不妊治療のなぞ。「妊娠率」とは。
不妊治療をしている方も、
これから始めようと思っている方も、気になるのは治療の成功率、
つまり「妊娠率」ですよね。
今日は不妊治療の謎に包まれた「妊娠率」のお話をします。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
妊娠率の定義
そんなの知っているよ、と思われた方も多いと思いますが、
ちょっとお待ちください。
実は、ここから認識の違いが存在しているかもしれません。
一般に「妊娠率」というと、妊娠して出産する確率をイメージする方もいたりします。
妊娠~出産までを簡易的にステップで区切って説明します。
不妊治療の施設で、妊娠実績を公開している場合、
妊娠率というのは「胎嚢確認」までの確率を示している事が多いです。
ただし、残念ながら胎嚢確認できた後も流産する確率は10%以上、
高齢ではもっと高くなってしまいます。
以下のクリニックで、論文から年齢別/週数別の流産率を説明されていたので参考までに貼り付けます。
妊娠率と出産率の数字を知る
一方、無事出産までたどり着く確率は、妊娠率とは分けて、
「出産率」「生産率」「生児獲得率」などと表現されます。
流産や死産することなく出産までたどり着いた数字なので、
当然、妊娠率より低くなっており、
40歳以上では妊娠反応があった方の半分近くの数字になっています。
実際に数字を見ていきましょう。
こちらは、日本産科婦人科学会が公開している、
2021年の体外受精の結果のデータになります。
国内で体外受精を行ったほぼ全部のデータがここで集計されています。
少し見づらいので、「35歳」「40歳」「45歳」を下のグラフ中に示します。
いくつか折れ線がありますが、
ここでは、赤線(「妊娠率/総治療」)と、緑線(「生産率/総治療」)に着目してください。
例えば、35歳では治療周期あたり26.6%の人が妊娠して、20.5%の方が出産までたどり着いている、というこです。
ちなみに、青線の「妊娠率/総ET」というのは、
1回の移植(ET:embryo transfer→「胚移植」の略)あたりの妊娠率を示しています。
なぜ赤線(妊娠率/総治療)と分けているかというと、
本来は体外受精というのは移植をしないと妊娠しないのは当たり前なのですが、そもそも移植ができない(採卵で卵がとれない、培養で卵が育たない等)状態の方もいます。
そのため移植まで進んだ方を分母に持ってくると、妊娠率(青線)は高めにでることになりますが、それを一般に「妊娠率」としてしまうと、実際は採卵までの方が入っていないので誤解を招きやすいです。
特に年齢が高くなってくると、卵が採れず、移植まで行かない人の割合も増えてくるので、なおさらです。
なので、採卵をして移植する卵がすでにある方が
その1回の移植でどれくらい妊娠率があるかを知りたい場合は、
グラフの青線の妊娠率(35歳では43.6%)を見ていただくと良いと思います。
これから体外受精をする方→赤線の妊娠率を参考にする
これから移植をする方→青線の妊娠率を参考にする
それにしても、複雑ですよね。
ここまでこれだけ説明しておいて何ですが、
数字はあくまで統計値(平均もしくは中央値)で幅がある数字なので、
自分がそのトップラインにいるのか、ボトムラインにいるのかは結局はわかりません。
おおよその心構えや、パートナーとの話す材料にはなると思いますので、
自分がこの数字をどう理解するか、どう活用するかが大事だと思います。
おまけ
ちなみに、すでに2024年ですが、なぜ最新データが3年前のデータなの?と思った人も多いはず。
年度の半ば(夏あたり)に前々年の治療データが公開になるので、
不妊治療が保険適用になった2022年のデータはあと数か月で公開になる予定です。
国内で行われたデータをほぼすべてなので、
データを収集するのも、集計するのも時間がかかるようです。
このあたりも医療DXでイノベーションが起きて欲しい(起こしたい)ですね。
おまけついでにもう1つ。
実は上記のデータは、「のべ」の治療周期のデータです。
例えば、1人の人が3回移植した場合、3カウントとして集計されます。
1人の人の1回目の移植なのか、2回目なのかが区別できていないのが、
これまでの日本産科婦人科学会のデータでした。
しかし、そちらもデータの収集方法が変わり、1人の人が何回治療をしているかを加味した統計へ改善していく見込みです。
データを公開する以上、
そのデータを見た方がミスリードされないよう、
正しく伝えていく事はとても重要ですよね。
我々もデータを取り扱う企業として、
しっかり今後のデータ公開の行く末を見ていきたいと思います。
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