武者小路実篤の理想郷「新しき村」に行ってきた
ずっと前から行こう行こうと思って、なかなか足を運べなかった「新しき村」にようやく伺うことができました。
新しき村とは、白樺派の作家である武者小路実篤がはじめた理想郷です。
当初は宮崎県の方にあったのですが、ダムで農地が水没してしまうため、1939年に埼玉県に移転してきました。
新しき村がなぜ理想郷かというと、そのスピリッツにあります。
公式サイトから引用してみます。
果たして、実際はどんなところなのでしょうか?
真夏の暑い最中、新しき村は八高線の小さい踏切を渡った向こうにありました。
「この道より我を生かす道はなし この道を行く」のポールと石碑が来村者を出迎えてくれます。
少し前までは、「この門に入るものは自己と他人の 生命を尊重しなければならない」と書かれたポールがあったはずですが、今はなぜか無くなっています。
台風などの影響で、撤去されたのでしょうか……。
一歩、村に踏み入れると、ちょっと不思議な感じがしました。
日本の村ではあるのだけど、少し時が止まっているというか、空気感までも異なる印象です。
まるでジブリで出てくる異世界のようです。
ただ一方で、太陽光発電などもおこなっているので、現世感もあります。
ひと気もほとんどないですね。
村を歩いている自分だけが、夾雑物なのかもしれません。
ここに自分は居ても、よいのだろうか?
そんな疑問も自然とわいてきます。
村の奥まったところには、武者小路実篤記念「新しき美術館」があります。
入館料はたった200円。
安い!
しかし、人がいる気配がしません。美術館といっても、民家のようですし、入るのに勇気が要ります。
ですが、ここまで来たからには踏み入れるしかありません。引き返す選択肢はないのです。
こんにちわ~!と言いながら、扉を開けるとひんやりとした空気。
クーラーがバリバリ効いています。
すると中から、70歳ぐらいのおじさんが出てきました。
館内の電気を点けながら「ゆっくり見ていってよ」とのこと。
撮影は禁止だったので、館内の写真は撮りませんでしたが、武者小路実篤の描かれた日本画も多く展示してありました。
志賀直哉曰く「武者小路の絵はもう素人芸とは云えない」の他、梅原龍三郎や中川一政らも絶賛する日本画は、素朴なタッチの中にも力強さを感じさせるものでした。
大地に根付いた大木のようにどっしりした印象です。
途中から、館内のおじさんによる案内も始まり、理解も深まりました。
なお、この美術館は県民の日だと無料になるようです。
また来よう。
外に出ると、また夏の暑さとの再会です。
村の地図もありました。
目を引く、石碑や建物もあります。
全体的には、昭和の田舎風の建物が多いです。
ただ極めつけは、都電でしょう。
昔、新しき村で、幼稚園の園舎として使われていたとのこと。
しかしまあ、本当にジブリっぽいです。
この世とあの世の間にある「世界」に足を踏み入れたようでした。
真夏でありつつも、どこかひんやりとした空気が流れていたのも印象的。
自分の魂も洗われたようでした。
また来よう、新しき村に。