思わず耳と尻尾を垂れると、彼女がすぐに笑って皿とフォークを手に取る。
そしてケーキを掬うと、俺の口元に近づけた。
「食べさせてくれるのか?」
優しくされただけで、頬が緩む。
口を開けてケーキをパクつくと、彼女がじっと俺を見つめてくる。
「そんな心配しなくても美味しい。俺の好みに合わせて甘さ控えめのケーキを選んでくれたんだな。ありがとう」
彼女は嬉しそうに笑うと、もうひと掬いして俺に食べさせようとしてくれる。
「立ったままなのも何だから、座ろう」
彼女の背中に手を回してソファへ向かうと、俺が先に腰を下ろし、彼女も座らせた。
俺の膝の上に。
「これならお前に食べさせてもらえるし、俺もお前を可愛がれる」
耳元で囁くと、彼女が顔を赤らめて俯く。
「ほら、顔上げて」
覗きこむように顔を近づけると、彼女が上目遣いに俺を見つめてくる。
「本当にありがとうな。嬉しい誕生日だ」
彼女の頬に鼻先を擦り寄らせると、彼女が笑って俺の目元にくちづける。
「めずらしく積極的だな。せっかく祝ってもらうんだから、お願いごとを聞いてもらおうか。俺が何をして欲しいか、考えてみて」
彼女は目を見張った後、真剣な表情をして考え込んだ。
その真面目さがやっぱり可愛いし、愛おしい。
どんな願いを聞いてくれるのかと楽しみに待っていると、彼女が恥ずかしそうにチラチラと俺を見る。
まさか、真面目過ぎるゆえの大胆なことを考えているのか。
いや、せっかくの誕生日だし甘んじて受け入れるのもアリ……いや、ここはスクールだし破廉恥すぎることは教師としてどうかと。
いろいろ妄想……ではなく、想像していると彼女がおずおずと俺に声を掛けてきたから、笑って見つめ返す。
「ん? お願いごと、分かった?」
彼女は手に持っていたお皿をテーブルに置くと、俺の服をキュッと掴む。
高まる期待に喉を鳴らすと、彼女が私を見つめて口を開いた。
「えっと……真さん……」
「ん?」
「ですから……真、さん……」
彼女が耳まで真っ赤になって、俺の胸板に顔を埋める。
まさか、俺がいつも名前で呼べというからその願いを叶えたというのか。
一瞬呆気にとられるも、すぐにそれだけ俺の言葉を大切に考えてくれているのだと思うと嬉しくなる。
「ありがとう。お前に名を呼ばれるのは、本当に嬉しいよ」
彼女が顔を上げ、花が綻ぶような笑みを浮かべる。
「名を呼ばれるのも嬉しいが、さっきみたいにキスされるのもいいな」
俺は頬を撫でて唇を寄せると、深く口付けた。
舌先でくすぐって首筋を撫でると、潤んだ瞳で見上げてくる。
「ちゃんと自宅まで送るから、もう少しだけ一緒にいてくれるか? 明日も授業だしな……ムリは、させない」
裾から手を滑りこませて肌を撫でると、彼女が甘い吐息を零し俺に擦り寄る。
「お誕生日……おめでとうございます」
たくさん祝ってもらえるのは嬉しいが、やはり一番祝ってもらいたい人が傍に居てくれるとが何よりも嬉しい。
これから先も、歳を重ねていく毎に愛おしいお前から伝えて欲しいから。
俺もお前への想いを伝えよう。蕩けるようなくちづけに込めて――。
(おしまい)
--------------------------------------------------------
最後までご覧いただきありがとうございました。
今後とも『えねみーかっぷりんぐ』をよろしくお願いいたします。