ふるさと
今週の東京は空いていた。夏休み、帰省のシーズンだ。
私の住む住宅街のスーパーも、いつもよりは人が少なめだった気がする。
暑かったのでエアコンをかけて、夫と二人、高校野球を見ていた。
BS朝日の高校野球中継は、民放なのでCMが入る。
出場校それぞれの都道府県にあわせ、特産品や郷土料理、観光名所などを扱ったCMだ。地域特性が出ていてなかなか面白い。
今日の夕方は、関東一高。東東京代表校だ。
CMには渋谷のスクランブル交差点が映り、ちゃんこ鍋や明日葉の畑がうつっていた。
夫が言う。「これ、並べられてもなあ...」
言いたいことはわかる。ピンとこない(笑)。
他の道府県と比べると、なんとも地域色が薄い。
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東京には「地元感」いいかえれば「ふるさと感」がない。
嵐の歌う「ふるさと」を初めてきいたとき、そう思った。
山があり、海があり、野があり、空がある...
古いお寺や、神社...
そんな風に、長いこと変わらずに存在するものがある場所。
懐かしい安定感のある「ふるさと」の景色。
私は東京で生まれ育っている。
だから、そういう「ふるさとの景色」がこころにない。
東京は、いつも変わり続ける。落ち着きがない。
「ふるさとの景色」は、あこがれだった。
自分の心許なさに、飲み込まれそうになった時、
そんな東京で生まれ育ったせいなのかもしれない...
と思っていた。
が、最近考えが変わった(笑)。
--- 🗼---
五輪開催が決まってから、東京のあちこちで新しい建物が登場している。
街が大きく変容していくなか「変わらずにあった」ものも見えてきた。
それは、昔からある「古びた」建物たち、
前回の東京五輪から高度経済成長期に建てられた年代物の建物たちだ。
原宿にある体育館も、「たまねぎ」の武道館。
新宿の高層ビル群、縦横無尽の高速道路。
渋谷のスクランブル交差点、オリンピック公園。
なんだ、ずっとあったじゃん!まだあるじゃん!
いや、別に子供の頃、そこで遊んでいたというわけではない。
ただ、いつもある、安定感のある景色。なつかしい故郷の景色。
わたしにとっての故郷の景色という意味だ。
なんだ、見えてなかっただけだった。わかってなかっただけだった。
安定感のあるものを、自然のなかに求めていただけだった。
--- 🗼---
ふるさとがある人には、敵わないなあと思っていたことがある。
なにしろ、東京にでてきた、というだけで力強さがある。
そして帰ることのできる地元がある。
それは、東京で生まれ育った私の、ちいさなコンプレックスだった。
でも、それは大きな誤解だった。分析間違い、といってもいい(笑)。
私が単に、ヘッポコ感を感じていたのを東京のせいにしていただけだ。
ヘッポコ感を正当化する自分なりの理由が欲しかっただけだ。ははははは。
お盆が終わる。
みんながふるさとから、また東京へとやってくる。
ふるさとの懐かしいエネルギーとともに、おかえりなさい。
私は東京のアスファルトの上に、とりあえず根を生やしていようと思う。
年老いた都会っことして。ふるさとに生きる一人として。
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