約束の花 それぞれの時間
ソフィア館に向かう橋の下の川土手に、ピンクの彼岸花が咲いていました。
彼岸花は、毎年必ずお彼岸の頃に咲きます。約束を守る花です。
ところが今年は、さすがの暑さに、少し遅れての開花でした。
写真を撮って土手から引き返す私に
上から「何しているんですか?」と優しい声。
学生さんです。一年生でしょうか。知らない学生さんです。
「ピンクの彼岸花が咲いているんですよ」
「では私も」足場の悪い土手に軽々とおりてくる、ふわふわスカートの彼女。
知らない同士の、穏やかで楽しげな小さなやりとり。
この大学らしいなあと思います。
このキャンパスでは、誰もがどこかで少しずつ癒やされて、柔らかくなってゆきます。
傷ついた心で入学した学生さんも、みんないつのまにか元気になってゆく不思議。
私はそれをとても誇らしく思っているのです。
ふと見ると、チャペル前の銀杏が、約束通り実を落としておりました。
それぞれにそれぞれの時間が流れています。