施行1年を迎えて
医療的ケア児とその家族への支援を進めることを国や自治体の努力義務ではなく責務とした画期的な法律、通称「医療的ケア児支援法」が施行され先の18日で1年を迎えることになりました。
さて、私たちココポルトがある横浜市ではこの1年の間にどんな(微細な)身の回りの変化があったのか考察しておきたいと思います。
相変わらず牛歩戦術が大好物の行政ではありますが、教育委員会が主管者となり大きく分けて3つの取り組みが開始されています。
1つ目は、医療的ケア支援事業。これは人工呼吸器を使用する児童がママの代行者(支援事業上の定義としてはやや語弊あり)である付添い看護師と共に登校することで、母子分離登校を実現するというモデル事業です。先述の法律が施行する以前より利用児童のママ、ココポルト大王がタッグを組み、某医療センターの地域連携室、訪問看護ステーション、相談支援事業を巻き込みながら学校への働きかけを続けた結果、法施行のタイミングと奇跡的に合致したこともあり、そして学校長の進言により教育委員会が動き出して支援事業の業務をココポルトとして受託することができたという点は大きな成果となりました。学校長の情熱と心意気に胸を打たれたこの出来事はこの1年でとても印象深いトピックスの一つです。
2つ目、医療的ケア支援事業(付添い看護)に伴う登校時の支援となる福祉車両等運行業務。
3つ目、何らかの医療的ケア(頻回な喀痰吸引や気管切開を伴う酸素療法など)を要することが理由でスクールバスに乗車できない児童を対象とした福祉車両等運行業務(医療的ケアが実施可能な通学タクシー)。
この2つ目と3つ目は類似しているものの扱いが異なる理由は、法施行に伴う責務としてスタートした支援事業(3つ目)とあくまでモデル事業の一環である医療的ケア支援事業(付添い登校)の延長線上にある福祉車両等運行業務(2つ目)であるという点です。つまり、福祉車両内において人工呼吸器の管理を伴うか否かが差異ということになります。
特別支援学校に常駐する学校看護師の職務範囲を定めるガイドラインや実施要領なども近年ようやく見直され、人工呼吸器の取扱いや管理、実施できる医療的ケアの範囲が拡大していますが、学校看護師の適正な人員配置や担い手の確保という点では多くの課題がまだまだ山積しているようですね。
私どもココポルトはこれら3つの事業および業務すべてを教育委員会より受託し、対象の児童を熟知している看護師を派遣することでココポルト星人(利用児)2名の通学と登校の支援に関わっています。先ごろ、開始された通学支援の対象児童はココポルトの看板娘。長らくママにはご苦労をおかけしお待たせしてしまったこともあり(ココポルトは車両運行事業者と4月には準備万端いつでも出撃OKでしたが、教育委員会の牛歩が遅れた理由ね)、スタート時はそれはそれはスタッフ一同にて感慨無量。大きな使命感ととともに現在も推進をしております。
これらの支援を通じて感じること。それは学校の教育現場や教育委員会にようやく変化を受け入れるムードが醸成されたのかなということ。相変わらずリスクは取らず保身の傾向は強いけれど・・以前よりはだいぶマシに。少しずつママたちの声(ニーズや困りごと)に相対するだけでなく課題解決の方法を模索し、できる・やれる方法を熟慮するようになった点でしょうか。そして、放課後等デイサービス&訪問看護ステーションの分野で福祉ポジションを担うココポルトと地域での連携がようやく始まりつつあるのかなということ。
一方で残念なことは、ここ横浜市においては先端の教育現場に医師会と看護協会の顔がまるで見えない点(文科省と厚労省のいつものやつね)。いつもの言い分はわかっています。域内に共通する重要事項の検討や意思決定、ガイドラインの策定する会議体や運営体など、上位の概念には恐らく関わっているのでしょう。まるで機能していない横浜型医療的ケア児/コーディネーター制度を作ったことも承知しています。看護師向けにたくさんの研修を実施していることも知っています。知っています。知っています。それぜんぶ知っています。
でも、教育委員会が推進している医療的ケア支援事業も、福祉車両運行業務には関わっていないんですよ。あ、運用上の現場レベルでの関わりの事のことです。福祉車両の運行に関しては横浜市内で待機児童(車両や看護師が確保できず利用の順番待ちをしている保護者と児童のこと)が数十名も滞留しているそうです。医療と福祉の連携という上位概念での括りは聞き飽きた。
一人ひとりの医師、看護師、福祉職に従事する者、それぞれ「個」として何を実現したいのか、着想のみならず実現に向けての繋がりに工夫を持てれば待機解消は容易なはずなのに。
この地域の課題に向き合い一人でも多くの支援に関われるよう、引き続き私たちココポルトも更なる体制構築を進めていくことを決意として表明しここに記しておきます。
万人は救えない、目の前にいるココポルト星の子供たちのための貢献を。
この久しぶりの投稿を後押ししてくれた読者であり、来春にココポルト星へお迎えする仲間に御礼を申し上げます。
偶然を装いやってくるこの必然を
これからも大切に。