成長を誇りに想ふ
ココポルト星人となり今日が2年目のSTART!
来星して丸々1年が過ぎたことになります。
ココポルト星人の中で最も若い(23歳)スタッフのお話。彼女の名は「猫ちゃん(呼称)」名前の由来は『泥棒猫』から。ココポルトを利用する女の子(ココポルトの看板娘)のママによってユーモア溢れる(本気だったらどうしよう・・笑)表現で名づけられたもの。
ママたちが幾多のご苦労とともに大切に愛情を注ぎ育ててきた我が子たち、その子どもたちの心を気がつけばわしづかみにしているからと。こういった、ウィットに富むやりとりがママたちとスタッフの間で交わされているのもココポルト星ならではの空気感かなーと、その光景を見ているといつも心が温かくなるものです。
1年前を思い返すと、猫ちゃんはココポルト星にやってくるにあたりたくさんの条件や制約がありました。鳥取県の郡出身で地元の名門校を卒業後、山陰地方では最大規模の地銀に新卒入社。銀行のお局様たちに可愛がられた後・・約3年前に単身、心機一転、東京へ。いや横浜に~出てきたようです。
横浜に来てからは放課後児童クラブ(学童保育)の指導員として働いていました。その彼女がココポルト星を訪ねて来たときずいぶん悩んだことをいつも懐かしさとともに思い出します。
児童指導員(障害児分野の任用資格)の資格を有しているとは言え、医療的ケアを要する重症心身障害児とともに過ごし、子どもたちの心身の健康と安全と安心(ママたちに対しても)を確保する業務は責任重大、プレッシャーも大きく。若い彼女に務まるものかととても心配したものです。
その上、重症心身障害児の医療的ケア分野における経験豊富な看護師たちとの専門性の高い仕事は生半可な気持ちや動機では決して務まらないことは経験上知っているからこそ安易に受け入れてはいけないとも考えていました。
「横浜で仕事を続けたい」それが猫ちゃんの唯一の希望であり働く動機でした。お母さまからは鳥取に戻るよう催促も受けており、一日も早く次の仕事を手に入れる必要があったのです。
安易に受け入れて、もしも続かなかったら…
知る限りのすべて、医ケア児/重症心身障害児のみを受入れる放課後等デイサービスの児童指導員の業務について事実や実態をありのままリアリティをもって伝えました。これまでに行った数百名を超える障害分野におけるスタッフの面接、延べ100名超の雇用を通じて得た大王の経験と統計上、前述のリアルな話をすると必ず起きること。
一瞬の表情の裏にある怯みや些細な言動に潜む躊躇、これらが必ず表出されるものなのです。それが猫ちゃんには一切なかったことを今でも鮮明に記憶しています。言語によるコミュニケーション力や表現力は決して高くないにもかかわらず、眼力(目力)が強く、曇りなく澄んでいるのがとても印象的でした。あ、この娘は本気かもなと。
ココポルト開設にあたり、スタッフ採用における判断基準として私が決めていたことがあります。
それはこの分野における豊富な経験者であること、高い専門性を有していること、熱量と価値観が大王と整合していること。つまり、スタートアップ時に限っては未経験者は採用しないということです。しかし一方で、この業界における人材の仕事に対するモチベーションや感性、感度の低さ、社会的な認知と地位の低さについては課題認識も長年にわたって持ち合わせていました。
「誰もが初めの一歩は未経験である」とすれば、誰かが未経験者を業界に招き入れない限り、優秀な人材の裾野は拡がらないという想いからも開所して2-3年後には未経験の看護師および指導員の採用はもちろん視野にありましたが・・・数年後の話としてなのです。
猫ちゃんを採用するか否や。既存の看護師たちや指導員に相談すると皆が断固反対でした…理由は未経験で若いからと。性分なのか偏屈なのか?人事や人材開発に関わっていた当時より私には確固たる信念ともいうべき信条がありました。
『他人が見落としたり、見捨てたもの、気がつかずに通過したもの、誰かや何かに反対され手に入れることがあきらめられたもの。これらを必ず拾い上げて手に入れること。そして、丹念に磨き、温め育てること。そこには掴み拾い上げた者にしか手に入れられない果実がある』ということを。大きなチャンスが目の前にあると信じること。
小さな組織における調和や協調がいかに大切かを知るはずの自分が、この時ばかりはすべての反対を押し切り猫ちゃんを採用することを独断で決めました。起業して最も爽快な一瞬を噛みしめながら。
猫ちゃんには採用内定の条件としていくつかの制約を設けました。職住接近で仕事に打ち込む事。都内で友人とのルームシェアを検討していた彼女には酷だったかもしれないが、友人との一時的な離別を強いるかわりに社宅を用意しました。プライベートにおいて熱狂的なジャニーズファン(通称ジャニヲタ)である猫ちゃん。これまで多くの時間と費用をそこに投じていたようなので、それらの時間と費用は将来への自己投資(障害分野や医療分野の勉強)に充当することを求めました。23歳、遊び盛りの女の子にとってどれほど息苦しいかは想像に難くない。でも、彼女はすべてを了承し許容したのです。「採用します。明日から来なさい」その日から丸1年。
歳月人を待たず。
月日の流れの速さにゾッとしています。
昨年の今頃に出会った彼女はもうここにいません。この1年間のたくさんの自己犠牲と自己投資、ココポルトに対するロイヤルティ、他のスタッフや看護師たちからの信頼、評価、どれをとっても目を見張るものばかりです。子どもたちの心はガッチリ掴み、一部のママからは泥棒猫と表されるまでに。最大賛辞ではないか。
この1年間の大王に叱咤激励されながらの日々には、たくさんの悔し泣き、ふてくされ、イライラ、悪態、反抗、数々のエピソードがあります。それが今ではね・・怒ることも指摘することもほとんどなくなりました。猫ちゃんの笑い声や明るい声色、子どもたちとの談笑や雑談、傍らで聞きながらその成長を誇りに想ふ。
根っからの素直さとスポンジのような吸収力を引き続き保ち、さらなる成長を願っています。「猫ちゃんを大切にしなかったら私たち絶対に許しませんからね」当時、彼女の採用を反対していたスタッフたちに最近よく言われるフレーズです。これもまた最大賛辞ではないか。
猫ちゃんがんばれ!
先日はとても美味しいカレーをご馳走さま♪
非日常的な空間と時間に酔いしれることができました。