まちに出てみる第一歩に。とよなか地域創生塾第7期「DAY1 キックオフ!開校式」を開催しました!
「とよなか地域創生塾第7期」が塾生41名を迎えて開校。
「地域創生」という言葉は、まちにあまり馴染みがない方にとってなんとなくハードルが高いと感じられるかもしれません。でも、本当は「まちでやりたいプロジェクトがある」「地元のまちに関わってみたい」と、まちに対して何かしらの想いを持つ方はいらっしゃるのではないでしょうか。
ただその一方で、想いはあるけれど、何から始めてどうやって進めればいいのかわからないことも多いと思います。それに、自分だけではじめの一歩を踏み出すって、なかなか勇気が必要ですよね。
そこで!「とよなか地域創生塾」では、まちへの素敵な想いをもつみなさんと一緒に地域活動について学び、実践していく場をつくっています。
今回のレポートでは、2023年10月8日(日)に開催された「とよなか地域創生塾・キックオフ!開校式」の様子をお届け。ぼんやりとでもまちで何かしてみたいと思っている方には、特に必見の内容となっています。ゲストの方の講義内容もチラ見せしているので、ぜひみなさんの活動にも活かしてみてくださいね。
文:中田龍弥(なかた・たつや)
とよなか地域創生塾とは?
とよなか地域創生塾とは、豊中の「地域」を「創」り「生」かしていくための考え方と仲間が得られる豊中市主催の連続講座(ゼミナール)です。全10回の約半年間をかけて、具体的にプロジェクトを実行できるような「知」と「仲間」を創っていきます。第7期を迎えた今回より「株式会社ここにある」(以下、ここにある)が企画運営をお手伝い。これまでのとよなか地域創生塾らしさを引き継ぎつつ、新たなゲスト講師のみなさんをお呼びしたり、2つのコースに分けて実施したりするなど、新しい試みも取り入れて再始動しています。
舞台となる豊中市は、南北(明確な境界線があるわけではないそう)で雰囲気に違いがあるのが特徴です。南部は本会場でもある庄内コラボセンターがある地域。まちの商店街には駄菓子屋があったり、毎年地域のお祭りも盛んに行われたりするなど、ザ・下町!という雰囲気が漂っています。一方の北部は、千里中央等を中心とする地域です。ベッドタウンと呼ばれる住宅街が象徴的。高級マンションや新築の建物が立ち並び、今まさに生まれ変わろうとしています。
ちなみにですが、筆者の私自身、2年ほど前から豊中で子ども縁日を実施したり、友人の飲食店に行ったりと豊中に関わる機会もしばしば。市民参加型のイベントが開催されていることも多く、まちに活気がある印象です。南と北、双方にその地域ならではの面白さがあるので、自分の関心に合わせて関われるといいですね。
そうした背景もあり、今回の場には「豊中という地でなにかやってみたい」「異分野の方とコラボしたい」「まずは地域で知り合いを増やしてみたい」という想いを持つ方々が集まりました。
地域で活動する際には「社会課題の解決」や「地域課題の解決」も重要です。ですが今回はより多くの方に参加いただけるよう、まずは気軽に関わることができるように「個人の関心」や「ワクワクした気持ち」などを大切に講座内容を組んでいます。実は、楽しみながら自分のためにやっていた活動がその地域の課題解決にもつながっていた、というケースが意外と多かったりもするんです。課題解決だけを目的にせず、自身の興味関心を軸にすることで、モチベーションを保ちながら楽しく活動できます。今回のとよなか地域創生塾がその感覚を少しでも感じられる機会になればうれしいです。
塾長からの挨拶によっていよいよ開校!
迎えた初日。豊中市は庄内コラボセンター「ショコラ」1階の広場にてキックオフ!開校式が行われました。
今回のとよなか地域創生塾の本会場でもある、庄内コラボセンター「ショコラ」は今年2023年2月にオープンしたばかり。行政の窓口のほかに、図書館や公益活動支援センターなども入っていて、地域活動の拠点の一つとなっています。
今回の塾生最年少はなんと高校1年生!リタイア後の方も参加されるなど、3世代にまたがる講座となりました。席に着くなり、お隣同士で自己紹介し合う姿も。少しの緊張感と期待感に包まれながら、ついにキックオフ!開校式スタートです。
今回は、ここにある代表の藤本遼(ふじもと・りょう)さんの進行のもと、地域に根ざして活動されてきた2名の「先輩方」をお呼びし、ソトコト編集長・指出 一正(さしで・かずまさ)さんにも聞き手に入っていただく形で実施しました。
藤本さんからの「塾長〜!」という呼びかけに応じて登場したのは、会場である庄内コラボセンター長の橋本慶(はしもと・けい)さん。
橋本さん自身も豊中庄内を中心にまちに関わる活動をされています。そんな橋本さんからは、「今回のとよなか地域創生塾が、まちに関わる上で初めて踏み出す一歩目となり、講座を通してやりたいことの解像度を上げていってほしい」というエールをいただきました。
その後は塾生同士での自己紹介タイムへ。
お互いのことを(ほんの少しですが)知り、場もあたたまってきたところで、みなさんお待ちかねのゲストトークへと移っていきます。
ローカルで大事なのは「巻き込まれる」こと
話題提供のお一人目は釋 大智さん。釋さんという名前からもお分かりかと思いますが、彼は池田市出身のお坊さんです。
お寺はご実家である池田市にあり、お寺の隣で私設図書館「ふるえる書庫」を運営されています。普段は副住職、書庫の館長(店番?)、大学での教員などマルチに活動されています。服装もお坊さんのイメージとはかけ離れてキャップとジャケット姿。藤本さんからは「ラッパーですか?」という質問が入っていましたが、なんだかすでに面白い人の予感がしています(笑)。
釋さんが店番を務める「ふるえる書庫」がスタートしたきっかけは、住職であるお父さまが研究のために大量購入した本で家中が埋め尽くされてしまっていたこと。そんなタイミングで、ご門徒(檀家)さんの空き家を購入させていただくご縁があり、そこを改修して現在の私設図書館「ふるえる書庫」を開設。3万冊という膨大な書籍が並ぶ場所にアップデートされました。お寺として、あるいは釋さん個人として日常的に檀家さんと友好な関係性を築いてきたからこそ生まれたお誘いのように思います。
そして、釋さんの一見変わったお仕事紹介の話の中で「巻き込まれる」ことの面白さという話題へ。
これまで、「BOOKOFF×仏教をテーマにトークしてもらえますか?」や「ルクア大阪で若者の人生相談に乗ってみませんか?」など、予想もしなかった仕事の依頼がくることもあったそうです。その際も釋さんは断らず依頼を承諾。思いがけない依頼に巻き込まれることを大切にされていた訳ですね。
実は、「ふるえる書庫」の内装をお願いした建築家の方との出会いも偶然だったとのこと。唐突に誘われたイベントに顔を出してみた時にたまたま出会い、内装をお願いする流れになったそうです。仏教だけにご縁って大切ですね!知らんけど。
釋さんからの話題提供後は、指出一正さんからコメントをいただきました。
指出さんは、この「巻き込まれる」という現象を「自分のアルゴリズムの外側にいける」と表現。地域活動をする際に、過去に培ってきたものとは全く異質なものとコラボすることで、「地域が意外とそれを求めていた」という新たな価値が生まれてくるそうです。それが自分の可能性の幅を広げることにつながるのかもしれませんね。
地域の隠れた人材は「余白のある人」
2人目の登壇は久木田 郁哉さん。
彼は兵庫県川西市にて株式会社川西麺業、スパイスカレーミルズをはじめとして、小さく商売を始めることを中心に活動されてきました。
また、自分でお店を営むだけではなく、Twitter(現在はX)を中心としてさまざまな人とつながり、そこでつながった人を川西に住まわせたり、川西でお店をはじめさせたりとクレイジーな活動も目立ちます。一見落ち着いた方に見えますが、話の途中でさらりとボケる場面も(笑)。
そして話は、久木田さんのお店で「どんな人を雇うか?」という話題に。
久木田さんはラーメン屋の元気でハツラツとした兄ちゃんが苦手だそう。そのため、お店にはわりと静かめな無職のおじさんがたくさん働いているそうです。久木田さんやその周りの人たちとの相性への配慮から生まれたこの体制。それが結果的に余白のある(職がなくて、時間がある)人材をうまく活用することにもつながっているというのは、新しい発見でした。
それに続いて藤本さんからはこんな話も。
「決められた時間があること以外に余白がある人材がまちにいるってめっちゃ大事。例えば福井の鯖江というまちには、ニートの人たちが集まって住んでいるところがある。そこの人たちは時間(ゆとり)があるのがバレているから、地域の活動に呼ばれてめっちゃ手伝ってる。手伝ったら関係性ができて、知ってもらえる。そうしたら、この人たちは大丈夫やと思ってもらえて、またそこからいろんな機会が広がっていく」
このように、地域には“余白のある人材”が案外たくさんいます。そんな方を地域の活動や仕事に巻き込むことで、足りない部分を補い合うことにも繋がり、新たな暮らしやのまちのあり方を生んでいくのかもしれないですね。
久木田さんの話の中で他にも印象的だったのが、地域の人から信頼を得る方法。
川西市での活動のはじまりは小さなカレー屋。そこでは、子どもたちにカレーを無料で出していたそうです。そうやって、カレー屋に子ども食堂のような機能を持たせることで、それを入り口に、地域で志を持って活動する方々との関係性を深めていったのだとか。そうして生まれたつながりをきっかけにして、市役所や社会福祉協議会をはじめとする福祉分野のキーパーソンに、自らの存在を知ってもらえるようにしたのだそうです。
つまり、つながりたい人に直接アプローチするのではなく、その方が信頼している方からの紹介でつないでもらうというプロセスをとることで、信頼を獲得していったんですね。今では、補助金関連の情報を教えてもらえたり、お店で働いてくれる方を紹介してもらったりするような関係性にまで発展しているとのこと。地域における関係性づくりにも秘訣があるとは驚きです…!久木田さんのやわらかい雰囲気とは裏腹に、戦略的な一面が垣間見えたエピソードでした。
これまでの話からなんとなく伝わっているかもしれませんが、久木田さんは地域の方々との距離の保ち方や、懐への入り方が絶妙にうまいんですよね。そんな彼の活動は、今後ローカルや地域の新しい事業化モデルとなっていく予感がしました。ぜひ、久木田さんのその他の活動はこちらからチェックしてみてくださいね。
グループワークで感じたメンバーのエネルギーの高さ
学びや気づきの連続だったお二人からの話題提供とパネルトーク。気づけば2時間がすぎていました。講義でインプットしたあとは休憩を挟んでグループワークへ。
①どうして(理由・目的)このプログラムに参加した?
②半年間でなにをやってみたい?なにを学びたい?
③半年後の自分はどうなっていそう?どうなっていたい?
まずは、上記3つの問いをもとに、これからの約半年間、どのように過ごしていきたいのか言語化してもらいます。
その後は、考えたことをシェアし、塾生同士で深掘りし合うことで互いの理解を深めてもらいました。
「大学生の間に何か経験してみたい」「会社員だけどそれだけにおさまりたくない」「定年退職で衰えないように若者と一緒に豊中でチャレンジしたい」など、参加目的もやりたいことも三者三様です。
ですが、それぞれの背景は違えど、グループワーク中のみなさんからは共通して「なにかやりたい!」という熱量がひしひしと伝わってきました。ここから半年間かけてどんなものが生まれていくのか、想像するだけでワクワクしてきます。
まちづくりで大切な2つの要素
グループワークは終始大盛り上がりであっという間に会の終了の時間です。総括として、指出さんと藤本さんそれぞれから、塾生のみなさんへメッセージをいただきました。
「まずは、未来に手応えがあること。自分がしている活動でしっかりと周りやまちが変わっていく、よくなる感覚をもてていることが大切だと思います。
次に、仲間の存在を確認し、ここにいる安心感をもてているかどうか。プロジェクトが進む中では、発起人の想いが強いからこそ、どうしても1人で突っ走ってしまうことがあります。ですが、特にローカル事業は一人でなしえることはほとんどなく、たくさんの人との関わりや協力のもとで成り立ちます」
だからこそ、このとよなか地域創生塾では、仲間とそして地域とともに学び、活かしあう関係性を大事にしていきたいですね。一人でどうにかしようとせず、仲間と共にあることを忘れずにいたいと、改めて実感しました。
「活動を続けていくうちに、目の前の人の思いも自分のものになっていく感覚があります。目の前の仲間がやりたいことと自分のやりたいことの境界が溶けていく。それは自分が公共的ななにかになっていくプロセスそのものだと思っています。とは言え、最初は自分のやりたいことをベースにやっていくのがいいと思っています。その過程でさまざまな人と関わり、自己を変容させていけばいい」
釋さんや久木田さんの話にも共通していたのですが、地域活動において、まずは自分が楽しみながらやれるかどうか、というポイントはかなり大切なことなのではないでしょうか。
キックオフ!開校式を終えて
白熱した講義や議論を終えた後は、会場の片付けも塾生のみなさんに手伝っていただき無事終了。
藤本さんからの「打ち上げにいく人?」という呼びかけで集まったのはなんと約30名。しかもこの連絡が来たのは会の前日なんです。みなさん、フットワークの軽さが最高ですよね。このことからも、塾生のみなさんの本気度の高さ、仲間と一緒に半年間頑張っていきたいという強い意志が感じられます。
まちづくりは、“人”があってこそ成り立つもの。想いを持つ人とその想いに共感する仲間。継続的な活動を生み出すためには、互いに深く関係性を築き、地域にある資源を活かしていくことが大切だということを、今回の講義を通して教えていただいたように思います。
そして第2回は、豊中市内をまちあるき。北部と南部の二手に分かれて、それぞれの地域のことをよく知るゲストにキーとなるお店や拠点を案内してもらいながら巡ります。今後も各回の様子を発信していきますので、ぜひ引き続きチェックしてみてくださいね!
熱量の高い塾生のみなさんとそれに負けず劣らず気合い十分の講師陣たちで、今後豊中のまちが盛り上がっていくこと間違いなし!!!
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