研究活動に必要な能力は,働く大人の必須スキルでもある
実習中に急に始まった卒業研究が初めての出会い
20年弱前,長期実習2期目の病院で初めて研究活動に触れることになりました.センサを用いた定量評価をテーマに積極的に研究活動を行っている施設でした.ほんと軽い気持ちで「卒業研究もしなきゃな〜」とスーパーバイザーに相談したところ,これでやってみ〜と渡されたのがF-SCAN.義務教育の段階からすべてが平均値出会った僕に取っては「研究???フラスコでもふるんかいな」ぐらいの認識でしたが,いきなりセンサを用いた定量評価に出会います.
このF-SCANはセンサシートを靴内に入れて,使用者の荷重具合が計れるツールです.計測環境に左右されにくい簡易的な床反力計のようなものとイメージしてください.立位時の体重の偏りや動作時の荷重を計測し介入の効果検証や装具の適合,家屋環境の変化による荷重の変化などを研究テーマに活用してました.
正直実習中に別の課題かよ!大変なだけじゃん!との思いは頭によぎりましたが,やってみるとこれがまたおもしろかったんです.スーパーバイザーやケースバイザーに動作観察であーだこーだ言われても経験値ゼロの僕には「何言ってんのこの人?超能力者か僕を騙してる?」の状態.でもF-SCANを用いることで,担当患者さんの見えることのできなかった重心の軌跡が学生時代の僕にもわかるようになったんです.SVは詐欺師じゃなくて超能力者でした.笑
何かしら興味のあることから始めるでOK
卒業研究をきっかけに,そのままその病院に就職することを決めて僕の研究活動がスタートしました.入職直後は卒業研究で用いたテーマを軸に臨床疑問を解決する1つの手段としてツールを用いていましたが,徐々に面白そうな研究テーマの先生のお手伝いやセンサを取り扱うことに.
研究活動を通して得たスキルは働く大人の必須スキルでもある
当時は通常の業務をしながらの研究活動だったので,そりゃ〜時間が足りません.拙い英語力で論文を読み込んだり,徹夜でデータとにらめっこすることなんでザラでした.社会人は時間が無いので効率よく研究しないといずれ健康を害してしまうと一念発起して取り組んだのが,研究スキルを意識した学びです.
・検索能力―情報収集に関する能力
・読解能力―複数の教科書や論文を組み合わせて読み込み能力
・問題提起能力―臨床的疑問から共通の問題点を発見する能力
・アイデア発想能力―問題
を解決するためのアイデアを発想する能力・仮説設定能力―アイデアを用いて問題を検証するための仮説を組み立てる能力
・検証能力―仮説検証のためのアイデアを実行する能力
・考察能力―手に入れた結果を統合と解釈し考察する能力
・言語化能力―考察した言葉を,伝えられるようにキーワードを変えて,図や表を交えて伝える能力
・相談能力―素直に人に相談できる能力
・コミュニケーション能力―専門家・他部門の人に合わせて情報を相互交換できる能力
・プレゼンテーション能力―そのまんま
これらの能力を意識して効率よく学び研究活動を進めていたんですが,だんだんと臨床力もついていって,なんならある程度の人数を束ねるリーダにもなってました.
改めて考えてみると,研究スキルってそのまんま働くセラピストの必須スキルそのものなんです.臨床的疑問を解消するために教科書や論文を用いて何かしらのヒントを効率よく検索しますよね?検索した資料を読み込みますよね?そもそも臨床的疑問は問題意識とそれを言語化する必要がありますよね?その問題の構造を仮説して,検証するための方法をアイデア発想しますよね?そのアイデアが実現可能かどうかを上司や先輩・同僚に相談しますよね?その問題解決方法を患者さん・ご家族に説明しますよね?その効果を主治医に報告しますよね?臨床家が常日頃行っていることは,研究スキルそのものなんです.臨床を一生懸命頑張って取り組んでいた臨床家は,すぐにでも研究活動をすることが可能です!
どうやってセルフブランディングにつなげるか
僕自身は元々小学校の先生になりたかったんです.なんだかんだありまして,PTになりました.そのまま普通のPTで生きていくか〜と思ってたんですが,臨床経験年数と修士以上の学位を修了することでPTの教員になれる!と知ったときに自分の進むべき道が見えました.教員になるためにはこの研究活動を続けて博士号を取得すると.今までの研究活動が自分のためになるんだ!と嬉しくてニヤニヤした瞬間ですね.
この研究者スキルはどの分野でも活躍できます.臨床家,教育者,企業との共同開発,有識者としての会議招聘,起業,独立,主夫(としての家事管理にも)
さあ,あなたの研究スキルをなににつなげましょうか?
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