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精神発達障害者の雇用の実情

「障がい者」という言葉を聞くと、どのような人をイメージするでしょうか。目が見えない、耳が聞こえない、手足がないなどといった身体障害者でしょうか。それとも生まれつき脳に障害があり学習能力に欠如のある知的障害者でしょうか。多くの方が身体障害者や知的障害者をイメージされるかもしれません。障がいの種別には、身体障害、知的障害以外にも精神障害や発達障害があります。生産年齢人口に占める障がい者のうち、精神発達障害者の割合が2016年時点で56%となり、精神発達障害者数は近年急速に増えています。本記事では、急速に増大する精神発達障害者の生産年齢人口の雇用状況を他の障がいと比較して紹介します。

障がいの種別

各障がいの定義を説明します。定義の内容は厚生労働省が発行する文書からの引用となります。

身体障害者
身体障害者福祉法において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいいます。

知的障害者
法律において知的障害者の定義はされていません。しかし調査時などは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるものと定義されるのが一般的であります。

精神障害者
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律において、「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいいます。

発達障害者
発達障害者支援法において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいいます。

障がい者の生産年齢人口と雇用状況と方針

急速に増加する精神発達障害者
障がい者の生産年齢人口*1は、身体障害者約101万人(2016年、18歳~64歳)、知的障害者約58万人(2016年、18歳~64歳)、精神障害者約206万人(2017年、25歳~64歳)です。生産年齢人口の推移は、身体障害者は5年間で約10万人減少、知的障害者は5年間で約17万人増加、精神障害者は6年間で約44万人増加し、精神障害者の増加数が他の障害者の増加数に比べて大きくなっています。(図1,2,3参照)

10_オリジナル_内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表2 年齢階層別障害者数の推移(身体障害児・者(在宅)」

図1 出典:内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表2 年齢階層別障害者数の推移(身体障害児・者(在宅)」

11_オリジナル_内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表3 年齢階層別障害者数の推移(知的障害児・者(在宅)」

図2 出典:内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表3 年齢階層別障害者数の推移(知的障害児・者(在宅)」

12_オリジナル_内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表4 年齢階層別障害者数の推移(精神障害者・外来)」

図3 出典:内閣府令和2年版障害者白書障害者の状況「 図表4 年齢階層別障害者数の推移(精神障害者・外来)」

雇用される割合が他の障がいに比べて極端に小さい精神発達障害者
雇用状況においては*2、令和元年の民間企業に雇用されている障害者数は約56万人で、身体障害者は約35万人(生産年齢人口の約34%)、知的障害者は約13万人(同22%)、精神障害者は約8万人(同4%)です。民間企業に雇用されている精神障害者の割合が極端に小さい傾向にあります。(図11参照)

職場になじむのが難しい
障がい者雇用の方針*3は、雇用したいと回答したのが、身体障害者約34%に対し、精神障害者、発達障害者はそれぞれ約20%と低くなっています。障害者を雇用しない理由は、障害種別の違いによらず、当該障害者に適した業務がないからという理由が1位となっていますが、それを除くと、職場になじむのが難しいと思われるからという理由が身体障害者に比べ精神障害者、発達障害者で大きくなっています。

13_オリジナル_厚生労働省職業安定局令和元年障害者雇用状況の集計結果「民間企業における障害者の雇用状況」

図4 出典:厚生労働省職業安定局令和元年障害者雇用状況の集計結果「民間企業における障害者の雇用状況」

14_オリジナル_厚生労働省職業安定局平成30年度障害者雇用実態調査の結果「図6-1  障害者雇用の方針」

図5 出典:厚生労働省職業安定局平成30年度障害者雇用実態調査の結果「図6-1 障害者雇用の方針」

15_オリジナル_厚生労働省職業安定局平成30年度障害者雇用実態調査の結果「図6-3  障害者を雇用しない理由(複数回答) 」

図6 出典:厚生労働省職業安定局平成30年度障害者雇用実態調査の結果「図6-3 障害者を雇用しない理由(複数回答) 」

精神発達障害者の才能を活かす

いかがでしたでしょうか。精神発達障害者数が増える一方で、その方々の社会進出が課題となっています。こころとでは、障がい者の才能を開花させ、その才能を活かすサービスを開発し、社会へ貢献する取り組みを行っています。

*1 出典:内閣府令和2年版障害者白書(https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r02hakusho/zenbun/pdf/ref2.pdf)
*2 出典:厚生労働省職業安定局令和元年障害者雇用状況の集計結果(https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000580481.pdf)
*3 出典:厚生労働省職業安定局平成30年度障害者雇用実態調査の結果(https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000521376.pdf)