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不妊治療と仕事との両立の実態
不妊治療と仕事の両立は、女性が抱える大きな問題の一つです。
厚生労働省によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の割合は18.2%。夫婦全体の5.5組のうち一組にあたり、近年は増加していることが予想されます。1)
今回は、不妊治療をしている人の多くが抱える「仕事との両立」についての実態を深堀りします。両立が難しいと感じる人の声、両立できている人の声、社会や企業の動きをまとめました。
1.不妊治療をしている人の仕事との両立状況
まずは不妊治療している人が、実際に仕事と両立できているのかを見ていきましょう。厚生労働省は、不妊治療を経験した方のうち約16%が、不妊治療と仕事の両立が難しく、離職に至っていると発表しました。2)
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「両立できずに仕事を辞めた」
「両立できずに不妊治療を辞めた」
「両立できずに雇用形態を変えた」
と回答した方も多く、150人中92人が両立に難しさを感じていると言えるでしょう。3)
データからも不妊治療と仕事との両立は難しいと考える人が多いことが分かりますね。
2.両立が困難と感じている人の状況
では、どうして不妊治療と仕事との両立はこんなにも大変なのでしょうか。
不妊治療と仕事の両立が難しいと感じる理由は主に3つあります。
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【1】両立が困難と感じる理由: 時間
両立が難しいと感じる理由の1つ目は、時間です。
治療では、月経や排卵の周期に合わせて通院する必要があり、限られた時間の中で仕事と調整していく事は、時に難しいことがあります。
実際、仕事と治療の両立ができなかった理由に関するアンケートでは、通院回数が多いことを理由に上げた人が60人中50人という結果でした。3)
【2】両立が困難と感じる理由: 精神・肉体的疲労
両立が困難だと感じる2つ目の理由は精神・肉体的な疲労。
上記と同様のアンケートで精神面で負担が大きいためと答えた方は60人中53人。
体調、体力面で負担が大きいためと答えた方は60人中47人でした。
終わりの見えない治療への不安や、薬による吐き気や眠気といった身体への副作用等が影響しているようです。
【3】両立が困難と感じる理由: 職場の理解
両立が困難だと感じる理由の3つ目は職場の理解。
不妊治療に関して職場の理解が不十分であると、治療の継続が困難になってしまいますよね。
不妊治療の職場への共有状況に関するアンケートでは「職場に一切伝えていない」「今後も伝えない予定である」と回答した人は200人中172人。
多くの方が、職場には伝えないという選択をしたことが分かります。
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伝えないと選択した背景には
「不妊治療をしていることを知られたくない」
「周囲に気遣いをしてほしくない」
「不妊治療がうまくいかなかったときに職場に居づらいから」
などの理由があるようです。1)
3.両立できている人の状況
これまで、不妊治療と仕事との両立の難しさに焦点を当ててお話してきましたが、中には両立ができている人もいます。
不妊治療と仕事の両立を叶えている人は、どのような制度を利用し、どのように工夫しながら仕事をしているのでしょうか。SNS上でのいろいろな方の意見を見てみましょう。
〈 Aさんのケース 〉
「近所の婦人科クリニックも含めると3年治療し、最終的には顕微授精まで行き、現在妊娠8ヶ月です。会社から20分の不妊治療専門院に転院しました。なるべく仕事に支障がないよう、
7:30~病院の受付になるべく一番に並ぶ
8:00~採血や注射
8:30~診察
8:50~会計
会社には5~10分遅刻、で滑り込んでいました。採血した結果を聞く時には昼休みに抜けていました。」4)
〈 Bさんのケース 〉
「不妊治療(体外受精)を経て、妊娠16週目です。フルタイムで癌研究をしています。
上司には、不妊治療を始める前に、同僚には、受精卵移植の際に報告をしました。仕事柄、危険な薬品を使ったり、重い物を運ぶことがあるので、それらを避けるために同僚の協力が必至だったのです。
上司も同僚もとても協力的で、常に私の健康を気遣ってくれます。報告して、協力を求めて良かったと心から思っています。」4)
職場の近くの病院で不妊治療を受けるという工夫で、両立を実現した方もいました。
職場の方に協力を求めることは、不妊治療と仕事の両立において重要な鍵となるようです。
4.国や会社による不妊治療の支援の動き
では、国や会社では不妊治療と仕事との両立のため、どのような支援を行っているのでしょうか。まずは国の支援の動きを見てみましょう。
厚生労働省はホームページに「不妊治療と仕事の両立について」というページを設けています。
さまざまな資料がダウンロードできるようになっており、そのなかでも「不妊治療連絡カード」は職場に対して不妊治療中であることを伝えるツールとして活用できます。
![](https://assets.st-note.com/img/1662737275501-q1qa75319o.png?width=1200)
会社による不妊治療の支援の動きはさまざまです。
従業員の不妊治療を積極的にサポートしている企業では、充実した休暇や休職制度を設けていることも。一例を紹介します。
・「不妊治療休職制度」…体外受精、顕微鏡授精を行う場合、最長1年間、休職が可能。休職期間は無休。利用は1人につき1回限り。
・「失効年休の積立休職制度」…失効した年次有給休暇を積み立て、不妊治療のために特別休暇(有給休暇)として利用できる制度。1日単位/半日単位で利用可能。
この他にもフレックスタイムの導入や半日単位や時間単位での年次有給休暇制度、テレワーク制度を設けている会社もあります。1)
今後さらに会社側でもサポート体制が整っていくと安心ですね。
まとめ
今回は不妊治療と仕事との両立に関して紹介しました。
不妊治療と仕事との両立にはスケジュールの調整、職場の理解、肉体的や精神的な問題等課題は多くありますし、周囲の協力も必要不可欠です。
しかし、国や企業の動きも少しずつ変わってきているので、うまく制度を活用して取り組んでいきましょう。
次回は同テーマに関して、経験者の声をお送りします。
1) 厚生労働省HP
2) 厚生労働省HP
3) 厚生労働省労働者アンケート調査結果-平成29年度の調査
4) https://komachi.yomiuri.co.jp/topics/id/846927/