思い出の味
選択しなかった方をもし選んでいたら、、、
をよく考えてしまう。
もし私が地元に戻っていたら、
もし私がもう少し親のレールに乗って親の言うように大企業の入社試験を受けていたら、
もし私が額面ではなく手取り年収500万の人と結婚していたら、とか。
自分で道を選んできたはずの大学時代から記憶を遡り出してしまう。
内容は多少違えど、「もし」の無限ループ。
まさに、私も『たられば娘』だなと気がつく
頼んでいたフレッシュネスバーガーの呼び鈴が鳴る
後悔なのか反省なのか分からない空想をしながら、作りたてのバーガーを受け取りに行く。
つい受け取り口で「こんにちは」とTPOがめちゃくちゃな訳のわからない挨拶をしてしまった事に、店員さんの目元がふと笑っている事から気がついた。
小っ恥ずかしさと共に、ソースが垂れそうで野菜シャキシャキで、バンズも卵の黄身色が濃く、ジューシーでグリルの香が良いパテを、両手で押さえながら大きな口でかぶりつく。
やっぱり美味しい。
母と地元で食べた、学生時代の思い出の味だ。
バーガーの中身を取りこぼしてしまわないように味わっていたら、輝いて見える他人を見て生じる過去への空想はもうどうでも良くなっていた。
失ってきたものもあるかもしれないが、得てきたものだって多いはずだ。
今、こうして落ち着いて美味しいバーガーを食べれている。
ただそれだけで満足だ。