見出し画像

2日間3時間に及んだ絵本作者のトークライブ。わたしは10年間の「意味」を見出したいと切望していたのでした。

意味を見出さなければ気が済まない

 何にでも「意味」を探すのは、わたしの強みでもあり、最大の弱点であるなぁと思います。ものごとを白紙や空白にしておくことができず、そのことが存在しているのならば「意味」があるはずだと考えてしまいます。それは「意味がなかった」という答えを許しません。だから、探します。見つかるまで。探し続けます。激しい執着心を持って。その眼差しが「自分」へと移ったときには、意味と価値がごっちゃになり、いつの間にか自分の存在価値を見出そうとしています。でも、「見出そう」としている時点で、自分には存在価値がないと認識しているということになりますよね。こういう思考回路ががわたしの生きづらさになっているのだと思います。体中から力を抜いて、「存在するだけでいい」、「ありのままでいい」と思えるのは一体いつなのでしょうか。それらは、いつ、私にとって幻の言葉でなくなるのでしょうか。
 人前で話しているときだって、人のために何かを行なっているように見えるときだって、わたしはこのように、自由自在に自分の内=「自意識」の中に入ってしまいます。

そんな私がお話を書いた『ジュエルっ子物語』
(絵:犬飼美也妃さん(美術家))

トークライブ中に、自責の念が・・・・・・、後悔が・・・・・・

 「絵本『ジュエルっ子物語』」は、わたしがお話を作ってから約10年後、2022年にようやく世の中に流通するようになりました(つまり、出版社から出版できた)。わたしはそのプロセスを「時間がかかりすぎ」、「もっとスムーズにできたはず」とずっと思っていました・・・・・・と自覚したのはトークライブ最中です。  
 トークライブは、6月いっぱい開催していた「『ジュエルっ子物語』絵本原画展〜あの!AKEBIさんのごはんとおやつとジュエルっ子〜」(大阪市北区「げいじゅつ と、ごはん スペースAKEBI.」)の最終2日間で行いました。
 この原画展自体、私にとって大きな節目となったのではないかと思います。それは、この会場の特色のおかげでした。長い会期の中で、オーナーさんは来場者の声を聞いてくださり、それを私たち作者に伝え、アドバイスも織り交ぜてくれました。AKEBIさんは、多くのアーティストが多種多様な展示やパフォーマンスをしてきた場所。まるで芸術村のような場で、わたしは生まれて初めて自分の表現をまっすぐ見つめられたのだと思います。

AKEBIさんの展示スペース
なんて犬飼さんの原画がしっくりくるのでしょう

喜びと空虚が同居している 

 その中で、わたしは意外なことが他者から求められていることを知りました。それは「わたし自身が現れること」、「わたしの内部を外に出すこと」でした。それを知ったとき、わたしはぶるぶると震えました。動揺をしたのです。生きづらさがあることや性的マイノリティ当事者であるということはずっと以前から公開していました。だから動揺の原因はそこではありません。わたしはこのとき、嬉しさと空虚さの中でいました。嬉しさは、もちろん、求められる喜びから。空虚さは自分で意味(=存在価値)を見出せていない部分からでした。「動揺」はこの空虚さの中から来ていました。それをわたしは直面するためにここにいるのだと思いました。
 犬飼さんとのトークライブを思いついたのは、AKEBIさんへの感謝を伝えるためでもあったし、求められているものを提供したいという思いもありました。でも、わたしは直感でこの形が自分にとってベストだと知っていたのだと思います。わたしはこの方法でしか意味を見出せない。

犬飼さんとのトークライブの告知

「無自覚」から「自分で選択をした」に認識が変わると「意味」が浮かび上がる

 2日間合計3時間に及んだトークライブで、わたしは10年という時間のほとんどを無自覚のまま「絶対前に進まない」という選択をしていたんだということを明らかにしました。当時は、自分以外のことが原因で「進めない」という体験でした。それはそのまま空白になり、意味を見出せず、空虚となっていました。でも振り返ってみると、それは明らかに自分が選択していたのです。選択をしたのだと分かると「意味」がぼんやりと浮かんできます。これは「自意識」にどっぷり浸かり込んだままでは見えてこなかったと思います。トークライブという形が、わたしを自意識の沼から水面へ引き上げました。お客さまがいる以上、わたしの内を何らかの提供できる形にすることが必須であったからです。その沼では、「後悔」、「罪悪感」、「恥」という感情が何度も押し寄せてきました。これはわたしにとって、いつも息ができず苦しいところ。でも、その反面、一生浸かっていてもいいかも・・・・・・と思える快感的、魅力的なところでもあります。価値と無価値、喜びと空虚、意味と無意味。いつもいつも葛藤から逃れられない自分。そのために強い「意味」を見出すことをいつも切望しているのです。

大人気原画 (©Miyaki Inukai)




よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートは、発信環境をさらに整えるために使わせていただきます。