7/4 えねかぷ・猫・嶺狛鈴BD記念SS
脚本を担当させて頂きました18歳以上推奨シチュエーションCD。
『えねかぷ』こと『えねみーかっぷりんぐ』の猫・鈴くんのお誕生日が本日7/4とのことで、記念のSSを書きました。
こちら記念のお祝いをこめて個人的に書いたお話ですが、公式様にチェックして頂いております。
公式様、短い期間にありがとうございました……。
今回で最後の記念SS、鈴のお誕生日をお楽しみに頂けますと幸いです。
今日は、俺の誕生日――。
スクールは休みだけど、バイトはが入ってしまった。
というのも――。
「あはは……ありがとうございまーす」
俺のバイト先であるカフェでは、『お客様』がスタッフの誕生日をお祝いするイベントがある。
だから、強制的に出勤となってしまう。
特に俺はこのバイト先で初めて迎える誕生日だから、絶対休むなとひと月前から念を押されていた。
祝ってもらえるのは嬉しいけど、プレゼントだけでなく一緒に連絡先を握らされるのは非常に困る。
「えっと、お気持ちだけで十分ですので。プレゼントなどはお断りしてますし……」
実際、プレゼントの受け取りは禁止されている。トラブルになりかねないし。
それでも何とか俺に受け取らせようとあの手この手を使われると複雑な気持ちになる。
「本当にお祝いの気持ち、ありがとうございます。ぜひまたいらしてくださいねー」
俺なりに客商売だと思い、常に笑顔は崩さず誠実対応。
正直、特別手当ぐらい貰ってもいいと思う。
けどそれ以上に、こんな姿を彼女に見られたらと思うと……。
「ずいぶん盛況のようだな。嶺狛」
「大神、先生」
俺が通うスクールで絶大な人気を誇る、我らが担任のご来店。
マイペースがモットーでとても接しやすいが、ひとまわり年下の彼女が絡むと耳と尻尾から感情が駄々漏れになる。
「いらっしゃいませー! 彼女とお待ち合わせですかー?」
「まぁ、そんなところだ。今日と明日で俺の誕生日を祝ってもらう予定でな」
「あーそーですかー」
ちょっとしたからかいのつもりで言ってみたけど、先生は天然な所があるから真面目に返される事が多い。
俺は先生を席に案内すると、お冷を置いてメニューを渡した。
「オーダーは決まった頃に来るから」
「ああちょっと待て。先にこれを渡しておこう」
「ん?」
先生がテーブルに置いたのは茶封筒は、大きさにしてA4用紙がスッポリ入るサイズ。
それは手にとって口を開けると、紙の束をつかみ出した。
「ちょっと……これって……」
「俺からの特別なバースデープレゼントだ」
「疲れてるのかなぁ……どこをどう見ても、問題集に見える……渡す相手間違えてない?」
「間違えてないぞ。俺特製の問題集だ」
「優月の時とぜんぜん違うじゃん!」
「お前は現役だろ。元教え子の宇佐と同じに出来るか」
「じゃあ無事に卒業した暁にはちゃんとしたプレゼントでもくれるの?」
「お前が無事に進学が決まって卒業して、いい子にしていればな」
「あーそーですかー。別に興味ないけどー」
「それに俺なんかより貰いたい相手がいるだろ」
「そりゃね。まぁ、ありがたく貰っておくよ。角が立たないだろうし」
チラリと周囲を見回すと、お客様が俺がプレゼントを受け取っているのを気にしているご様子。
加えて、先生自体も気にしている客もちらほら。
「先生、早く委員長に来てもらいなよ。じゃないと逆ナンされちゃうよ」
「問題ない。気を張っていればいいだけの事だ」
「営業妨害になるからほどほどにしてよ……でもそういう時、狼っていいね」
「不便な事の方が多いぞ。こと、相手が捕食種だとな」
まあその不便さは解らないでもない。
俺だって彼女から見れば、天敵の種族だし。
「まあそれでも傍に居たいから努力するけどね。お互いに。どうであれ一緒に居る事の方が幸せだし」
「確かにな…ひと先ずコーヒーをもらおう」
「はーい。かしこまりましたー」
「まあ今日はきっちり仕事頑張れ」
先生は俺に向かって手を伸ばすと、胸ポケットに一輪の花を挿した
「え……何これ……」
「宇佐から折角の祝い事に問題集だけでは色気がないからと渡された」
先生が店の外を指さすと、ちょうど優月が花屋の店先に出ていたようで、俺に気づいたのかぴょんぴょん跳ねて手を振ってる。
なんだか力が抜け、軽く手を振って返した。
「それじゃ今日一日このまま付けとくよ」
「それは嬉しいな。その調子で、ぜひ問題集も解いて提出してくれ」
「ハイハイ、気が向いたらね」
俺は苦笑するも、先生にひらりと手を振ってオーダーを通しカウンターへ向かう。
その時――。
「ん? んん?」
奥の席でやけに帽子を深くかぶっている人がいる。
見た目からして女子だと思うけど、席にはその子一人しか座っていない。
俺は気になりつつも背も向けてオーダーを通すと、何か視線を感じて勢い良く振り返った。
すると、その女子が俺と目が合って慌ててテーブルに突っ伏した。
「……まさかっ」
俺は頭抱えてため息をつくも、思わず口元に笑みを浮かべた。
無事に本日の仕事を終えて外へ出ると、変装したつもりの彼女が小さくなって待っていた。
「お待たせ。さ、帰ろう」
俯いたままの彼女を覗き込むと、真っ赤な顔が見えて思わず頬にキスをした。
すると彼女が飛び上がるほど驚いて、後ろへ倒れそうになるのを慌てて抱き寄せる。
「おっと……大丈夫? 驚き過ぎだって」
可愛くて思わず頬が緩むと、彼女が小さな声で謝ってきた。
「何がゴメンなの? 店に来た事? いつでも来てくれていいって言ってるじゃん」
それでも彼女は自分が居ると、俺の仕事の邪魔になるんじゃないかと思ったらしい。
「俺なんて時間さえあればアンタのバイト先行ってるじゃん。もしかして、メーワクなの?」
彼女は目を見開くとブンブンと頭を振って、すごく嬉しいと言ってくれる。
「でしょ? それと一緒。俺も嬉しいの」
彼女の額に口付けると、ぎゅっと抱きしめてポンポンと背中を叩く。
「それじゃ帰ろう。もちろんアンタの家にね」
手を握って歩き出すと、彼女も気持ちを込めて握り返してくれた。
彼女の家に帰ると、急いでクーラーを付けてくれる。
シャワーと食事、どっちが先にいいか聞かれたから目を細めてニヤリと笑う。
「シャワーしながらアンタを食べたいかなー……っ!?」
彼女が抗議込めてポカッと叩いたけど、全然痛くない。
むしろぎゅっと抱きついてきて、胸板に顔を埋めてくるもんだから可愛すぎる。
「ところでさ、今日はどうして店に来ようと思ったの?」
「せっかくのお誕生日だから……少しでも鈴の傍に居たくて」
「ちょ、待って……それが、理由……?」
あーもう、顔がにやけてたまらない。
「やっぱ先にシャワー入る。それでアンタをいっぱい可愛がる」
彼女の首筋に噛み付いてきつく吸うと、甘い声音でか細く啼く。
裾をたくしあげて、中を手へ滑らすと熱い肌をなで上げる。
「ねえ、顔を上げて……キスさせてよ」
ねだるように甘えたら、彼女は蕩けた表情を俺に見せ俺から眼鏡を奪う。
「え……ちょっと、これじゃ見えない……んっ」
彼女からのキスに一瞬驚くも、すぐにどうでも良くなって深く貪る。
そのまま堪らずベッドへ押し倒したら、彼女が息を乱しながら囁く。
「……ん? ケーキ、用意してくれてるの? 何ケーキ?」
すると彼女が俯いて『キウイヨーグルトケーキ』とひと言。
「ねーずー子ー……あのさ、アンタ、どうして……」
俺は彼女の胸に顔を埋めて、足をバタつかせて悶える。
「はぁ……ケーキ、食べたいけど……ごめん、もうダメ。それは後にすることにした」
顔を上げて自己申告すると、彼女が一瞬目を丸くするもすぐ笑顔に変わる。
「あとで……ごちそうも食べるから……お祝いして」
「うん。お誕生日おめでとう」
彼女は俺の頭を撫でると、愛おしげに見つめてくれる。
これから先も、何度でも、祝って欲しい人はただ一人だけ。
そんな想いを込めて、深く口付けた――。
(おしまい)
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最後までご覧いただきありがとうございました。
今後とも『えねみーかっぷりんぐ』をよろしくお願いいたします。