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中国地方の「自然が豊かな町」はどこにある?

はじめに

日本って、どこも自然が豊かだなー、と思います。

何かしらの「自然」と「文化」はどこの町にでもあるのですが、たとえば「北広島町はどのくらい自然が豊かなの?」と聞かれると、ちょっと困ってしまうわけです。そこで、環境省生物多様性センターが公表している「植生図」と「植生自然度」を使って、量的な比較をしてみました。植生図にも、植生自然度にも、この比較にも、色々と課題はあるし、川や池など水系の自然は見ていないので、以下で言う「自然」は植生図に基づく「見方を限定した」自然です。

使ったデータや課題については、後述するとして、まずは結果から。

中国地方、北広島町ってどんなところ?

植生自然度は、便宜的に10の区分に分けられていますが、ここでは生物多様性センターが植生自然度の経年変化の説明に使っている6区分を使って比較してみました。

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全国に比べて、いくつかの特徴が見えてきます。全国に対する中国地方の特色は、北広島町ではより強まっているように見えます。

自然草原が少ない
標高の高い山、寒冷な気候の場所、川幅が広くて氾濫しやすい河川など、自然草原ができやすい場所が少ない?

森林や二次草原が多い
自然林・二次林が多く、逆に耕作地や市街地が少ない。北広島町では二次草原の割合が全国や中国5県に比べて高くなっている。

植林地の比率は全国並み
これは、全国的に同じ拡大造林政策が採られたので、同じになるのは妥当?

どんな自治体が自然を「たくさん」持っているのか?

今回は単純に、「自然草原(植生自然度10:以下同)」「自然林(9+8)」「二次林(7)」「二次草原(5+4)」の4種類の自然について、自治体が持つ面積を比べてみました。以下のグラフは、それぞれのランキングで10位以内に入った自治体が持つ土地の面積です(単位:km2)。

グラフ.002

単純に考えると、面積が広い県の方がたくさん自然を持っていそうですが、そんなに単純な話でもないようです。瀬戸内市の面積は、一番大きな庄原市の1/10程度の面積で、今回比較を行った107の自治体のうち72番目です。上のグラフで13番目に位置する北広島町は、面積では15番目でした。単純にはいかないところが、自然の面白さだと思います。

二次林(自然度7)

中国山地で最も広い面積を占める二次林は、中国地方全体で13,504.29km2ありました。全体の43.12%を占め、中国地方を代表する植生です。

グラフ.005

面積が大きな自治体が並ぶ中で、東広島市、浜田市、北広島町、高梁市など、比較的小さな自治体がランクインしていました。

自然林(自然度9+8)

人の手が加わっていない森林です。暖かい地域ではシイやカシ、寒い地域ではブナやミズナラが優占します。中国地方全体で1,507.72km2(4.83%)あって、二次林の1/9の面積を占めていました。

グラフ.004

二次林とはだいぶ異なるランキングになりました。特に、下関市が突出しています。また、隠岐の島町や周防大島町など「大きな島」が含まれているのも興味深いところです。

二次草原(自然度5+4)

古くから「たたら製鉄」が盛んだった中国山地では、炭の材料となるナラ類の二次林とともに、農耕や運搬のための牛馬を養うための草を利用する二次草原もまた、特徴的な植生でした。現在は大きく面積が減ってしまいましたが、蒜山、三瓶山西ノ原、雲月山、深入山、そして秋吉台で、今も山焼きが続けられています。今回の集計では115.43km(3.41%)でした。

グラフ.007

日本で2番目に大きな草原の秋吉台を持つ美祢市が10位だったのが意外でした。これは「二次草原」のカテゴリには伐採跡地も含まれるため、森林を多く持ち、伐採を盛んに行っている自治体もランキングに含まれるからだと考えられます。今でも山焼きが続けられている北広島町、真庭市、美祢市、そして大田市と安芸太田町の草原は、今回の方法ではうまく評価できていないかもしれません。

自然草原(自然度10)

泥炭湿原、山頂部の風衝草原、低湿地のヨシ原など、中国地方では稀な植生です。そのため、自治体の面積とは関係なく、これらが成立する環境を持つ自治体がランクインしています。

グラフ.003

鳥取市の鳥取砂丘、大山町の大山山頂部などの他、ヨシ原が河川沿いに存在する自治体の名前が上がりました。今回の名前の上がったうちで一番小さな瀬戸内市の錦海塩田跡地は1956年から干拓され、製塩事業が行われた後、市所有になったようです。googleマップで見ると、広い低湿地が確認できますが、太陽光発電のパネルも置かれているようです。

これから

「はじめに」でも書いたように、植生図や植生自然度は万能ではありませんが有用です。たとえば自然を守るための取組を進める際に、「自然度10や自然度9のエリアに、ちゃんと保護の網がかかっているか」というチェックをしたり、「二次林や二次草原は、再生可能なバイオマス資源の生産地」として見ることができます。特に国立公園や国定公園に編入されていないような「小さな自然」ほど、自治体の役割が重要になってきます。現行規制の妥当性を確認して、次の一手を考えるための材料として、オープンなデータが使えるな、と感じました。「植生自然度8は自然林に含むのか二次林に含むのか」とか「二次草原と伐採跡地を分けられない」などの制約もありますが、そこは統計データで丸めずに地図を眺めれば良いことかな、と思います。

まとめ

ここでは集計済みの表と、それぞれの上位10自治体のみを示しましたが、自分のパソコンを使って、地図をじぃーっと眺めると、もっとおもしろいと思います。以下にデータとアプリへのリンクを載せているので、興味のある人は、ぜひQGISをインストールして、グリグリ眺めてみてください。

使ったデータ

以下のデータとGISソフトを使いました。
調査してまとめたみなさん、ソフトの開発者に、感謝します。

国土数値情報 行政区域データ
国土交通省から提供されている「全国の行政界について、都道府県名、支庁名、郡・政令都市名、市区町村名、行政コード等を整備した」データです。中国地方各5県の、最新のデータを使いました。

1/2.5万現存植生図(平成11~整備)、1/5万現存植生図(昭和54年~平成10年整備)
1/2.5万現存植生図が整備されていない箇所については、1/5万現存植生図を使って補いました。自然環境基礎調査のデータがイロイロあるので、データの性質をみながら使ったら楽しいと思います。巨樹・巨木とか、湿地調査とか。

QGIS
オープンソースの地理情報システム。プラットフォームを選ばないので、その辺のクセはありますが、とても使いやすいと思います。


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