【”ハイ・コンセプト時代”に向けてセラピストの置かれている状況を整理する①】
はじめまして、リハコンの細川です。
前回記事では、ハイ・コンセプト時代に向けてその要素の説明をした。
今回は前後してしまうが、現状セラピストが置かれている状況について改めて整理をしていきたい。
■セラピストを取り巻く現状は厳しい?
周知のとおり、理学療法士、作業療法士の現在の人数を考えるとざっくり毎年理学療法士は10,000人以上、作業療法士は5000人以上、言語聴覚士も毎年1500人以上誕生しており、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を合わせると毎年1万5千人以上が誕生していることになる。
2000年以降の理学療法士、作業療法士の急激な増加は、近い将来において様々な問題を引き起こすことが懸念されているのは“カン”のいいセラピストであればお気づきだろう。
2015年には、日本経済新聞の連載「医出づる国」に「削りしろ探せ」というタイトルで理学療法士の過剰供給に関して言及する記事が掲載されたのは記憶に新しい。
(日本経済新聞 朝刊2015/9/17)
これまで超高齢社会に向けて“売り手市場”として認識されている節もあったため、この記事は業界にとって大きなインパクトとなったのは言うまでもない。
■理学療法士・作業療法士の働く領域
理学療法士・作業療法士需給分科会で用いられた資料内にある「理学療法士を取り巻く状況について」の中で、就業先として医療分野が約80%を占めていると報告されている。
一方、介護の現場で働く理学療法士の割合はわずか10%程度であり、領域によって偏りがあることがわかる。
作業療法士に関しても、同資料内の「作業療法士を取り巻く現状」の中で、2014年の状況として、医療現場では32,673名、介護現場では6,524名の作業療法士が就労していると報告とされている。
また、対象とする疾患別の就労者数では、脳血管障害が圧倒的に多い25,121名であるのに対し、がんは400名、発達障害は690名など専門領域によって大きく偏りがある。
もちろん脳血管障害のリハビリは需要が多いため、このような割合になるのは自然なことではありますが、がん・発達障害・精神障害などはまだまだ活躍できるであろう領域に作業療法士が少ない現状にあるといえる。
■過剰供給がもたらす様々な影響 -資格のコモディティ化-
先述したように、理学療法士を含めたセラピストは“既存の枠組み”においては徐々に供給過多の状態になっていることが懸念されている。
今、“既存の枠組み”としたのは、昨今では自費のリハビリテーションサービスをはじめとした保険外事業や一般企業で就業、あるいは起業するセラピストも徐々に増えてきているため、見方を変えれば活躍できる裾野はまだまだ広がる可能性も十分にある。
そうした可能性を探りながらも、以下のような点を把握しておくことは重要だと言える。
■PTOTの給与は20年間水準が変わっていない?
まず、理学療法士、作業療法士の給与水準は過去20年で上がっていないことが、2017年に財務省が示す社会保障に関する資料で報告された。
資料によると、1995年の給与水準を100%として医師126.6%、薬剤師117.2%、看護師は111.7%とそれぞれ上昇傾向を認めている一方、作業療法士は100.2%と20年前と比較し変化なく、理学療法士に関しては97.6%と給与が低下していた。
もちろん、年齢や需給バランスの調整を加味する必要がありますが、この20年間で社会保険料等が値上がりしていることを考えると「手取り」に関してはさらに下がっている可能性は高いといえる。
同じ社会保障費用の中で「給与」が発生しているのにも関わらず、他の医療職種と比べてこれだけの差がある。
この原因については、平均年齢の低下が給与水準を押し下げているとも考えられるため、今後の業界全体の動向に注視をしていく必要がある。
一方、日本理学療法士協会の半田会長は消費増税により捻出された資源を医療・介護にいかに投入するかを「マイナビ・コメディカル」内のインタビュー内で聞かれ、
『例えば介護福祉施設で施設のPTの収益が700万円強だったとすると、給与は300万円、50歳を過ぎてもせいぜい400万円程度。医療施設でも同様の給与水準になるというわけです。我々は白衣を着ていると一般の方からは裕福そうに見えるようなのですが、ワーキングプアと言ってもいいくらいだと思います。給与は勤め先にもよりますが、先に挙げたようなケースでは結婚しにくいし、50代で子どもが2人いても、大学へ行かせたいと言えるような給与所得ではありません。介護職の人材難、待遇改善だけが課題として注目されていますが、その余波が医療に押し寄せてくることを危惧しています。医療全体の人件費のバランスにぜひ着目していただきたいですね。』
と発言している。
社会保障財源が厳しくなる中で、数字を出してセラピストが置かれている現状を明確にされている。
次回以降、もう少し掘り下げて考えていく。
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